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おっさんの挑戦とタイムリミット

「ヌシよ他国へ行く気はないかい?」


 その一言は、この国を出たいと思っていた私にとって絶妙なタイミングでの、申し出だった。


「行きます!」


 勿論、即答です。はい。


 興奮する私を落ち着かせようと、テーブルにつかせハーブティ入れ直し、差し出す師匠。


 そして師匠は、詳細を話し始めた。


 師匠は元々、勇者のスキルブック作製と魔術訓練の為、この国に依頼されやってきていた。


 そしてその期限が切れ、勇者……セイドウくん側も延長を望んでいないこともあり、学園へと戻るらしい。


 自らが校長を務めるハルフーレ魔術学園のある。ディート王国へと戻る。

 その戻る為の護衛として、一緒に国を出るというのが、今回の計画だった。しかしその計画には一つの大きな壁があった。


「ふむ。そのタグからヌシはEランクじゃろ。Eランクでは護衛は無理じゃな。最低でもD。学園へ帰る予定の1ヶ月で最低Dになるのじゃ。そしてヌシはそのまま学園の編入試験を受け学園に入るのじゃ。2週間程度教えたぐらいじゃ知らないことが多すぎる。誤魔化せないよ」


 たしかに一般常識から、この国の歴史まである程度は教えて貰っているが、今の知識程度では、すぐボロがでるだろう。


 最低でもDランク。


 Eランクに上がったばかりではありますが、依頼内容や、こなす数によっては可能でしょうかね。


 それよりも……。


「学園ですか?私成人してるんですが……」


「知っとるよそんな事。安心しな。他の魔術学園を優秀な成績で卒業したものが通う学校だよ。みんな17歳以上じゃ」


 聞けば、12〜16歳迄通う魔導学園というのが地方地方にあり、その中でも優秀かつ今以上に魔法の研究に打ち込みたい。国に魔導師として仕えたいと希望する者が通う学校だと言う。


 ああ大学とか大学院みたいなものですね。私、魔導学園行ってませんが……。


「そんな事どうにでもなるんだよ。私を誰だと思っているんじゃ。ヌシの魔力なら合格できるじゃろ。それにしても……。ヌシよしばらく見ない間に、魔力循環が段違いによくなってないかい?」


 また不安が顔に出てたみたいです……。


 でも褒められましたね。これは嬉しいです。


「あぁそれでしたらキュリに指導してもらって、歪み? とか淀みを整えました」


「そうかい! リッチは魔法のエキスパートだからね。キュリと言ったね。これからもタクトに教えてやりな。頼んだよ」


 コクコクコク


 話せるようになったはずのキュリだが、驚いた様子で無言で、首を何度も縦に振る。


「ありがと」


 お礼を言って、撫でるとキュリの表情が柔らかくなった。


 おぉ。一瞬その表情に、ドキっとしてしまった……。


 そして青白い顔にぽっ、と赤みがさす。アンデットなのに不思議です。


「兎にも角にもランクを上げるんじゃな。この1ヶ月はかなり忙しくなるよ。そうと決まればさっさとお行き。ギルドで依頼を受けてさっさと貢献ポイントを稼ぐんだね。いいね。間に合わせるんだよ!師匠の私に恥かかすんじゃないよ!」


 いそいそと椅子に登り、胸を反らす師匠。


 あぁ久し振りに見ましたねこの姿。やっぱりやるんですね。先程のとは違い、椅子の上の方が完成している気がしますね。


 立派です師匠!


 その挑戦たしかに受けました! 1ヶ月でDランクになってみせましょう!


「はい。師匠!行ってきます」


「そうだ。念のためキュリは置いて行くんじゃな。その姿ならバレないと思うがね。バレたら騒ぎになるよ。それにまだ日中はきついじゃろ。のうキュリよ」


 師匠の問い掛けに小さく頷く。キュリ。


 師匠もキュリをリッチというより、一人の女の子として扱っているような気が……。


 とても良い事です。


「キュリをよろしくお願いします」


「うむ。任せておけい」


 なぜか椅子の上で、どこか自信満々の師匠。まぁ仲良くやっていけそうでよかったですね。


 リィスとペルには、依頼先で呼ぶ可能性が高い事を告げ、ここで待機させてもらえるように師匠にお願いする。


 ここならば、外に出れば家の周りに少ないがグリーンスライムもいる。良い時間潰しになるでしょう。ペルの索敵があれば誰かくれば隠れられますしね。


 それでは冒険者ギルドへ行きましょうか。


 師匠の家からまた指輪の力で宿へと戻ると、ギルドへと向かう。

 この時間ならば1つや2つ依頼を受けられるでしょう。


 冒険者ギルドにつくと、やはり中途半端な時間だけにギルド内は閑散としていた。


 受付へ向かうと、アンナさんが書類をまとめているのが目に入る。


「アンナさん」


「あらタクトさん。どうされました?」


 専属であるアンナさんには、今後の目標としてDランクを目指し護衛依頼を受けたいことを告げる。


「えっランクアップですか? たしかに護衛依頼を受けるにはD以上ですからね。なるほど魔術学園に……。という事は出て行かれてしまうんですね。残念です……」


 一瞬暗い顔を見せたアンナさんが、すぐに顔を引き締め棚から書類を数枚ピックアップする。


 一瞬でプロの顔に戻った。


 流石ですね。


「では、これはいかがでしょう。」


 アンナさんが集めていたのは、Eランクの依頼。その中でも組み合わせにより、効率よく評価が稼げる物を選んでくれていた。


 その内容は……


 月見名草採取 10束

 高品質薬草採取 10束

 フォレストウルフ討伐 3体


 この3つだった。どれも森での活動で依頼が達成出来るものばかりですね。


「タクトさん薬草採取が得意ですよね。この手の依頼は常時依頼と言って100束持って来て頂ければ、10回分達成したと同じ扱いなんです。しかも月見名草は高品質が取れた場合、評価は通常の3倍です。実はEランクに上がったのは高品質薬草の評価が大きかったんですよ。かなり納入頂きましたが、ここ最近でかなり減りましたから、まだまだいくら持ってきて頂いても構いません」


 そして都合のいい事に、月見名草の群生地はフォレストウルフの縄張りとなっていて、採取をする為に群生地に入れば。自然と討伐数も上がるらしい。それだけに危険が多いが、フォレストウルフ自体大きな群れを作ることが少なく、月見名草を採取する夜でも比較的討伐しやすい。


 またこれに関しては、特に討伐しなくても常時依頼のため依頼失敗にならず、出来ればで良いらしい。


「分かりました。この3つが達成出来るようにやってみます」


「はい。夜の森は危険度が増します。気をつけてくださいね」


 アンナさんに見送られギルドを後にする。


 さて……森に行くのは夜か。


「一眠りしてからだね」


「そうですね」


 そして仮眠を取る為、ルファと2人宿へと向かった。


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