山に雪 ♨温泉卵をつまんで♨
「ゆ〜きやこんこ♪ あ〜られやこんこ♪」
「ふってはふっては♪ ずんずん積も……って、大晦日とはいえ、ほんまによぉ降るなぁ」
このまま降り続けば、元日には神秘的な雪山になれそうだ。
「いや、ほんまになぁ」
西山は、うんうんと頷いた。
「いややわ、にっしー。そこはアンタ、『ウチに続いたんやったら、なんで最後まで歌わへんのよ』ってツッコまなアカンとこやろ」
東山は、西山の六合目あたりに軽くふれた。少し揺れたことに、目を見開く。
「えっ。ちょっとアンタ、ふにゃふにゃやないの。いつにも増して、温泉つかり過ぎとちゃう?」
「え、そぉお? 気持ちえぇねんけどねぇ」
西山は、頬を紅くしてニコニコしている。
「アンタ、なんでそんな顔紅ぉして──」
ちょっと心配そうな東山の鼻に、麓の温泉街から酒まんじゅうの香りが届いた。
「あっ! アンタ、また匂いで酔ってるんやろ!」
「え〜?」
「『え〜?』やないわ。でき上がってしもうとるやないの。せやからアンタ、麓の人らから『紅葉の時期関係なく、なんや西山はいつも紅いなぁ』とか言われんねんで」
「うふふふ〜。自前の頬紅ですわぁ」
「誰が上手いこと言えいうたん。……ほんまにアンタ、酒に弱いなぁ」
「えぇ匂いよねぇ」
「匂いだけで、そこまでご機嫌になれるんなら幸せやわ」
「そ〜ぉ。幸せは、えぇことやでぇ」
西山は、うふふ、うふふと左右に揺れる。
「あんまり激しく揺れたらアカンで。麓の人らが、噴火かと思うてびっくりしてしまうでなぁ」
「わ〜かっとるわよぉ」
東山のたしなめは、あまり効果はなさそうだった。
「……しゃあない子ぉやねぇ」
苦笑した東山は少しだけ西山に寄りそい、傍に置いておいた温泉卵をひと口。
「ん〜。体に良さそうな味やわ」
東山は降る雪を眺めながら、どこか満足げに笑った。
使用キーワード『雪山』『温泉』『たまご』
このお話にて、キーワードをすべて使いきりました✨
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