第18章 おはね小真
小真は、初めて入る小鶯の家の中を興味深そうに見た。
部屋が三つしかない自分の家より大きいが、驚くような大きさではない。
小鶯に頼まれて持って来た、肩のところが切れて血に染まった源次郎の羽織りを手に持って、式台に上がろうとする小鶯と源次郎を後ろから見ていると―
「小真ちゃん。主さまをお風呂に連れて行って身体をきれいにするから、左側にあるお風呂の戸開けてちょうだい」
自分一人で歩けると言う源次郎を支えながら小鶯が小真に頼む。
「はいっ」
玄関から入って、衝立のあるところを過ぎてすぐ横の四畳の部屋の奥に風呂場があった。
小真は走って行って風呂の戸を開ける。
風呂にはすでに湯があった。
湯は半分ほどに減っているので、源次郎さまと小鶯さまが、仲良く入ったのだろうと想像すると、なぜか恥ずかしくなり一人で赤くなった。
小真も、もうすでに女の子だ。
月のものは、去年十三になった時から毎月来るようになった。
その頃から、親たちが隣りの部屋で睦んでいる音を息をひそめて聴くようになっていた。
「小真ちゃん、ありがとう。羽織りは、そこの隅の桶に入れて、源次郎さまの着物を脱がすのを手伝って!」
「はいっ」
源次郎の着物の帯をさっさと解き、血だらけになった小袖と襦袢を脱がせる。
下帯一枚になったが、下帯にも流れた血がついていた。
「あら、下帯も換えないといけないわね」
そう言うとさっさと下帯を外しはじめた。
「おい。娘が...」
“いるだろう”と言いかけたが
「いいじゃないですか。さっき、路地でしゃがんでいた小真ちゃんの足の間を穴が開くほど覗いていたのはどなたでしたか?」
「むっ...」
「ええっ?」
源次郎が唸り、小真が飛びあがるほど驚いた。
そうこうしているうちに源次郎は、素っ裸にされてしまった。
「ったく、もう!」
小鶯、かなり怒っていた。
“男って、若い女に目がないって知っているけど、小真のをあんなに見ることないじゃない?”
「小真ちゃん、手桶にお湯を汲んでちょうだい」
「は、はいっ」
真っ赤になりながらも、小鶯の命令にしたがう。
源之助さまに、自分の秘部を見られたと思うと身をよじりたいほど恥ずかしい。
“毛が生えている御万古を見られたんだ...”
顔が、かーっと熱くなった。
ざば――っ
小鶯は、先ほど巻いた晒しをとると、源次郎の胸からお湯をかけた。
「お、おい。布でやさしく拭いてくれるじゃなかったのか?」
「いえ、お湯で洗った方が早いんです」
「そ、そうか」
「小真ちゃん、お湯っ」
「はいっ」
ざば――っ
またお湯をかける。
「小真ちゃん。主さんの体、洗うの手伝って!」
「は、はいっ」
糠袋を小真に手渡す。
小真は、一生懸命に血のついた源次郎の体をこする。
男の体を洗うなんて初めてだ。
湯屋で裸の男を見たことはあるが、恥ずかしくてよく見たことはない。
それが、今はすごく男前の役人さま-源次郎さまの身体を洗っているのだ。
胸がどきどきして糠袋を持つてが震えるようだ。
「もっと腹のあたりをごしごしとこすって」
「は、はいっ」
そこに小鶯が、ざば――っと湯をかけた。
「ひゃっ!」
「あら、お湯がかかった?ごめんね。あとで私の浴衣を貸してあげるから、ぬれても構わずに洗い続けて!」
「は、はいっ」
ごしごし
ざば――っ
「ひゃっ!」
ごしごし
ざば――っ
「!」
ごしごし
ざば――っ
「ひぇっ!」
小真は、もう何も言わなかった。
ただ、黙って小鶯に言われるまま、源次郎さまを洗っていた。
小真の浴衣はずぶ濡れになり...
