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おっさんのクエストと闇夜に躍動する者達

 月明かりが照らすワイリナ大森林入口に立つ。

 勿論ここから先の森の中は、月明かりも届かない真っ暗闇だ。


「月見名草は採取場所に夜、月が出ているうちに行くと採取可能……と。なるべく拓けているところが理想だね」


 ギルドの資料にも、師匠の家で見た資料にもこの草の採取方法は載っていた。

 月見名草は、その名の通り月に向かい満月のような葉を広げる特徴的な薬草であり、月が見えるような森の中でも木の密度が少ない拓けた場所に群生している。


 あぁ月といえばこの世界には、月の満ち欠けは無いようで、基本真ん丸の毎日お月見日和です。


 フォレストウルフの縄張りという事だけでも、大体の場所は予想がつく。


「行こうかルファ」


「はい!」


 森へ入ると、皆を呼び出すため道を逸れ、先へと進む。ここから先、フォレストウルフの多く生息するエリアに行くには皆の協力が必要だ。


 1日2回使えるようになったとはキュリから聞いたが、こればかりは少し不安だった。


 手をかざし皆を呼び出すと、無事魔法陣とともにリィス、ペル、キュリが召喚された。


「マスター。」「キー!」「マスタ。参上しました。」


 キュリが見事なカーテシーで頭を下げる。


 この所作の知識はどこから得たのか……。


 あぁ私ですね……完全に。好きです。メイド……。


「リィス、ペル、キュリお待たせ。師匠の家では良い子にしてたかい?」


「してたー。グリーンスライム呼んでもらったー。すらいむだけー。すごいすごい」


 ん?誘引ポーションのスライム版でしょうか?


 リィスが興奮したように触手を動かし喜びをアピールしている。

 あの後グリーンスライムを呼んでもらったんですね。ほんと嬉しそうです。


 さすがは師匠です。


「キュリの言う通りだったよ。1日に2回召喚が使えるようになってたよ」


 魔法のエキスパートである彼女だからこそわかったんでしょうね。


「魔力。扱い。上手くなればもっと。増える。量。十分」


「そっか。じゃあ頑張んないとだね。ありがとう。じゃあ行こうか。ペル。索敵をお願い」


 3人の頭を撫でると、ペルに索敵をお願いする。


 3人の頭を撫でたところで、いつのまにかルファもすぐ近くに……。


 しますよ。ナデナデ。


「キィー」


 ペルが気合を入れる。


 実際今の仲間達は、どちらかと言うと夜向きだろう。


 ペルのような蝙蝠種は、そもそも夜行性。索敵もあって暗闇で不覚を取る事はないでしょう。


 スライムであるリィスも同じ。魔法生物であるリィスはそもそも視覚で物を見ていない。


 キュリは言わずもがな。夜こそ本領を発揮する。今日はキュリ無双だと言っても良いだろう。


 そしてルファ。狐の獣人であるルファはスキルがなくても目の構造的に夜に対応出来る。狐はそもそも昼も活動する夜行性。夜はバッチリだ。


 私ですか?

 私は師匠に教わっていた夜行薬(目薬草+(夜光茸+水))という目薬の力を借りて夜の視界も確保済み。簡単に言えば夜目のスキルを付与する薬と言えば分かりやすいですね。


 私の気配察知とペルの索敵、ルファの聴覚による気配察知があれば問題なく奥へ進める。


「フォレストウルフを見つけたらそっちへ行こう。まぁ最初はわからないから4足歩行の魔物の気配がしたら行くって感じかな。みんな頼んだよ」


「キ」

「ハイ」

「はい!」

「僕もやるよー」


 順調に森を奥へと進むと、月見名草の群生地をいくつか発見する。勿論高品質で採取している。

 この月見名草。高品質で摘むには少しコツがいる。薬草と違いただ摘めばよいのではなく、月の光が当たっている物を選んで採取ポイントを見極めて積むのだ。少しでも枝や他の草などで影になっているような月見名草は高品質で摘む事は出来なかった。


「キッ」


 月見名草を採取していると、周囲を警戒していたペルが小さく鳴いた。

 ほぼ同じタイミングでルファの耳が、ペルと同じ方向を警戒し、こちらへ向き小さく頷いた。


 フォレストウルフだ。


 私の拙い気配察知とは違い、ペル達の警戒網にはしっかりと少し離れたフォレストウルフの気配を捉えている。


 ペルの気配が薄くなる。


 間違いなく潜伏のスキルを使ったのでしょう。


 そして、キュリが師匠から貰ったという、魔導師の使う30cmほどの杖を取り出す。


 おぉカッコいいですね。見た目もしっかり魔導師です。


 しばらくして、フォレストウルフが来るという方向に集中して使っていた気配察知に、2体の気配が引っかかる。ゆっくりと近付くフォレストウルフ。


 しかし、そのフォレストウルフが姿を見せる事はなかった。


「キキッ」


 ペルだ。いつのまにか木の枝から移動していたペルが、茂みから姿を現し胸に飛び込んできた。


「もしかして倒した?」


「キュ!」


 右の翼膜を上げアピールするペル。どうやら気配を消しフォレストウルフに毒を注入したらしい。


 茂みをかき分けるとたしかに2体のフォレストウルフが泡を吐き倒れていた。


「よくやったね」


 いつものように、ペルのふかふかの頭を撫でる。

 いつも思うがペルはリィス以上に甘えたがりだ。


「ご主人様!」

「キ!」


 慌てた様子のルファが何かを察知すると、ペルも胸元から離れ警戒を強めた。


「どうやら先行していたのは偵察だったようです。2方向から2体ずつ4体の足音が近付いてきます!」


「もともと6体の群れだったか。リィスとペルはそっちを、ルファとキュリ、私はこちらを迎え討ちます」


 指示を出し終えると、茂みからフォレストウルフ達が飛び出す。


 鋭い牙と爪が月あかりを反射するように、薄っすらと光こちらへと飛びかかってきた。


「影 帯」


 小さくキュリが呟くと、その瞬間。

 キュリの影から、2本の黒い帯が飛び出しフォレストウルフ達の胴体に巻き付いた。


 闇魔法。

 キュリのスキルの一つ。闇属性魔法ではなく闇魔法なのは、キュリ曰く闇属性魔法と影属性魔法の両方。または合成した魔法が使えるためらしく、非常に優秀なスキルだ。


「「キャイッ!」」


 そのまま地面に叩きつけられるフォレストウルフ。


 そして、その隙をルファは見逃さず、伸ばした爪で喉を切り裂いた。


 圧倒的。横を見ればリィスとペルに任せた2体も倒されており、全くこちらが手を出さずに終わった。


 その後、採取中に2回程群れに襲われ、計16体の討伐するに至り、クエスト5回分の達成となったところで


「よし!終わったー」


 月見名草、薬草をそれぞれ高品質で鞄いっぱいに採取する事が出来た。


 気付けば、そろそろ夜明けを迎える時間帯になっていた。


「帰るにはいいタイミングだね。みんな帰ろうか」


 薬草類でいっぱいになった鞄と、ウルフ達の毛皮に牙などの剥ぎ取り品を見て思う。


 私もやっと、冒険者っぽくなってきましたね。





今日は予約でとおもっていたんですが……。ミスしました。

遅くなりました。

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