(4)
って、ここはどこだ?
車の中?
……あと、気分が悪い。
そして、車の外は……駐車場? それも地下に有るタイプの……ん?
揺れてる……気分が悪いのは……。
あああああッ‼
信じらんねぇッ‼
吾朗の野郎、何、考えてやがるッ‼
自分の師匠に睡眠薬を盛るか、ふつ〜……。
俺は、携帯電話を取り出して、昨日の晩の吾朗から着信が有った番号に電話。
『お目覚めですか?』
「ふ……ふざけんな……。そもそも、ここ、どこだ?」
『あ、丁度、良かった。甲板まで来て下さい』
「甲板って……船か?」
『ええ、東京行きのフェリーです。東京って言っても「偽物」の方ですけどね』
「偽物だろうが、本物だろうが……東京には行きたくねぇッ‼」
『まぁ、そう言わずに……甲板から唐津の虹の松原が見えてますよ。中々の絶景ですよ』
冗談じゃねえ……。とは言え……本物の「東京」と偽物の「東京」、どっちに転んでも地獄だが……幸か不幸か、俺が向かってるのは、マシな方の地獄らしい。
約十年前……本物の東京は富士山の噴火で滅んだ。
あの頃、俺は自分では、そこそこ以上の魔導師だと思っていた。
所属していた「魔法結社」では……下の方とは言え、一応は幹部クラスだった。
だが……圧倒的な自然災害の前には、チンケな魔法など何の役にも立たなかった。
あの日から……俺は、自分が学んできた「魔法」を信じる事が出来なくなった。
そして……。
「あのなぁ……俺みて〜な力を無くした『魔法使い』が何の役に……」
『実は……総帥が、ある理由で「魔法は使えるけど、そこそこ以下」って人を集めてましてね。強い「霊力」の持ち主が迂闊に入れない「結界」内に潜入して、ある事をやって来てもらいたいんですよ』
「総帥? 何の総帥だよ?」
『ですから……薔薇十字魔導師会の神保町ロッジの総帥ですよ』
「ば……」
そんな筈は無い……。
その組織名は……富士の噴火で滅んだ筈の……俺が所属していた「魔法結社」の名前……いや……。
「誰が……再建したんだ?」
『エメラルドの永劫』
……それは、俺のかつての妹弟子……天才と言われたあの女の「魔導師名」だった。