プロローグ 町と人
この世界はある程度平穏に回っている。
平民と呼ばれる自分たちは、農作業や町の魔物対 策に時間をかけている。
自分は、そんな生活が楽しくも辛くも無かった。
両親を病気で亡くし、一応は友人と呼べる平民の知り合いの親に労働力としての住み込みを求められ、行く先もなかった自分はその通りにした。
この町の警備は町で言えば立派な方だ。
なんせ魔物が襲ってくることがほとんどないからだ。
モウと言われる家畜を育て、またコケッコと言う家畜を育てるこの町では、家畜が、また人間の両方が魔物に狙われる危険性もある。
具体的な魔物で言えばワオンっていうのは聞いたことがある。
よく村周辺の森に潜んでいる恐ろしい牙を持つ魔物のんだ。
大人でも噛まれた場所が悪かったら死んでしまうそうだ。
しかし、ここの村にはワオンは来たことがないらしい。そのほかの魔物も村の中に来たことがないらしい。
まぁ、その理由として、自分たちが町の周りに木で作ってきた柵が思いのほか頑丈で、高さも5メル
もあるそうだ。
自分で言うのもなんだけれども、4人分を重ねたくらいはあると思う。それに何か嫌な臭いがする。いや、したの間違いだ。
この町の人たちは、農作業と対になるぐらいに魔物対策をしている。
村人はよく木を鉈で切り崩している。
そうすると樹脂?がでるのだ、そしてそれは臭い。
みんな布を巻いて極力吸い込まないようにしてその樹脂を取り出している。
それで生み出したのがこの臭いものだ。
それは匂い袋である。
匂いでごまかしたり相手が嫌な匂いで対策しようとしたのがこれだった。
そして彼らは安全な場所を日々作っているのだ。
そんな彼らが考え喜ぶのもまた、魔物がこない安全な日々だということだ。
どこの家も朝と夜にご飯を食べて、夜の見張りは戦闘能力のある傭兵にやって貰えばいいのだと。
たまに盗賊がいるんじゃないかって?そんなのもいない。
そもそも自分たちから奪えるのは家畜とその村のノウハウと平民というなんてことない能力を持つ人材だけだ。
隣の町はリーダーが仲良くしているらしく、度々もてなし合っているらしい。
そして、この町の人は子供に優しい。
幼くして労働力である自分が何を言ってるって?
そりゃ、周りだって家の手伝いぐらいはしているし、女の子はもう料理をどうやったら上手く作れるかって頭を悩ませているのを見かける。
大人びていると言われればそうだけど、みんなこの町が嫌いだとは思わない。
そして誰も外に出て行こうとは思わない。
雇っている傭兵だって、この町の外に出て仕事を当てられるより、この町でのんびりしている方が楽だって言ってる。
多分、ここが生まれの地だっていうのもあると思うけど。
話は変わるけど、外には王都っていう大きい町があるらしい。
そこは木じゃなくて石で壁が出来ているらしい。
木だと腐って弱くなっちゃうから確かにそこは石がすごいと思う。
でも、この町にはそんなに石はないのだ。
贅沢は言えないけれど、食べ物だったら家畜や作物があって、特に丸い緑色で中身が赤いのがあるんだけど、まるで川の水をいっぱい含んだみたいに瑞々しい。
王都とこの町はその丸い作物を何度も取引してるってリーダーが言ってた。
もちろん、自分も大好物でご馳走だと思ってるし、他にもこの町が凄いって言える。
だから、自分もこの時は将来ここで生活していこうと思っていた。