おっさんのクリーンとルファのジト目
速い。
間違いなく、魔力で身体能力を上げている。
「無駄だ!どうせガルバ様にも卑怯な手を使ったんだろ!でなければガルバ様がお前ごときに捕まるはずがない!」
「あなた程の方がどうして盗賊なんて!」
私と同じタイプでしょう。純粋な身体能力や闘気による能力向上ではなく、魔法を使う者の常套手段。
魔力を纏い、私の振るう剛棒をなんなくかわす。
そして彼の隠密は間違いなく魔法による隠密。おそらく『インビシブルオーラ』……匂いなども含め姿を消し、視覚聴覚嗅覚から逃れる魔法でしょう。それほどの使い手。
ですが……。
剛棒を前に出し牽制する。そのまま突きを繰り出し、ショートソードの男をガルバの部屋から通路へと押し遣る。
ここは剛棒を振り回すには狭いですからね。突きだけしか出せないとわかっていれば、簡単に避けられてしまう。ただ彼にとっても自分も直線的な動きしかできない分、この部屋から出ようとするこの展開は、都合が良いのでしょう。
剛棒の突きに合わせ、簡単に通路へと引き下がってくれる。
でも、狙いはそこにあるんですよね。
『ストーンレイン』
男がガルバの部屋から出る瞬間。彼がそこを必ず通る瞬間がある。いくら速く動けてもそこにいると分かれば当てるのは簡単です。
「ぐぼがっ!」
開いた扉から出る瞬間。枠いっぱいのストーンレインを撃ち込む。下水道でもよくやってた手です。
そして、その勢いで通路側の壁に叩きつけられた男は何かを言い残し気絶した。
「リィス!」
「わかったよー」
リィスの粘液操作により出された粘液が硬化し彼を拘束する。これだけ巻かれれば簡単には解けないだろう。
最後の言葉は「クソが!」でしょうかね?まあいいです。
「ペルー。有難うね。おかげで助かったよ」
今回の功労賞は間違いなくペルでしょう。
あのまま気づく事なく殺されていても、不思議では無かったのですから。
五感を頼ることのない気配察知……。これは今後も必要不可欠ですね。
「ご主人様!」
通路で男をリィスとともに拘束していると、牢からルファが2人のエルフの鎖を外し、連れ出した。
ルファが肩を貸してはいるが、普通に歩けているようですし体は無事のようですね。体力は落ちているようですが。
「助かった。私と弟の命はそなたに救われた。礼を言う」
2人の姉弟エルフが頭を下げる。その姿は汚れてはいるが凛とし神々しさすら感じるものだった。
そして、2人とも手は出されておらず、鎖を無理やり外そうとした手首の傷以外は怪我もなかった。
「いえ。私達の馬車も襲われたので偶々です。無事で良かったです。それよりも」
生活魔法
『クリーン』
2人の手首に治癒ポーションをかけ、肩に手を置き、いつものようにその汚れた衣服ごと汚れを取り去るイメージで魔法を行使する。
勿論全力です。
「「これは⁈」」
手首の傷が消え、クリーンの魔法が唱えられたその瞬間。2人の驚きの声と共に、全身に細かな泡が立ち、上から下へと弾けていく。
うんうん。やはりクリーンはこうじゃないと。
頭の先からみるみる汚れが落ちていく姿を確認すると、やはり気分が良い……。いいっ???
「あっ。んっ。んんっ。あふぅ」
「ねえさっ。んっ。これっは?ぐっ」
目の前には内股になって悶える2人の姉弟エルフ……。その姿は耳の先まで真っ赤に染まり、細かく息を吐き出しながら、涙目でこちらを見つめる……。そして耐えきれずルファの肩から手を離し、内股のまま地面に座り込んでしまった。
あぁ。またやってしまったみたいですね。
ルファの目が冷たいです……。ルファもあれを経験済みですもんね。体を洗うのは気持ちいもの……じゃないですか?
やりすぎですね。
「あっあの……。」
「んっうん。綺麗にしていただいて有難うございます。捕らえられてから一度も洗えていなかったので、丁度綺麗にしたいと思っておりましたので。わた。私はエルフ族トゥーリの娘。トゥール。そして弟のトゥーレです。」
しばらく無言で座り込み。すっと立ち上がると、何事も無かったかのように振る舞い礼を言う。トゥールさんと言うらしい。
「タクトです。それと従者のルファとテイムモンスターのリィスとペルです。」
「タクト様の奴隷のルファです。トゥール様。トゥーレ様。」
互いの自己紹介と挨拶を交わすと、ルファに拘束した盗賊たちを入り口に連れていくよう指示を出す。
その間に食料庫から拝借した食事をトゥールさん達に振舞った。どうやらロクに食事を与えられていなかったようで、待っている間トゥーレさんのお腹から盛大に腹の虫が鳴いていた。
「うまっ!うまいぞ。ありがとなタクト!」
どうやらこの世界のエルフは肉食OKのようです。
トゥーレさんの皿からすごい勢いで食料が消化されています。うんうん。いい食べっぷりです。まぁ隣のトゥールさんの皿からもいつのまにか食べ物が消えていくので、2人とも……と言えそうですが。
こんな若い見た目でも師匠以上の長命種。圧倒的に歳上なんでしょうね。きっと。
「ほう。それでは外にタクト殿の師匠がいるのだな。」
大方食べ終わり、やっと2人が落ち着くと、話はアジトを出た後の話になっていた。
「はい。馬車で待機して貰ってます。そういえばトゥールさん達の家は近いので?あー殿は付けないで頂きたいのですが」
「そうか。ではタクトと呼ばせてもらおうか。でだ。集落自体は近くはないのだ。ただタクトの師匠が魔導師ならば連絡の方法があると思うのだ」
「そうですか。それでは食事が終わったら合流しましょう」
連絡する手段があるなら何とかなりそうですね。
アクセス有難うございます。
なかなかプロットを納得いく小説の形に出来ず悩んでます……。文章力……そうですね。それに尽きます。
物語の内容が変わらない程度での更新をする事がありますがお許しください。