浴衣が身体にぴったりとくっついて、年頃になって丸やかになった体の線がくっきりと見えた。胸の膨らみも、その突端の小粒もくっきりと透けて見えた。
「私の浴衣も濡れちゃって... 体に引っ付いて洗いにくいから、脱ごうかしら」
そう言うと、小鶯はさっさと浴衣を脱いでしまった。
「!」
小真は、唖然として洗っていた手を止めて小鶯を見ていた。
浅黄色の湯文字だけとなった小鶯の体は、美しかった。
「きれい...」
小鶯は、浅黄色の湯文字を外した。
その下から現れた黒々とした茂みが、彼女が大人の女性だということを示していた。
「小真ちゃんも浴衣濡れたでしょう?いっそ私みたいに脱いだらいいわ」
「え?」
「どうせ、ぜんぶ濡れているんだし。体、透けて丸見えよ!」
「え... えええ――っ、やだ―――!」
洗うのを止めて、胸の膨らみを両腕で懸命にかくして恥ずかしがる小真。
「もう裸を見られたのと同じじゃない。湯屋にいると思って...」
そう言われればそうだ。湯屋では男たちがいる中でも裸になるのだ。
「わかりました」
小真は、思い切りのいい娘だった。
立ち上がり、帯を解き、体にくっついてしまった浴衣を脱いだ。
その下は赤い湯文字だ。
それもびしょびしょに濡れている。
赤くなりながら湯文字を外す。
「ほう!」
「やっぱりきれいね!」
源次郎が小真の美しい体を見て感嘆し、小鶯も想像以上に美しい小真の体を見て褒める。
「そんな... 小鶯さんに比べたら...」
「そう? 胸なんて、もっと大きくなるし...」
そう言って、むにゅっと小真の張り始めた胸を両手で揉んだ。
「あん!」
小真が驚く。
むにゅ むにゅ むにゅ
「小鶯さん...!?」
むにゅ むにゅ むにゅ
小真はヘンな感じがして来た。
「おい、小鶯、俺にも確かめさせろ」
「あ、どうぞ!」
むにゅ むにゅ むにゅ むにゅ
“源之助さまが、あたしの胸を確かめている”
恥ずかしいのと何だか気持ちいいのが混じって、小真は少し困った。
小鶯は、手桶でやさしく小真に湯をかけながら、彼女の足を洗ってやっている。小鶯の手は、足首から徐々にふくらはぎ、腿と上がり、足の付け根をやさしく、くすぐったいような感じで丁寧に洗う。
「ちょっと足を開いて」
「は、はい」
少し足を開くと、小鶯は両手を使って腿から付け根をさするように洗いはじめた。
付け根に来ると、小指の先で観音様の扉あたりを くいっ、くいっと押すようにする。
それが何だか気持ちいい。
源之助さまは、小真の胸の実を手の平でコロコロと転がすようにしたり、
指先で摘まんだり挟んだりして、それも何だかすごく気持ちよいい。
「ああ...」
思わず声が出てしまった。
源之助は、片手で小真胸を確認しながら、もう片手を顎に伸ばし、小真の顎の輪郭を確かめるようにしながら、顎を自分の方を向かせると
「ちょっと口を開けてみな。身体の塩梅がいいかどうか見てやるから」と言った。
「は、はいっ... ふぎゅっ」
口を吸われた。
ちゅるちゅるちゅる
「ふにゅにゅにゅ...」
小真は目を白黒させるが、源次郎は一向に構わず吸い続ける。
小鶯は観音様の扉を開き、観音様を舌で清めはじめた。
「ふにゅっ!?」
ゾクゾクっとした感じに、小真は思わず尻もちをつきそうになったが、小鶯が支えた。
そのまま、小鶯は小真を風呂の床の上に座らせられた。
御老成な小真は、どうやら源之助さまと小鶯さまに、“色事”を教えてもらっているのだと悟った。
“お梅ちゃんも、お菊ちゃんも、もう睦事やったって言ってたし... あたしも、そろそろやってないと仲間外れになるもんね…”
仲良しの友だちたちの顔を思い浮かべた。
そう思った小真は、もう何も恥ずかしがることはなかった。
興味心の方が優ったのだ。
「小真ちゃん、横になって」
小鶯は、手早く先ほど脱いだ浴衣を丸めて枕代わりに小真の頭の下に敷いた。
「はい」
横になると、源之助はまた口を吸い、胸を触りつづけた。
「小真ちゃん、足を開いて」
「はい」
小鶯の方は、足を開かせ、観音堂の清掃に集中している。
「あふにゅうん...あふにゅうん...」
口と胸と下の三ヵ所を弄られて、小真は身体がとろけるような気持ちよさを感じていた。
そっと目を開けて見ると―
源次郎さまのあれが、すごく立派になっている!?
「これをお前の観音様に奉納するんだよ」
小真の視線に気づいた源次郎が、にやりと笑った。
「は、はいっ!」
元気のいい返事をした。
.........
.........
.........
「あ...むぐぐぐ...」
源次郎のお供え物が、小真の観音様に奉納された時―
小真は、少し痛みを感じた。
だが我慢した。
そして痛み以上に、感激した。
“これで、あたしも一人前のオンナになったんだ”
全てが終わると
小鶯は、橙色の新しい湯文字をくれ、色鮮やかな浴衣を着せてくれた。
「湯文字も浴衣も返さなくてもいいわ。それと、これは今日のお礼ね」
そう言って、豆板銀を三枚くれた。
「こんなにいらないです」
「いいってことよ!」
源之助が手を横にふるのでもらうことにした。
「小鶯、この娘気にいったぜ。お前、雇ってやったらどうだ?こんな気の利いた娘がいたら助かるだろう?」
「え...それは助かりますけど」
「一分払うってことでどうだ?」
「小真ちゃん、あなた、この家で女中として働く気ある?」
「え?小鶯さんの家で?」
「そう。源次郎さまが、月に一分銀払ってくださるって。色々とお稽古事も教えてあげるわよ?」
一分銀といえば、米が二俵半買える金だ。
「えっ、一分銀!働きます、働きますっ!」
「その代わり、源次郎さまのお相手もしなきゃ駄目よ?」
結構高い金になるお稽古事も込みで教えてもらえるという好条件だ。
それに、あれほど気持ちいいこともしてもらえる!
「はいっ!」
その時になって、小鶯からもらって付けた月帯の中で、浅草紙を当てているところが痛んだ感じがした。
だが、それ以上にこれからの楽しい毎日を考えてワクワクする小真だった。
* 章タイトルの「おませ」は、年のわりに大人びていることです。早熟という意味ですね。




