おっさんの可愛い魔物達と新たなステージ
(じゃあ次はボクとペルちゃーん)
ルファとの模擬戦を終えると、審判をしてもらっていたリィスが触手を挙げる。
どうやらリィスとペルも成果を見せたいらしく、渡していた1/3程残った誘引ポーションを地面へと垂らした。
実際ここ2日でも見てはいたが、ワイバーン戦を経てリィスとペルのレベルは大きく上がり、明らかに強さを増していた。
ステータスでも確認したが、リィスに関してはレベルが上がらなくなっていた。
種族:オリジナルスライム Lv30
名前:リィス
スキル
同族吸収
物理衝撃耐性
★再生(中)
念話
溶解液
保護色
粘液操作
水生成
種族:大蝙蝠 Lv18
名前:ペル
スキル
夜目
索敵
毒牙
★潜伏(小)
★消音飛行
はて?ペルの成長が偏ってきているのは気のせいでしょうか?
大蝙蝠ってこんな忍者みたいになるものなんでしょうか。
(いっくよー)
ステータスを確認していると、誘引ポーションに誘われた大ネズミが7匹通路から入ってきた。
(アシッドショットー)
リィスが触手を一振りすると、アクアカッターのように液体が大ネズミに向かい放たれた。
そして、2本目の触手からも2つ目の液体。
ジュシュッ
そしてその矢じり状の液体が大ネズミに命中した瞬間。
大ネズミ達の命中部位が溶け落ちた。
「うわぁ……ご主人様?あれってリィスちゃんの『溶解液』……」
そのグロテスクな光景に後退るルファ。
アシッドショット……
アクアカッターから閃いたんでしょうね。
リィスもペルもキュリも、私自身の魔力から生まれた魔物。言葉もそうだが、ある程度関連する知識を私から得ている。
この技の応用も名前も、間違いなくその知識から引っ張ってきている。
そしてそんな光景に目を奪われていると、大ネズミ達の後列にいた3匹が声も上げず泡を吹いて倒れた。
「ペル?」
いつの間にか消音飛行により、音もなく大ネズミの後ろへと回り込み、潜伏によって気づかれぬよう毒牙で攻撃していたペルが大ネズミの背後から姿を現わす。
ペルは明らかにワイバーン戦で自分の戦い方を見つけたようだ。これならゴブリン程度なら遅れを取らないだろう。
「キィーー」
全ての大ネズミが倒され、後から入ってきたアシッドスライムをリィスが瞬殺したところで、ペルが胸に飛び込んできた。
(あーペルちゃんずるいー)
そのペルを受け止め撫でると、ぴょんぴょんと跳ねながらリィスも胸に飛び込んできた。
「うん。2人とも成長したね。リィスも溶解液をただ噴射するだけじゃなくて遠距離にも対応していたのは凄かったし、ペルもいつ移動したかわからなかった。それに毒の効果も上がってたね。よくやった」
プルプルとフカフカなリィス達の頭を撫でながら、その成長を感じる。
「キューキュー」
(頑張ったよー。そうだこれー)
そう言うと、リィスの体内からぽろポロポロと小さな魔石が手の上に出された。
今日倒したアシッドスライムの全ての魔石だ。
それをいつものように、昨日までの魔石に『融合』する。
「これで100個目か」
「あっ、たしかリィスちゃんは、魔石100個で生まれたんですよね。今回も生まれるんですか?」
前と同じように右手に99個魔石、左手に1個の魔石を持つが何も反応しない。
「いや。2体目……。と言うのは難しいみたい。まあ今は融合魔物を増やす気はないけどね。とりあえずキリも良いし、融合はしちゃうけど」
そしてそのまま融合すると、アシッドスライムの魔石より一回り大きな宝石のような魔石となった。
その大きさは、リィスが生まれた時と同じくらいの大きさだった。今回はもちろん卵のようにヒビが入り割れるようなことはない。
(わー。形がかわったー)
両手ですくうように持つアシッドスライムの100個魔石に、リィスが興味を示した。
「近くで視る?」
そう言ってリィスを手のひらに乗せた瞬間。
頭の中に電流が流れたような、ビリっとした感覚がはしる。
直感
それは、リィスと魔石。
この2つが『融合』出来る事を告げているものだった。
ワイバーンを倒し、この下水でアシッドスライムを吸収し戦い続けてもリィスのレベルが30以上に上ることはなかった。
恐らくは成長限界がきたんだろうと思っていたが、ここにきて新たな選択肢が提示された。
魔石と融合……。
たしかにゲームではありそうなシステムだ。
しかし、これが進化を促すものなのか。それとも別の何かになるのかそれが分からない。
(マスター。ぼくも感じたよ。たぶん大丈夫ー)
そう言って手のひらで跳ねるリィス。
「リィスも感じた?そっか。そうですか……」
ルファもペルも何が起こっているのか理解できず、ただ無言で見つめ合っているように見える私たちを緊張した面持ちで見守っている。
リィスも感じた直感。
そして大丈夫の意味。
怖い。ここで初めての仲間であるリィスを失うわけにはいかない。しかしこれまでその直感を疑ったことはない。
私自身、どちらかと言うと大丈夫だと思っている。
「いいんですか?」
(うん!)
「分かった。やりましょう」
意を決して両手のリィスと魔石に対し唱える。
『融合』
その瞬間。
リィスと魔石が強烈な光に包まれた。




