表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

三題噺もどき

貰い物

作者: 狐彪

三題噺もどき―ごじゅう。

 お題:メロン・森・写真




 涼し気な風が吹く。

 日々強くなっていく日差しは、夏の訪れを告げている。

 私は、小さな田舎町にいた。

 周囲を青々とした森に囲まれ、道端には小さな花が咲いていた。

 畑には、実をつけつつある夏野菜達が、日の光を浴びていた。

 私は、そんな街の風景を写真におさめながら歩いていく。

 一応、写真家として働いてはいるのだが、なかなか売れず。

 上京をしたのは良かったものの、ろくに稼げず、アパートを追い出されてしまった。

 そのため、今はここの実家に暮らしている。

 両親の仕事を手伝いつつ、こうやって写真を撮っていたりする。

(今日は森の方までいこうかな)

 そう思って、歩調を少し早めた時―

「おーい!」

 近所のおばさんに声をかけられ、手招きをされたのでそちらへ向かう。

 幼い頃から、お世話になっているおおらかで活気のある人だ。

「これ、貰い物なんだけど、食べきれないからもらってちょうだい。」

 そう言って渡されたのは、小ぶりのメロン。

 けれど、貰い物というからには、お安いものではないのだろう。

 小さい割に、ずっしりとしている。

「いいんですか?こんないいもの。」

 カメラを、斜め掛けの鞄のような形で紐を掛けなおし、身体の後ろにもっていく。

「いいの、いいの、うちの人あんまり果物とか食べないから。」

 頬に手を添えながら、ひらひらと空いた手を振る。

 ―よく見るおばさまのポーズ。

「じゃあ、有難くいただきます。」

 それから少しだけお話をして(おばさまとの会話は長い)別れる。

 先ほど来た道へと向かう―とも思ったが。

 メロンを持っていては森に入ることは愚か、写真も撮れない。

(それに、今食べたいな)

 踵を返し、家へと向かうことにした。

 きっと、母に渡せばすぐに切ってくれるだろう。

 写真は、あまり撮れなかったが、今度撮りに行こう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