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魔法と魔獣の交わる世界を  作者: 傘瓜
第一章 魔法と魔獣
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第二話

 次に俺たちの目の前に現れたのは、駅のホームではなく一つの学校だった。こここそが我らが通う『エリトマジク学園』である。

 見た目は普通の高校だが、中身は他の高校とは段違いである。ここは勉学、部活動、そして魔法を学ぶ『魔学』など、たくさんの方面で他の学校よりも飛び抜けた教育を誇っている。

 何度も思うが、俺が入学できたのは本当に奇跡である。


 「ふう、間に合ったぜ」

 「何でそんな疲れてんだよ」

 「魔力を使うのにも体力がいるんだ!」

 「おい東川、安室」


 すると、俺と誠也の名前が校門の方から聞こえてきた。そちらを恐る恐る向くと、そこには俺たちのクラス担任、生徒指導の気の強い女教師――ヨシちゃん(本名、吉川善子)が仁王立ちで立っていた。

 その姿を見た瞬間、誠也の顔が恐怖のあまり引き攣った笑みを浮かべた。


 「げっ、ヨシちゃん……?」

 「うちの学校は魔法での登校が禁止のはずだが?」

 

 まずい……先程のテレポートの瞬間を見られてしまったか。そういやそんな校則もあったな、と思いながら俺はヨシちゃんの横を通り過ぎようとした。


 「おい」


 首根っこを掴まれた。


 「何故自分だけはスルーされると思っている?」

 「魔法を使ったのは誠也です!」

 「お、お前……お前のせいで使う羽目になってんだろうが!?」

 「安心しろ、安室。お前ら二人で反省文行きだ」

 「「うぅ……」」


 それから何分かヨシちゃんに説教されてから、俺たちは自分のクラスの教室に入った。

 

 「みーなーとー!!」


 すると、俺の名前を叫んで走ってくる女子小学生がいた。いや、実際は小学生ではないのだが、身長から体型までまるで我が妹と同じだからそう呼んでいる。

 

 「何あんた遅刻してんのよ! このままあんたの遅刻が続けば、私が説教されんだからね!?」


 この身長と耳毛のようなツインテールが同じ長さの少女の名は花山華子。俺の小学校からの幼馴染で、何かと俺に絡んでくる迷惑ロリ女である。


 「お前は俺の心配より、自分の耳の心配した方が良いんじゃねえの?」

 「どうしてよ?」

 「耳毛めっちゃ生えてんぞ」

 「あ?」


 ぷつんと聞こえるはずのない音が聞こえたその刹那、華子が野獣のように牙を向いた。


 「これは耳毛じゃなくて可愛い可愛いツインテールなんだよ!」

 「うわあ! 噛みついてくるな!」

 「噛み殺してやる!」


 まるでサメのように牙を剥き出しにして俺を追いかけてくる。誠也はそれをまるで日常を見るのように眺めていた。


 「仲良いな、あの二人」


 そんな中、俺は何度か腕を噛まれても諦めずに華子から逃げている。コイツの牙は本当に獣みたいに鋭いから本当に痛い。環奈に腹の上で跳ねられるより全然痛い。

 すると、後ろから俺の顔面の横を何かが通り過ぎた。それは廊下の壁にぶつかり、パリンっと割れた。これは華子の使う氷属性魔法で作られた氷の塊である。


 「あっぶね……人死ぬぜ?」

 「黙れガキぃ!」


 どうやらガキは自分のツインテールを馬鹿にされたのが異常に嫌だったらしい。

 ガキはまるでマシンガンのように周りも気にせず氷の塊を連射した。俺はそれに当たらないように後ろを確認して避けながら走った。


 「湊、あぶな――」

 「ん?」


 突如華子が攻撃を止めた、かと思えば俺の後頭部にドスンと重たい固いものが当たった。

 

 「いてて……なんだよ……って」


 振り返ると、そこには七三分け眼鏡の男子生徒が、おそらく俺とぶつかった時の痛みであろう頭を抑えて俺を睨みつけていた。


 「東川くん、廊下は走らないでもらえるかな?」

 「ごめんな工藤。大丈夫か?」


 俺は彼の頭が心配になり(物理的な意味である)彼の頭へ手を伸ばす。しかしそれは彼の片手によってパッと払われた。


 「大丈夫だから僕に触るな」

 「くっ……」

 「ご、ごめんなさい工藤くん」


 すると後ろから華子が駆け寄り、腰が折れ曲がるほどまで頭を下げた。

 

 「花山さんが謝る必要はないよ。僕は大丈夫だから頭を上げて?」


 二人とも俺との態度違いすぎじゃね? 

 すると工藤は俺と華子の横を通り過ぎてから、再び俺の方をぎろりと睨んだ。

 

 「東川くん、もう少し周りを見た方がいい」


 と意味深な言い方をして工藤は教室の方へ去っていった。

 入学して1ヶ月ほどしか経っていないが、一つだけ確かなことがある。それは俺を嫌っている一部の中に工藤がいるということだ。


 「何で俺嫌われてるんだ?」

 「さあね。心当たりがありすぎてわからないわ」

 「俺あいつと全然関わってねえんだけどなあ……」

 「でもその方がいいかもしれないわね」

 

 とロリ耳毛が深刻そうな顔で言った。何かと首を傾げると、彼女は呆れたようにため息を吐いた。


 「彼は校内の『マジン5』の中の3人目……つまりこの学校で3番目に強いってこと」


 『マジン5』というのは簡単に言うと校内の中で強い5人だ。「強い」というのはもちろん魔法の話である。さらにこれは個人の感想で決めたものではなく、ちゃんと『決闘』というものに勝って得た称号なのである。

 さらに工藤は入学して1ヶ月だ。そんな短い期間であるにも関わらず、己の実力だけで上り詰めたのだ。

 ちなみに1年でマジン5になったのは工藤理一人である。

 

 「そんな人に余計関わって、余計嫌われたら……あんたの身が危なくなってくるわよ」

 「さっき俺を殺しかけたやつがよく言うよ……」

 「とりあえず、あんたは魔法が使えないんだから、彼にこれ以上嫌われないように努力しなさい」

 「って言われてもなあ……」


 キーンコーンカーンコーン……

 

 

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