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ストーリーモード はじまりの日 

 当作品ですが、公式シナリオとオリジナルを混ぜない方がいいのかな、と思いこちらは完結にする事にしました。

 ただ、【完結】と付けるだけやのも味気ないかと思い、ここまでのリプレイを小説風にしたものを追加投稿します。

 キャラクターのステータスは再調整後のもので、


・フィオ

コンジャラーLv2 セージLv1

武器:ハンドアックス→レイピア


・ルース

ファイターLv2 スカウトLv1 レンジャーLv1

《全力攻撃》→《防具習熟Ⅰ/非金属鎧》


・エイル

プリーストLv2 レンジャーLv1

《かばう》→《魔法拡大/数》

+バンダナ 武器を買ってないので金欠設定は消えてる


 といった構成になっています。

 活気のある街並みを、一人の少年が歩いている。

 十代半ばの、まだ幼さを残した顔立ち。淡い茶色の髪と目、背も高すぎず低過ぎず、取り立てて目立つ所の無い、ハッキリ言って地味な容姿だ。

 強いて特徴を上げれば、旅装であること、剣と軽鎧を着けて武装している事だろうか。

 とはいえ、ここルキスラではそれも珍しくは無い。近隣に遺跡が点在するこの地域は一攫千金と名誉を求めて冒険者が多く集まる場所。武装した冒険者はそこかしこに居る。

 この少年も、やはり冒険者を志してこの地にやって来た一人だ。

 辺りを確認しながら歩いていた少年は、一軒の建物の前で足を止めた。

 宿屋を示す看板と軒先には蒼い雷と剣の意匠。それと手元の小さな紙を見比べ、少年はその建物のドアを開けた。


 中に入ると、まずあったのは食堂だ。半端な時間の為か、人はまばらだ。


「いらっしゃいませ」


 直ぐに店員らしきバンダナにエプロンの少年が客に気付き近寄って来る。


「お食事ですか?」

「いや、冒険者志望だ。ここはルーサーの『蒼き雷の剣亭』であってる?」

「はい、合ってますよ。ルーサーさん呼んで来ますね」


 少年のような者は珍しくないのだろう、店員は直ぐに呑み込んで店主を呼びに行く。

 さほど待つことなく、奥から壮年の厳つい男が顔を出した。


「店主のルーサーだ。お前さんが冒険者志望か?」

「はい、フィオと言います。ここには両親の勧めで来ました」

「両親?」


 はい、と頷いてフィオは懐から一通の手紙を取り出し、ルーサーに渡した。

 その場で封を開け、手紙を読むルーサー。


「へぇ、あいつらの……」


 少し読んだ所で、フィオに目を向けるルーサー。まじまじと見るその視線には、どんな想いが込められているのだろうか。

 読み進めるとルーサーは次第に変な顔になっていく。そして手紙を読み終え、改めてフィオに向き合う。


「話は分かった。『蒼き雷の剣亭』へようこそ、歓迎するぜ。……それで、幾つか確認したいんだが」

「なんでしょう?」

「手紙に、一人でも冒険をしたいからと一人でウルフの群れに突っ込んだとあるが……本当か?」

「本当ですよ」


 本当ですよ、じゃねぇよ。ルーサーは内心呻いた。


「なんだってまた無謀な真似を」

「自分で言うのもなんですが、俺は協調性に欠けるので。出来れば一人でやっていきたいと思ったんです」

「止めておけ。自殺と変わらん」

「はい、同感です」

「――あ?」

「……。手紙にありませんでした? 死にかけた所を救出されたと」

「あったが」

「ただのウルフの群れに手も足も出なかったんです。一人ではどうにもならないと実感しましたよ。冒険者の宿では仲間の仲介もしていると聞きましたが、俺が人と組むのは問題ありますか?」

