おっさんの魔力循環と美の達人の眼力
ステータスを確認した瞬間。ルファによって両目を塞がれた。
もちろんそれは、目の前にいるキュリが一切何も纏うことのない正真正銘の裸体を晒し、立っているというからに他ならない。
「ご主人様!目を瞑っててくださいね!」
その声がすると強めに塞がれていた両手が離れ、ルファがバタバタと動き出す。
瞼の裏にチカチカと星が舞っている……。
「わっ大きい……。違う!これ着てください!」
「いいですよ。ご主人様」
何かルファのおかしな言葉が聞こえたような気がしたが……。
取り敢えずOKが出た所で目を開けると、ローブを羽織った白髪の少女がまっすぐこちらを見て微笑み立っていた。
「キュリ?だよね」
「ハイ。マスタ。キュリです」
まだ話し方がたどたどしいが、たしかに発声し名乗るキュリ。
種族:レッサーリッチユニーク Lv1
名前:キュリ
スキル
★骨吸収
夜目
炎属性魔法
闇魔法
魔力増加(大)
魔力回復(中)
★魔力操作
魔骨
改めてステータスを確認すると、やはり種族はレッサーリッチのユニーク種。
そして新たに、骨結合が骨吸収に変化し、これはスケルトン種だけでなく他の魔物の魔力も死後間も無くならば骨から吸収可能というものだった。
そして、なぜかメイジにはなかった魔力操作。あれだけ魔法の使えるメイジになく、敢えてここでスキル化した意味はあるんでしょうか?
「リッチ。ホネ。結合」
キュリが言うには、あの後も夜な夜な墓地を回ってはリッチの飛び散った骨を見つけ結合して回っていたらしい。
リッチの骨。まだあったんですね……。
そして、驚くことに、キュリはほとんど女性の骨しか結合していなかったらしい。
それは最初のリッチの骨が女性だったと言う事が原因だった。だから小さな少女のようなスケルトンになったんですかね。
そしてここは女性の戦士や魔導師が多く埋葬され、生まれるスケルトンも女性型が多く吸収には困らなかったらしい。
それよりあのリッチって女性だったんですね……。我とか言ってましたが。
「えっ?だから率いてたスケルトンも殆ど女性型だったんだ……」
あのリッチは女性だらけのアンデット軍団でも作りたかったんでしょうか。
衝撃的な真実を告げられながら、今後の事を考える。
ん〜。
困りました。見た目美少女のこの子を墓地に放置するわけにもいかないですね。
何度キュリをみても、その姿は少し青白いだけの女の子……。
それによく考えれば裸エプロンじゃなくて、裸ローブですか。まずいですね。物凄く犯罪の香りがします。
少し遠慮したいですが、しょうがないですね。あそこへ行きましょう。
「マスタ 流れ ヘン」
そう考えていると、急にキュリがローブから指を出し、クルクルと回し始める。そしてその指で描く円はどこか歪んでいた。
どうやら私の魔力循環の流れが、おかしいらしいです。
「魔法の操作に長けたキュリが言うならばそうなんだろうね。どうすればいい?」
そうキュリに聞き返すと、一言キュリが答えた。
「融合」
「融合?あぁわかった。融合すればいいんだね」
そう聞き返すとコクリと一度頷く。
『融合』
何度か経験したキュリとの融合。
しかし、進化を遂げレッサーリッチとなったキュリとの融合は、今までと比べ物にならない魔力で溢れていた。
(みえる?)
そして心に響くキュリの声。その声に従い自分を纏う魔力を見れば、上達したと思っていた循環もたしかに綺麗に循環しておらず、所々どこか歪でその影響で淀みが出来ていた。
それがキュリと融合した事で、ハッキリと視認出来た。
(歪み整える)
そう言われ、キュリの指導の元、歪んでいる部分を意識し、整え魔力がスムーズに流れるようにしていく。今迄の限界時間5分を超え10分を迎えた瞬間。融合が解かれた。
「おぉ。5分も伸びた」
「まだ。伸びる。目に魔力。視る」
融合が解かれた事で、自然には魔力の流れは見えなくなったが、キュリの言う通り『魔視』を強く意識すると魔力の流れが再び見えるようになった。
どうやら魔力の扱いが今よりも上手くなれば、融合時間も伸びると言う事なのだろう。
「さっきよりは良くなったけど、まだ歪んでるね」
「でも。マシ」
それでも前よりも、たしかに淀みのない魔力循環となり、明らかに魔力が力強く感じます。
「これからも色々教えてね」
そう言ってコクリと頷くキュリの頭を撫でる。それは今迄のつるりとした感触ではなく、どこかヒンヤリとした髪の毛のサラサラとしたシルクのような感触。
たしかペルを撫でた時も同じような表現してましたね……。自分の表現力のなさが悔しいです。
とにかく非常に撫で心地の良いキュリの頭を堪能し、深々とフードを被せると手を取り、ルファに幻覚魔法をかけて貰う。
こうすれば街中を移動しても、ただの少女としか見えない。
そして、なんの問題もなく辿り着いたのは
服飾屋 『夜の蝶』
その扉を開けると、目の前に壁……
「いらっしゃい。あなたが新しい子猫ちゃんね。可愛いわー。あらそのローブ……。あんらーやっぱりハニーは可愛いじゃないの」
いや現れた巨人……。もといサンドラオネエさんがキュリを一瞥し、自分の仕立てたとわかったローブのそのフードの中を覗き込む。
今日も前とは違う色のド派手なレオタードのような服が、胸毛と胸筋をなんとも逞しく主張しています。
さすがのキュリもビクッと身を震わせた。
そりゃあ驚きますよね。
しかし、問題はそこではない。
まだルファの幻覚魔法は解けていないはずなのだ。
「なに不思議そうな顔してるのよん。私くらいの美の伝道師になれば、真実の美を見抜くなんて造作もないことよ」
「サンドラ…オネエさん。」
「あん?またなんか違う気がするけど。まったくもう。またあなたの顔に書いてあったのよ。どうして分かった?ってね」
ルファを見れば少し青い顔をして、必死で首を振っている。
どうやら幻覚魔法は、まだかけたままようだ。
その真実に冷や汗をかくとともに、息をのみこんだ。




