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おっさんの救出作戦と手練れの刃

 アジトの場所を聞き出し、来てみたものの。言われた場所には何もない。

 疎らな木々に、背の低い植物の茂み。そして小高い丘。特徴は一致している。


 丘にはいくつか穴が空いている。


 が、これは蛇やら兎やらの巣穴でしょうね。

 人が通れるようなサイズではないですから。


「ふむ……。騙されましたかね」


 もしくはもう少し行った先か……。

 いや、あの何たらのガルバから聞いた場所は確かにここです。


 あの状況で嘘をついても何も得はしないでしょう。命あっての物種ですからね。


「ご主人様!」


 周囲を確認していると、ルファの嗅覚に何かが引っかかったようだ。

 しきりに藪の中を気にしている。


「さすがルファ!どうやらここが入り口みたいだね」


 その場所は巧妙にカモフラージュされ、ここにアジトがあると知らなければ間違いなく素通りされるだろう場所だった。

 そのままほら穴に入ると、一気に空間が広がる。


 どうやら狭かったのは入り口だけのようですね。


 ペルの気配察知とルファの嗅覚により、このアジトには6人しかいない事がわかった。

 恐らくはそのうちの2人が囚われている人なのだろう。という事は賊で残っているのは4人。


 リィスに偵察してもらうと、4人のうち3人の場所はすぐに分かった。部屋で一緒にいる2人のうち、1人は酔っていてぐっすり眠り。もう1人も寝てはいないが酔っている状態。1人は怪我の療養中……。うむ。気を抜きすぎじゃないでしょうか。随分と無用心ですね……。


「では行きましょう」


 身を隠しながら、部屋を覗き込み、酔っ払っている男へと一気に距離を詰める。


「なっなんだお前⁈ここをどうやっ…こへ……」


「はい。あなた方のボスから聞きました。あなたも眠ってって下さいね」


 剛棒で側頭部を一突きし、気を失わせると眠りこけている男と共に縛り上げる。

 そして同じ方法で、療養中の男の気を失わせ2人と共に縛り上げた。


 これであと1人ですね。


 間違いなくいる残りの1人。アジトへ入った瞬間に、たしかにペルとルファの気配察知に引っかかった気配。

 しかし、次の瞬間には気配はすっかり消えたと2人は困惑していた。


 おそらくかなりの強者……。もしくは斥候などの気配の操作の上手い人間……。どちらにせよ要注意ですね。


 アジトを奥へと進むと、ほかの部屋とは違う調度品の置かれた部屋を見つける。


「ガルバの部屋ですかね?」


 先行していたリィスの案内で、ガルバの部屋と思しき部屋の奥へと進むと、鍵のついた扉があった。


 しかし先に入ったリィスの姿がない。


「リィスーどこですかー?」


「ここだよー。キラキラがいっぱいだよー」


 扉の下の隙間から中へと入ったリィスが扉の向こう側から応える。

 どうやらこの扉の奥は、宝物庫になっているらしい。


 ガルバが持っていた鍵束の一つで開いたその扉の奥には、強奪したであろう宝石、スクロール、調度品が積まれ、その奥は食料庫、武器庫となっていた。


「ガルバが全部管理してたのかね?」


「んーそうですね。あまり部下を信用してなかったんでしょうか?」


 そのまま手当たり次第に食料、酒、武器、そして宝物庫の中も根こそぎ魔石布であるズタ袋に詰め込んでいく。


 かなり羽振りの良い盗賊のようですね。まぁ売り行く前の最後の襲撃だったんでしょう。


 宝物庫の物を詰めている間に、リィスとペルには囚われている2人を探してもらっている。

 しかし、全ての部屋を回ったというリィスとペルからは、発見したという報告は得られなかった。


「いないですか……。リィス。牢屋…みたいな部屋はありましたか?」


「んーんー。ないよー。ねぇペルちゃん」


「キーキィ」


 リィスの問いに、ペルも落ち込みながら首を振る。


 牢屋があって空ならばわかりますが、誘拐や略奪もするような盗賊のこの手のアジトに、攫ってきた人を入れておく場所がないのは、不自然ですね。


「キィー」


 突然ペルが飛び立ち、宝物庫からガルバの部屋に戻り、壁に向かい声を上げる。


「その壁の奥に?」


 どうやら壁の向こうから声がするらしいです。


 調度品の置かれた棚を横にずらすと、そこにはまた鍵付きの扉が隠されていた。


「あー。これはガルバ自ら管理するはずですね」


 扉を開けた先には鎖に繋がれた2人。

 その姿は誰でも知っている特徴的な耳に美しい容姿。


 エルフ族の男女であった。


「દૂ ર રા ખો!બ હા ર મૂ કો!કી લ!」


 扉を開けると、2人が激しく手足に繋がれた鎖を揺らし、壁に打ちつける。


 激しく鎖を揺らしながら、その美しい顔を歪ませ、憎悪に満ちた顔で何か言葉を浴びせる2人のエルフ。


 とにかく落ち着いてもらわなきゃですね。言葉は通じるでしょうか……。


「ごめんなさい。私には何を言っているかわからないです。ただ助けに来ました。分かりますか?」


「たすけ?助けと言ったのか」


 あぁ良かったです。言葉は通じました。興奮してエルフ語を話していただけのようですね。


「そうです。ここの頭領は捕まえました。他も一人を除いて捕らえてあります。今鎖を外しますね。」


「ルファ。2人の鎖を」


「キィーーーーー」


 ルファに鍵束を渡したと同時だった。

 ペルが声を上げた。


「ぐっ!クソっ!」


 そしてその瞬間目の前に2本のショートソードを構えた男が現れ、耳を抑え後方へと跳んだ。

 ペルの超音波だ。


 反響定位にて周囲を視ているペルだから分かった違和感。室内にいるはずのないもう一人の存在。

 ルファの嗅覚も聴覚も掻い潜り、目の前にいるのに姿さえ見えない。ネルさんとは違う形の完全な隠形だった。


 ナイスです。ペル。


「貴様テイマーか。ガルバ様をどうした?」


「あなたですか。私達が入ってきたときに姿を消した人は。あなた以外は捕まってます。あなたも諦めてください。」


「まぁいい。お前を殺して解放すれば良い事だ。だから……」


 死ね。

 という言葉が続く前に、地面を蹴り2本のショートソードを突き出し迫る男。リィスもペルも無視し、テイム主の首を取るもっとも効率的な方法を選択したのだろう。


 2本の刃が首と心臓を穿つ為、突き出された。


少し更新速度を落とさせて貰っています。すみません。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] え?こんだけの実力在って野盗の手下? [一言] この野盗達もうちょい実力在ったら 国の暗部部隊所属かそこの脱走兵を疑うぐらい 最後の一人が暗殺向きとは言え強すぎる
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