「…………お前さん、なんつうか、話が噛み合わねぇな」

「よく言われます」


 ルーサーはちょっと頭を抱えた。本人からも協調性に欠けると自己申告されたが、大分酷い。

 冒険者としてやって行くなら、仲間との連携は大事だ。なにせ命を預け合う間柄。能力よりも相性がものを言う。

 それで言えば、フィオがどんなに能力的に優秀でもこんな調子では相当苦労するだろう。

 それを上手くやれるコミュニケーション能力がないと――いや、むしろ。


「お前さんは、魔法剣士なんだな?」

「はい、フェンサーとコンジャラーです」

「それなら丁度仲間を募集してる奴がいる。まずは会ってみろ。――エイル」

「はい」


 エイルと呼ばれて反応したのは先ほどのバンダナにエプロンの店員だ。テーブルや椅子を拭いていたが、手を止めてルーサー達の所へ寄って来た。


「ルースを呼んで来い。それと、お前も給仕の仕事は今日までだ。こいつと気が合うようならな」

「!」

「エイル、こいつはフィオ、魔法剣士だ。ルースと三人でパーティーバランスが整うだろう。お前らで組んでみな」


 エイルはパッとフィオの方へ向き顔を輝かせた。


「はじめまして! 僕はエイル、プリーストだよ。よろしく!」

「ああ、よろしく」

「もう一人仲間を待ってた人が居るんだ。今呼んで来るからちょっと待ってて」




 程なくしてエイルは大柄な少年を連れて戻って来た。


「お待たせ。ルース、この人がフィオ」

「はじめまして、ルースだ。ファイターでスカウトとレンジャー技能も持ってる。よろしく」


 言って手を差し出すルース。

 ルースは黒髪に緑の目で三人の中では一番背が高く、体格も良い。如何にも戦士といった体つきだ。

 しかし威圧感は無く、むしろ人懐っこそうで大型犬のような印象があった。

 フィオはその手を取る。


「フィオだ。フェンサー兼コンジャラーだ。他にセージ技能もある。剣は正直、あまり得意ではない。その変わり魔法には自信はある」

「魔法寄りの魔法剣士なんだね。さっきも言ったけど、改めて。僕はエイル、プリーストでレンジャー技能も持ってる。回復は任せて。……それと」


 エイルはぎこちない動作でバンダナを解いた。そこにあったのは、二本の小さな角だ。


「……僕は、ナイトメア、なんだけど……」

「へぇ、珍しい。始めて見た」


 フィオの反応は不躾と言っていいものだったが、エイルはホッと肩の力を抜いた。

 エイルが恐れたのは拒絶されたり気遣われる事。

 フィオの無神経ですらある言葉は、それ故に裏も何も無く、ナイトメアである事に『珍しい』以外なんの感慨もない事を正しく伝えた。

 その遣り取りを認め、ルーサーはひっそりと笑む。フィオのコミュ障がいい具合に噛み合ったようだ。


 エイルはルースよりやや低い背丈で細身の少年だ。銀髪紫眼で整った穏やかな風貌をしている。

 話を聞くと、全員十五歳だった。揃って成人を期に親元を離れたそうだ。


 ルースとエイルは、やはり冒険者になる為にルーサーの元を訪れたものの、組むのに丁度良い人材が見つからず、宿で仕事を貰ってしのぎながら、自分達と組んでくれる誰かを待っていた。

 フィオは待ちに待った二人と組むのに適した技能持ち。且つ、年も同じとあって最初から歓迎ムードだ。


「よろしく。……二人とも俺と組むのに異論は無いみたいだが、いいのか? 初対面で」

「誰だって最初は初対面だよ」

「それに、ルーサーさんが怪しい人を招き入れるとは思えませんから」

「信用してるんだな」


 ま、合わないと思ったら解散すればいいだけだ。そう考えてフィオもこの三人でパーティーを組むのを承諾した。


「早速だが、新米に丁度良い依頼があるんだ。マイエル」

「ほいほい、話は聞いてたよ~」


 三人が一先ず互いを受け入れたのを認め、ルーサーは早速依頼を仲介する。

 と言っても、さっきからチラチラとこちらを伺っていたエルフに話を振っただけだ。


「こいつは『葉っぱを乗せたマイエル』。遺跡探しが趣味で、でも肝心の遺跡探索はしないで外部委託する変わり者だ」

「見つけるのが楽しいんだよ! 中身には興味無いんだ。けど、それで放置するのももったいないから冒険者に遺跡の情報を売っているんだ。で、丁度成り立て冒険者に向いてそうな遺跡を見つけたところでね」

「中を見てないのに、なんで"向いてる"なんて言えるんです?」

「ちょ、フィオ」


 フィオが入れた横槍に、エイルが慌てて嗜める。


「あは、気にしなくていいよ。むしろ、些細な違和感を流さず突っ込むのは探索の重要な資質だ。冒険者向きと言えるね。――質問の答えだけど、ちょびっとだけ中を覗いて見たんだ。俺は数を熟してるからね、外観と入口だけでもそれがどのくらい危険な場所か、勘が働くんだよ」

「とりあえず納得します」

「フィオ……」


 妙に偉そうなフィオの物言いにルースとエイルは早くも不安を覚え始めた。仲良くなれるだろうか。


「それでその遺跡だけど、ここから半日程度歩いた森の中にある。おそらく魔動機文明時代のものだね。遺跡の玄関は長く開けられた様子が無くて、未探索の可能性が高い。エントランスにだけ入って見たけど当時流行った様式の石像が二体あって、その足元にこんな文字があった」


