貰い物
三題噺もどき―ごじゅう。
お題:メロン・森・写真
涼し気な風が吹く。
日々強くなっていく日差しは、夏の訪れを告げている。
私は、小さな田舎町にいた。
周囲を青々とした森に囲まれ、道端には小さな花が咲いていた。
畑には、実をつけつつある夏野菜達が、日の光を浴びていた。
私は、そんな街の風景を写真におさめながら歩いていく。
一応、写真家として働いてはいるのだが、なかなか売れず。
上京をしたのは良かったものの、ろくに稼げず、アパートを追い出されてしまった。
そのため、今はここの実家に暮らしている。
両親の仕事を手伝いつつ、こうやって写真を撮っていたりする。
(今日は森の方までいこうかな)
そう思って、歩調を少し早めた時―
「おーい!」
近所のおばさんに声をかけられ、手招きをされたのでそちらへ向かう。
幼い頃から、お世話になっているおおらかで活気のある人だ。
「これ、貰い物なんだけど、食べきれないからもらってちょうだい。」
そう言って渡されたのは、小ぶりのメロン。
けれど、貰い物というからには、お安いものではないのだろう。
小さい割に、ずっしりとしている。
「いいんですか?こんないいもの。」
カメラを、斜め掛けの鞄のような形で紐を掛けなおし、身体の後ろにもっていく。
「いいの、いいの、うちの人あんまり果物とか食べないから。」
頬に手を添えながら、ひらひらと空いた手を振る。
―よく見るおばさまのポーズ。
「じゃあ、有難くいただきます。」
それから少しだけお話をして(おばさまとの会話は長い)別れる。
先ほど来た道へと向かう―とも思ったが。
メロンを持っていては森に入ることは愚か、写真も撮れない。
(それに、今食べたいな)
踵を返し、家へと向かうことにした。
きっと、母に渡せばすぐに切ってくれるだろう。
写真は、あまり撮れなかったが、今度撮りに行こう。