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僕はキミに落とされてるのに  作者: 日朝 柳
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呼び出し

急に幸に呼び出された。放課後部活前に二人で話があると。

「なんだよそれ」

ケータイの画面を見ながら呟く。口では嫌そうにしているが本当はめちゃくちゃ嬉しい。

つい口元が緩みそうになるのを堪えて鞄とギターを持った。

「星奈、ちょっと用事あるから先部室行ってて」

「はーい」

星奈の返事を聞いて俺は教室をあとにする。その足取りは少しだけ早くなってしまっている。

「あっ、来た来た」

空き教室には無数の机と椅子が積み重ねられてあり、その中の一つが教室の前方にある。

ぽんぽんと幸は自分の隣にある椅子を叩いて座るよう促す。電気が付いていなくて少し薄暗い教室にかかる斜陽がなんだか彼女を眩しく魅せる。

「話ってのはね」

意外とすぐに彼女は話し始めた。一縷の望みであったとしても心の準備がないのは緊張する。

「星奈が翔真と昼休みイチャイチャしてたとことについてだよ!」

「………は?」

「だから、二人が中睦まじげに話してたんだよ!今までそんなあからさまに見せてなかったのに、あのめちゃくちゃ音が響く階段上で。廊下にいたけど全部聞こえてたんだから!」

期待して損した。俺はただの雑談枠か。

「そりゃあ良かったな」

「良かった?良くないよ!これで翔真が来なくなったらどうするの。あの子のギターがうちの要なんだから」

確かにそれは重大な問題だな。翔真のギターはプロレベルで、バンド全体の質をあげるだけでなく人に教えるのも意外と上手いということで我が部活の練度を上げるのに一役買っている。

「そっちは俺が何とかしとく。話が終わりならもう行くぞ」

「待って待って!」

幸は俺の腕を握って引き止める。無意識のうちに足は止まっていた。

「なんだよ」

「いやぁ、そのさ」

「?」

「私達もこんな恋、したいよねっていう話」

予想外の言葉に、俺は一瞬何を言っているのか理解できなかった。ハッと我に返ったときには顔が真っ赤になっていた。

「そ、そうか。確かにいいかもな」

という当たり障りのない答えをすると、逃げるように教室を出る。

高鳴った心臓の鼓動は、歩くペースよりも早く彼女の言葉を脳内で反芻している。

もしかして、俺ってまだチャンスがあるってことなんじゃないか?彼の奥底にしまってあった淡い恋心は、再び日の目を見ようとしている。

「あーあ、行っちゃった。もう少し話したかったのになぁ」

彼の居なくなった教室で、残念そうに幸は呟いた。

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