裏の顔
「レン君、返事を聞きに来たよ」
「どうせさっきの会話も聞いてたんだろ?言うまでもなくわかっているだろ……」
「そうだね。実は予言では君が死ぬはずだったんだ」
「それはどういう……」
「アリスは魔獣に殺された幼馴染を想い魔王討伐へと望むはずだった。だから君のことは見捨てるつもりだったさ」
「それは勇者としてはどうなんだよ……!」
「平和のためだ仕方がない。ただ君の髪の毛を見てもしかしたら元の世界へ戻る手段を知っているかと思い助けたが……期待はずれだったよ」
「そうかよ、そりゃ知らなくて悪かったな。」
「君も日本人だと知ってもしかしたら僕のように特別な力を持っていると持ったからパーティに誘った。アリスもついてくれば今回の任務は大成功だからだ。しかし、どれも期待通りにはいかなかった」
「何がいいたい」
勇者はにやりと笑うと……
「君はもう用済みだ。しかし僕が殺してしまっては足がつく。そこでこいつだ」
「グルルルルルルルゥゥゥゥゥ!!!!」
「そ、そいつは……」
「この間殺した魔獣の番さ。ここにいても何ら不思議絵はなくかつ僕の仕業とは誰にもわからないって仕掛けだよ」
なんって野郎だッッ!!!
「さあ鬼ごっこの始まりだぁ!仮に!万が一……いやッ!億が一のも生き残れたとしてもお前ごときモブの話に耳を傾けるやつなど一人もいない!!!」
「グォォォォォォォォオオッッッ!!」
「……くそッッ!!」
魔獣が檻から解き放たれた。どうやってもこいつに勝つことはできない……たとえ逃げ切れても奴に殺されてから魔獣の餌になるだけだ……
唯一可能性があるとすれば……
その可能性にすがるためある場所へ駆け出した。
この森のことはよく知っている……この先には野薔薇が咲いている。魔獣でもわざわざ棘の中を突っ切るのは少し躊躇うはず……俺にも棘は刺さるし出血は免れないが背に腹は代えられない。突っ切る……
「グォオ……」
「ははは!考えたね!こんなんところに薔薇が咲いているなんて。だがこいつには飯を与えていない。血眼になって君を喰らおうとするはずさ。その証拠に……」
「グルルルルルルルルッッ!!!」
クッソ!もう棘の道に入ってきやがった……餌を与えてないってことは俺を殺す気で準備してやがったな……っ!
恐怖と痛みに体力が削られ、ようやく目的の場所へとたどり着いた
「鬼ごっこはお終いかな?」
「ああ、もう走る気力もねぇよ……」
「そうか……じゃあさっさと殺されてくれ」
「じゃあなくそ野郎」
俺は流れ落ちる滝に飛び込んだ。ここはかなり高いが運が良ければ助かるだろう……
「チッ飛び込んだか……しかしこの高さだ、助かるわけはない。目的は達成した。お前ももう用済みだ」
「グルァァァアァアアアアッッッッ!!!」
勇者は魔獣を両断しその場を後にした。