剣聖
「ぶはっ!ゴホッゴッ!じ……死゛ぬかとおもっだ……」
体が水面にたたきつけられた時の衝撃と流される間に川底や岩にぶつかり全身が痛い。
「きっと俺は死んだ扱いにされるんだろうな……おばさんたちに世話にはなったから俺の訃報が届いてしまうことは申し訳ないが……少しでも遠くへ逃げなければ……」
「よう兄ちゃん、こんなところで水浴びか?」
「……!誰……盗賊か……」
「わかってるなら早い。着ているもの、持っているものをすべて置いていけ。そしたら見逃がしてやらんこともない」
戦闘の訓練を積んでるのならまだしももっぱら筋力や体力トレーニングしかしてない俺が武器もなしにこんな奴に敵うはずがない。逃げるか……?
「おっと逃げようったって無駄だぜ?」
盗賊の男がにやりと笑うと近くの茂みから10人ほどの盗賊が現れた。
「見逃してやらんことがないってことは例え身ぐるみ置いて行っても見逃すかどうかを考えるってだけだよな?」
「まぁそういうことになるなぁ……」
「くっ……最初から殺すつもりのくせに……」
「俺らに従って命乞いをする姿を見てから嬲り殺すのが楽しみだったが……もういい。てめぇら、やっちまえ」
糞!!この世界はくそ野郎しか存在しねぇのかよ!
「そこまでだ」
「……!!何者だ!」
崖の上から蒼い髪に白い鎧を身にまとった人物が飛び降りてきた見た目は派手だが一見強者から感じるような迫力や風格はあまり感じられない。が、しかし、崖から崖跳び降りてきて無傷なのを考えると相当鍛えられている、
「黒渦盗賊団で間違いないな?」
「だったらどうした!俺らのこと……まさか知らないわけではあるまい?」
「ああ、よく知っているよ。私はそのために来た。」
「御託はいいから名乗れや!」
「そうだね……私は剣聖ルイ・ロドリカ、命を受けてお前たちを捕縛しに来た」
「なんだって!?剣聖!?剣聖がなんだって俺たちを!」
「君たちはあまりにも多くの悪事を起こしすぎた。ここに天誅を下す」
「く……こっちのほうが人数は有利だ!包囲して殺せ!」
親玉らしき男が命令するとさっき出てきた10人のほかに新たに20人ほどの盗賊が姿を現しルイを囲んだ
「君、大丈夫かい?」
「あ、ああ。ありがとう助かった、しかし敵が多すぎやしないか……?」
「大丈夫。私に任せておいてくれ。こう見えても私はそこそこ強いのだ」
ルイはにこりと安心させるように笑うと次の瞬間には迫る盗賊3人をひと薙ぎで吹き飛ばし、矢や魔法をトリッキーに躱しながら10人近くを無傷で先頭不能にした。
「なにがそこそこだ……チート使い放題じゃねぇか……」
「そんな大それたものじゃないさ。訓練の賜物だ」
剣聖の時点で勝ち組確定だろうが……
「さて、あとは君だけだが?」
「ぐっ……」
ルイは瞬く間に盗賊約30人を先頭不能にすると親玉と対峙する
「確かにあんたは強いさ……しかしそれが仇となる!」
「!!煙玉……逃げる気か!」
「ざぁんねん!!」
……!後ろに!
「これでお前は俺に手出しできまい……」
俺は人質か……どいつもこいつも……
「ぐ……卑怯な」
「君は今彼を人質に取っている、間違いないね?」
「そうだ。わかったらさっさと王城へ戻って失敗報告でもするんだな!」
「人質を取っている以上こちらも手加減はできない。」
「何を言ってやがる」
次の瞬間俺の首に剣を当てていた盗賊の腕が切り飛ばされた
「私の剣は正義の剣。悪事を働くものと相対する時力を発揮する。」
「く……くそがぁあああああああ!!!」
「続きは独房で……だ」
「本当に助かったよ。改めてありがとう」
「いや、当然のことをしたまでさ。ところで君は何でこんなところに?この近くには村も街もないが……」
「あ……えっと」
どうしよう……この後のこと考えてなかった。ルイは王都で命令を受けて子の盗賊を捕まえに来たんだよな……?てことはルイについていけば安全に王都に移動できるのでは?
「実は王都に行こうとしていたんだが道中、荷物も身分証も全部なくしてしまって探してたところだったんだ」
「なるほどね。だったら私達が王都まで送ろう。身分証も作ってもらえるよう計らってみるよ」
「ありがたい……達、ということは他にもこの盗賊達をを捕まえに来た人がいると?」
「そうさ、たまたま休憩をしていたらこの場が見えてね。伝えてはあるからもうそろそろ合流できる頃だと思うよ」
一時はどうなることかと思ったが……なんにせよ安全にこの場から離れられることは助かる……
その後ルイの仲間が到着する前に親玉の止血と盗賊達の捕縛を手伝った。