 そう言ってマイエルは一枚の紙を差し出す。

 そこは文字らしきモノが並んでいるが。


「……読める?」

「全く分からない」

「とりあえず神紀文明語でも魔法文明語でもないな」

「あ、フィオはその二つは分かるんだね」


 首を傾げる三人にルーサーが助け船を出した。


「『バルトゥーの屋敷』とあるな、魔動機文明語だ」

「ルーサーさん、読めるんだ」

「伊達に元冒険者やってないさ。しかし、バルトゥーか……。それなら『魔法生物大全』があるかも知れんな」

「有名な人ですか?」

「『魔法生物大全』……本でしょうか」

「確か魔法生物を研究している人物だった筈だ。『魔法生物大全』はその頃に書かれた物で値打ち物だ。もしこの本があったら俺が買い取ろう」

「ルーサーさんが?」

「良いものにはそれなりに出すぜ?」


 ニヤリと笑うルーサー。


「少なくとも、出入口にいきなり罠を置くような遺跡ではないし、小さめで探索にも一日あれば十分そうだよ。未探索なら、その本もそれ以外の値打ち物が残ってる可能性は高い。――どう? 遺跡の情報買う?」

「どうする? 俺は行きたいと思うけど」

「俺も! やっと冒険らしい事出来る!」


 ルースは宿の雑用ばかりの日々に飽いていたようだ。


「僕も異論は無いよ」

「よっし、まいどあり~」


 三人で少しずつガメルを出し、情報を買った。


「それじゃ、案内するけど、出発はいつにする?」


 今は昼を過ぎた所。徒歩半日の遺跡に向かうには遅い。


「明日の朝でいいんじゃない?」

「だね。時間取れるなら下調べ出来るし」

「? なんか調べる事ある?」

「店主がバルトゥーの名前に反応したろ。有名な人なら資料があるかもだし、事前に分かってれば取れる手もあるだろうし」

「昔の人でしょ? 聞き込みしても分からないんじゃ」

「……それなら図書館かな。ルキスラの図書館は紹介があれば僕等でも閲覧出来る筈。――ですよね?」

「おう。いいぜ、紹介状書いてやろう」


 ルーサーは快く紹介状を書いてくれた。マイエルとは明日早朝に待ち合わせして、三人は図書館へ向かう。


 その道中、互いを知るべくエイルはフィオに話し掛けた。


「フィオは遺跡探索に乗り気だったね。やっぱり冒険が好きなの?」

「やっぱロマンだよな、遺跡探索!」

「冒険が、って言うか、俺はいつか神紀文明時代の遺跡を探索したいんだ」

「神紀文明時代?」

「うん。俺は、神話の時代の事が知りたいんだ。この世界ってはじまりの剣が作ったって伝承があるだろ? なんで剣なんだ? 魔剣の存在があるにしろ、世界を作ったのが剣てどういうこと? そのはじまりの剣はどこから来た? 使われる事望んだと云うのは本当か? 本当だとしたらなぜ? 本能的なもの? そもそもその話を言い出したのは誰? はじまりの剣が――」

「ちょ、ストップストップ!」


 いきなり滔々と語り出したフィオに、エイルは驚いて待ったを掛けた。

 止められてやや不満気なフィオに二人は悟る。

 こいつヲタクだ。

 急いで話題を逸らせる。


「そ、そっか、フィオにはしっかりした目標があるんだね。俺は単に自分を鍛えようって故郷を出ただけだから、なんか羨ましいな」

「そう?」

「うん、分かるな、それ。僕もやりたい事があったんじゃなくて、――自立するのに、冒険者を勧められたから、って理由だから」

「……。ああ、ナイトメアだと一般市民に溶け込む方がハードル高いのか」

「そういう事」


 フィオの明け透けな物言いにエイルはくすりと笑う。

 人種なんて気にしません、と言う顔をことさら強調したり、なんでもない顔をしながら裏で『穢れ持ちなんて』と言う人ばかり見て来たエイルには、フィオの率直さが小気味良い。


「そっか、エイルも苦労してるんだな」


 みんなで頑張ろうな! と拳を握って見せるルースは、何も考えていない。

 ルースとは数日を共に過ごしたが、良くも悪くも単純で嘘がつけないタイプだ。裏表が無い、のではなく、繕うのが下手過ぎて意味が無いのだ。

 二人共、変に気負わず接する事が出来る。

 この二人となら長い付き合いが出来るだろうか。エイルの胸に淡い期待が灯った。




「……っ、これが、帝都の図書館……!」


 その数分後、図書館で淡い期待は早くも萎みはじめた。

 フィオがそこで暴走したのだ。

 目的を忘れ本の山に突進しようとするフィオをなんとか宥め、件のバルトゥーについて調べようとしたが、最もこの作業に向いてるフィオがあちこちに気を()ってしまい、これといった成果は得られなかった。

 フィオと長い付き合いをするのは大変かも知れない。

 しかし相互理解は深まり、ルースとエイルの連携は強化されたようだった。

 ちなみに、一人でウルフの群れに云々はリプレイを始める前に「一人で戦闘したらどうなるんだろう?」とフィオのステータスでウルフ×3と戦闘させてみたのを折角なので活用しました。

 あっさりボコられ「あ、確かに一人は無理だわw」と納得した思い出。

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