キッカケ
この町は安全な町である、少年はそう思っている
。
そして、それは間違いではない。
この時代に場所が違えば、一般な平民であれば、一瞬にして物言わぬ肉片となっているような危険な場所が存在する。
そしてそのような被害は魔物という存在によって引き起こされる。
この世界には魔物という生物の他には基本的に人という括りになっている。
そこから人間と亜人という能力の差が出てくるわけである。
彼ら「亜人」はエルフやドワーフ、犬人と人間のサイズ感における特徴の違いという認識が一致している。
例えば、エルフは耳が長いが、プライドが高いすなわちコミュニケーションが苦手だ。
ドワーフはコミュニケーションは苦手だが、鉄製品や石細工に精通していたり、興味のある輩が多いので、逆にそういうマニアックな話を種族間問わず得意とする。
犬人は、狼に近いような見た目もあって人間から蔑ろにされてた時期があって人間と狼系の魔物を恨んでいる節がある。
人間とは正当な手順を踏んでの関係を形成している。あとは獣に近い体質で鼻がよく効く。頭は悪い。
このような感じで「人」というまとまりができているわけだが、根本の目的として、魔物の脅威を退けることにある。
エルフであれば、高い立地を好み、魔物を避ける。
ドワーフや犬人は武器あるので力で退ける、人間は工夫をする、高い立地や大きな力を保有することは基本的にはないので、町単位で柵やその他の対策で持って退けている。
そして魔物は、何度退けようとも自然発生をしているというのを「人」は薄々理解しているが、その確証がないので、各自魔物対策をするという時点で終わってしまっている一種のシステムの循環がある。
話は戻るが、その少年は町の外に出たことはなかった。
そして、町で労働に従事している生活を送っていた。
両親は亡くなっているので、知り合いの家に住み込みで働いていた。
そんな少年は満ちていく月と、自分の年を重ねていた。少年は11歳だった。
そして今日から3日目で歳を塗り替える。今日から3日後に月が満ちそうだと。
既に周りには12歳になっている子もいる。
そして11歳といっても労働は自分を待ってはくれないので、少年は早めに寝ることにした。
今日、少年は12歳になった。
そして周りには同じく12歳の知り合いや幼馴染がいる。
そして、みんなが何やら楽しみにしている。
この町では月が満ちた次の日に、神者という者が12歳の者にスキル「鑑定」を使ってスキルがあるかどうかを確認することができる。
その神者は白い髪を蓄えた優しいお爺さんであって、周りのみんなもテンションがものすごく上がっている。
何故なら自分にもスキルがあるかもしれないという期待があったからだ。それに加えて、親たちはその様子を微笑ましげに見つめている。
みんながみんな期待半分、嬉しさ半分という感じだった。
そして、少年もそうであったが、割と期待は無かった。
なぜならばスキルを受け取ったからと言って、この生活が変わるとは思わないからだ。
少年はみんなのワクテカした姿を見てこう思った。
「どうせ、みんなこの町に残って親の手伝いをして家
庭を育てて、安心な暮らしをするだけなんだ。
そしたら僕もみんなと一緒にこの町で暮らすんだ。
確かに、ちょっとスキルは欲しいけどね。
なくたって、特に落ち込むことでもないさ。」
また、神者さんも傭兵さんもこの町の出身であり、ずっと居続けているのを思い出し、より一層この町で過ごしていこうと少年は考えていた。
誰よりも考えていた。
今までこの町で労働しかしてこなかった少年は、新しいことよりもこの町での暮らしをするつもりであると。
そして、ついに少年の順番がまわってきたのであった。