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おっさんの師匠愛とランクアップへの誓い?

 送還されたキュリは、送還先である師匠宅に着くと師匠を起こし、状況を伝えた。


 そしてその状況を読み取った師匠がすぐに、ギルドへと連絡した。


 既にギルドへは女性がゴブリンに攫われたという一報が入っており、救出と討伐の為のパーティが組まれていたため、師匠によって状況が伝わり、迎えの隊が先行し馬車とともに出発していたのだ。


「貴方がタクト様ですね。私はギルド所属の御者ルンベルといいます。そちらの女性が?」


 ギルドの刻印の入ったカードを見せ、ルンベルは頭を下げた。


「えぇ残念ながら攫われた方のうち、お一人は既に亡くなっていました」


 ルファと共に馬車に乗り込み、道中後発の討伐隊のパーティに集落の場所と情報を教えると、街へと戻った。


 そしてギルドに着くと、別室に師匠が待っていた。


「何やってるんだい!何の準備もなくゴブリンの集落に乗り込むなんて!」


 扉を開けると、怒鳴り声が響く。

 ゴブリンの集落。雑魚の集団と侮るなかれ。


 それがこの世界の常識だった。


 まあそうですよね……。


 ゴブリンの集落は20体を超えると必ず上位種が存在し、戦闘に特化したホブゴブリンであればトロールなど単騎で3体は相手にできるほどの強さを持つらしい。


 今回、あの集落で確認したのは見張りも入れて24体。櫓にいたのは間違いなくゴブリンアーチャーであり、上位種はホブゴブリンであろう。


 キュリの報告で20体以上の集落だと知った師匠は、最悪も予想しギルドへと来ていた。


 怒鳴りながらも近づいてきた師匠。


 しかし私の前で立ち止まると、そっと腰に両手を回しお腹に顔を埋め、小さく呟いた。


「無茶をするんじゃないよ。全く……」


「すみません。師匠」


 そう言って自然と手が、心配してくれていたであろう師匠の頭を撫で……


「ちょわーーーー。何をしとるんじゃヌシは!! 反省しておらんな!反省しておらんじゃろ!」


 あっ……。やってしまいました。

 師匠のその髪に触れた瞬間。バッと腰から手が外れ後方へ下がった師匠が、椅子の上で胸を張ってます。


 やっぱりこうなるんですね。いや。ちゃんと反省してますよ。


 その後、落ち着きを取り戻した師匠が月見名草を含む、納品予定の依頼品を取り出し渡してきた。


 どこから出てきたんでしょう?


「ふん。私はもう帰るでな。あの受付の娘、ヌシの専属何じゃろ?既に指名依頼として出しておいた。Dランクになれば、正式に門からあの家へこれよう。早くDランクになるんじゃな」


 次会うのは何週間後かの。


 そう言って師匠は、ギルドを後にした。


 たしかに指輪の力が戻るのはいつになるかわからない。少なくともDランクになる目標の1ヶ月では溜まっていないだろう。


「はやく。Dランクにならないとだね」


「そうですね。ジーマ様、凄い心配されていました」


「うん」


 こんなにも自分を心配してくれる人がいる。

 それだけの事なのに、目頭が熱くなる。


 期待に応えましょう。最短でDランクを目指します。


「おめでとうございます。タクトさん。Dランクへ昇格です」


「はっ?」


 そう言って差し出されたのは、青色と水色の中間色であるコバルトブルーのタグ。


 あの誓いから30分。早くもDランクに上がってしまった……。


 うん。やはり目標は言葉にすべきですね。言霊とも言いますし。


「えっと……。どう言う事です?この前Eランクに上がったばかりですけど」


 鞄いっぱいの高品質の月見名草に薬草。そしてフォレストウルフを納入した数十分。


 いくら量があっても、1回でランクアップ出来るほどの量では無いはずだった。


 あくまでも1ヶ月を目標にクリアできるであろう依頼なのだから。


「細かくは言えませんが、今回の納品と討伐依頼分に、ゴブリンの集落の発見に攫われた者の救出が加わり、これらを加味しこの度Dランクへの昇格が決まりました。おめでとうございます」


 聞けば、身分は既にわかっており、さる貴族のご息女と護衛だった。ここへ来る為の道中一斉に襲われ、女は攫われ、男は2人を除き殺されてしまった。


 その男のうちの1人が何とか街へと辿り着き、門兵に伝えた。もう1人は死んだか逃げたか分からないらしい。


 そして、酷い状態だった女性は護衛の一人。彼女は自分から鎧と服を脱ぎ、ゴブリン達を欲情させ時間を稼ぎ、無傷の女性をゴブリン達から守った。無傷の女性はやはりホブゴブリン用に手は出されていなかったらしい。


 そして、護衛の彼女はしっかりと貴族にこの後は保護される事になった。


 よかった。あの状態ならケアは必要ですからね。


「よかったです。では私はこれで」


「おぉ!君か!我が娘を助けてくれた青年は!我が名はガルフィア・ジエル今そちらへ行くぞ」


 早朝のほぼ無人の冒険者ギルドに声が響く。


 その声は2階からだった。視線の先には偉丈夫な渋い中年の男性。元の私よりも上だと思いますが、圧倒的に若々しいですね。


 そこへ、後ろからギルドの職員が慌てた様子で、男を止めた。


「困ります!ガルフィア様。今回はお名前も身分も明かさず礼を言うだけだと」


「娘と配下の者を救ったものに、顔も見せずに去るなど出来るものか! 」


 受付を見れば事情を知っているアンナさんが、額に手を当てている。


 どうやら彼の性格的に、この行動は予想がついていたようだ。


「よろしいですか」


 困り顔のアンナさんと共に2階へとあがり、案内された部屋にはその男の他に、ギルド長と先程の制止していた彼が青い顔をして立ち尽くしていた。


 あぁ止められなかったの、相当まずいんですね。


 部屋を見渡し、全員の顔を確認したところで部屋の扉が閉まる。


 それと同時に、座っていた男が立ち上がり私の手を握り、


「私は、ジエル地方領主 ガルフィア・ジエル。礼を言う。我が娘と護衛をよくぞ救ってくれた」


 そう言って頭を下げた。




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