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おっさんの好機と国境の街フィーロ

 トゥールさん達の迎えが、ハルフーレ魔術学園都市に来る事になり師匠と共に2人も護衛しながら向かう事となった。

 次の街である国境の街フィーロへは山を越え、次の日に向かう予定となっていたが、安全のために今日中に向かう事となった。


 まあ快適さを犠牲にしてとばせば、今日の日暮れには着きますからね。リィスにクッションを2つ追加して貰えば、トゥールさん達も揺れは気にならないでしょう。


 山を越え、フィーロの街が近づく。ここまで馬車の中では一切の会話はありません。

 と言うより、揺れが激しすぎて話せません。


 快適さを気にしないで全速力でと言われ、テンションの上がった御者のモルさんが見事に快適さではなく、スピード重視に心のギアを切り替え、ガタガタと縦に揺れる馬車に窓から見える風景は、通常の馬車のスピードの倍以上の速さで流れていく。


 さすがは『操車』のスキル持ちですね。


 普通このスピードで馬車を操ろうものなら、車輪が壊れてもおかしくはないそうです。

 休憩時に師匠がグッタリしながら教えてくれました。ちなみに今は私の肩にリィス粘液枕を追加して、それを挟んで寄りかかるようにして、眠っています。


 ふふ。撫でるチャンスですね。役得です。


「痛っ……」


「まったく油断も隙もない……。馬鹿もんが……」


 ゆっくりと師匠の頭に手を伸ばそうとすると、師匠が目を閉じたまま、弱々しく撫でようとして手をはたく。あら。起きていたんですね。残念です。


 ちなみにトゥールさん達は、三半規管は丈夫のようで、この揺れの中でも腕を組み、静かに目を閉じていた。

 そしてルファに至っては、御者台のモルさんの横に座りその操縦を必死になって自分のものにしようと観察し続けていた。


 さすがですね。これならばフィーロに着く頃には『操車』のスキルの取得も期待できそうです。


 日が落ちたころに、フィーロの街へと到着する。本来のスピードであれば夜中だった事を考えれば、驚異的な早さでの到着だった。



 ここは、ハルフーレ魔術学園都市への最後の街。


 この先の川を境に、ディート王国へ入国となる国境の街ということもあり、宿場町としても発展してきた街である。


 陽も落ち街へ入る列も短く、大して待つこともなく街へと通されると目の前には、そこまで大きくはないが、整然と木造の様々な色で塗られた屋根の家が建ち並び、美しい景観が広がっていた。まさにアルグレント王国最初であり最後の街として相応しい街並みであった。


 そのような特徴のある街だけに、日は落ちてはいるが多くの人が通りを行き交っている。


 ここまで人が多ければ、トゥールさん達も耳を隠せばあまり注目はされずにすみそうですね。


 あぁ盗賊達ですか?勿論殺さずに縛ってあります。


 ちょうど大容量の魔石布が手に入りましたからね。

 荷台部分を空けて土魔法で牢を作って、とりあえず臭かったので水を浴びせて放り込んであります。


 クリーンは使いません。この人達に使うには少々魔力が勿体ないです。水浴びで十分です。


 まぁ道中必死で牢に捕まって揺れに耐えてましたが、何とか無事のようです。最初は叫んでいましたがすぐに静かになりました。あれで喋っていたら舌を噛み切ってもおかしくないですからね。


 門にて入街の手続きと並行して、ガルバ達を引き渡す。やはりガルバとショートソードの男。ムシュは手配書が回っている賞金首だった。


 というかガルバ達は、裏社会でも名の知れた大物だったらしいです。今回トゥールさん達を横取りした組織も、裏社会ではかなりの大手。それすら襲ってる事を考えれば相当の実力だったんでしょうね。


 ただその襲撃は双方相当な被害が出たらしく、立て直しの為に今回欲を出して私達を襲ったという事でした。


 まさかただでさえ少なくなった残りの仲間が、一瞬で全滅するとは思わなかったでしょうね。


 ガルバ達の引き渡しと同時に、盗難品の確認が行われる。

 基本アジトにあったものは、盗賊を討伐した人が総取りです。


 なので、魔石布に入っているアジトから回収した物は自分の物ですが、買取での返却希望が被害報告と共に出ていた場合は、売る売らないは別にして交渉権は相手に発生するらしいです。


 まあ下手に売るより高く売れる可能性もあって、討伐者にとっても利益があるんでしょうね。厄介ごとに巻き込まれる可能性も大いにありそうですが……貴族みたいな……。


「それでは、こちらが返却希望のリストにあった盗品です」


 盗賊達を引き渡した衛兵からリストを受け取る。

 やはり貴族や商人が多い。食料などはないが高価な酒や宝石、武器などが並んでいる。


「スクロールはないか……」


「はい。おそらく商人や一般の旅人からの略奪品ではないかと思われます。このような高価な品であればリストに載せますので」


 ガルバの部屋にあったスクロール。これには幸運な事に返却希望はでていなかった。


 手続きを進める兵士の言う通り、おそらくこれはトゥールさん達を略奪したときに奪ったものでしょう。今回の回収した物の中で唯一欲しいと思った道具ですからね。リストに無くて良かったです。


「ではこのリストにある物は全部お返しします。交渉はお任せします」


 一般市民の女性が届けていた思い出の品っぽい物はそのまま返却し、基本的に取れるところから取る。その方針を伝え書類にサインする。

 これで上手い事やってくれるだろう。


 貴族の相手もしなくてすみますね。


「それではタクト様。先に皆様と宿に向かっています」


「よろしくね。ルファ。終わったらすぐに宿に戻るから」


「はい。皆様の護衛。お任せ下さい」


 先に師匠達には宿へと向かって貰い、一人入金の手続きをしに、この街のギルドへと向かう。

 リィスとペル、キュリは盗賊のアジトを送還場所に指定しており、街へ入るチェック前に送還させていた。

 その為護衛としてルファには宿に師匠と向かって貰ったのだ。


 どの街もギルドは門の近くにあり、手続きは非常にスムーズに済んだ。


 ただ盗賊を壊滅させた事で、ギルドからも報酬とポイントが入る事になり久々にステータスを表示する事になったのだが……。


 輝度43


「あの……」


 はい。この反応久しぶりですね。


 仲間が優秀だったんです。否定はしませんよ。その通りですから。





トゥール 姉エルフ 男装の麗人のようなキリッとした佇まいと言葉遣い。気品が溢れている。

トゥーレ 弟エルフ 姉に負けず劣らず気品溢れる容姿だが、話し方は軽い。姉よりも好奇心旺盛。


父親はトゥーリ 母親はニィーレ

ちなみに祖父はトゥーラ……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 次に世代は「ろ」か(明後日の方を見ながら 仕事前の確認ならともかく「やらかし」後なら 輝度重要項目じゃなかろうに、そこ確認する必要今回ねえだろ
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