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おっさんの運命を決めた石とルファの明と暗

 大通りを抜け教会へと向かう。


 この国は一神教であり、元の世界のように神が乱立しているというようなことはない。


 全ての国民は基本、創造神『メルハ』を信仰し教会が輝度を測る石を持っているのも、輝度の大きさを加護の一つと考えている為であった。


 勿論輝度が低いのが加護が無いというわけではなく、輝度が高いと戦闘における加護が高いという事だけだ。


 輝度はあくまで戦闘の潜在能力。

 低ければ違う何かに才能がある。そう教えを受け、違う道を探す。それがこの国の“自然”であった。


 まぁその考え方が私の追放という結果に繋がったんですけどね……。


「こんにちは。ようこそラフマック大聖堂へ。今日はどのようなご用件でしょうか?」


 教会の門を少し開けると、それに気付いた白い髭を蓄えた老齢の司祭が出迎えた。


 彼はこの教会の司祭『ウェルモ』と名乗り、両手を広げていた。


「こんにちは私はタクト。後ろに控えているのは私の奴隷。ルファと言います。今日はこのルファの洗礼の儀をお願いしたいと思い参上しました。」


「ほー。新たな信徒は歓迎ですぞ。いいでしょう。丁度今日は予定がありません。街は昨日のワイバーン騒ぎで忙しいですからな。危機が去ればここに赴く人も少ないのですよ。」


 冗談交じりに話すウェルモ司祭の後に続き、洗礼の儀が行われる聖堂へと案内される。


 その美しい聖堂は、ステンドグラスから色取り取りの光が射し、その光は聖堂の中心に集められていた。


「さぁこちらへ」


 ウェルモ司祭が光の集められた聖堂の中央に向かう。

 そしてその光の中心には、隕石のようなゴツゴツとした一抱え程の石が置かれていた。


『鑑定石』


 良くも悪くも、私とセイドウくんの運命を決めた石ですね。


 それが目の前にあった。


「ではルファさん。こちらの鑑定石に触れていただけますかな。それだけでステータスに輝度が追加されます。まぁそれが神より加護を与えられたという証ですな」


「わかりました。ルファ。鑑定石に手を」


 ルファの手をとり、鑑定石へと導く。


 天狐族の中でも、戦闘能力の高かったルファならばそれなりに高い数値が出るでしょう


 ルファの輝度を予想していると、ルファがゆっくりと鑑定石に触れる。


「あっ!」


 触れた瞬間。飛び退くようにして後ろへ下がる。ルファ。


 あれ、少しピリってしますからね。輝度が大きいほど強いと言いますし。


「ご主人様!輝度が表示されました!」


 名前 :ルファ

 年齢 :17

 スキル :多尾Lv2 狐火Lv2 幻覚魔法Lv1 料理Lv1 聴覚強化Lv3 ステータスカード

 輝度 :182

 その他

 主人『タクト マミヤ』


「えっ?輝度182?普通に強くない?」


 見せられたステータスカードを確認すると、確かに輝度が追記されていた。その値。182は、明らかにルファの戦闘面での潜在能力の高さを示していた。


 おそらくピリどころじゃなかったんでしょうね。私は43(ピリっ)でしたが…。


 少し興奮していたウェルモ司祭に礼をいい。外へと出ると次の目的地のギルドへと向かう。


 明らかに高いルファの輝度。


 ウェルモ司祭もAランクの冒険者でもなかなかいないため、良い加護を授かりましたなと終始御満悦の様子だった。


 その後、教会から解放されたルファが、輝度が高い理由に思い当たる事があると話し始めた。


 そしてその理由は、以前に聞いた彼女が奴隷として売られた辛い過去の告白の内容にもつながっていた。


「私、前にお話しした通り、突然変異の天狐なんです……」


 そう切り出した彼女の話の内容はやはり重く、以前にも聞いた通り本来の狐らしい黄色の毛色ではなく、全ての色が失われた真っ白な呪われた忌み子。そう言われていた過去。


 しかし、彼女の母親は、母として強かった。様々な謂れの無い娘への誹謗中傷に負ける事なく、彼女を守り続け、彼女の一部の魔法やスキルの圧倒的な適性を見出し、忌み子ではなく、誰も不幸にすることの無いただの突然変異だと彼女を励まし続けた。


 その後母親が亡くなった事で、村八分にされ最後には借金の返済を名目に売られたが、彼女は母親の言う通り村の天狐族よりも狐火の大きさや青みの強さ、聴覚強化の力が明らかに違うと感じていたという。


「なるほど。突然変異というより先祖返りなんじゃないかな。多分勇者と一緒に行動した黒い天狐も同じように突然変異なんだと思うよ。まぁ先に活躍しちゃったのが黒い毛色だったからね……」


「でもいいんです。お陰でご主人様のお役に立てる事がわかりましたから!」


 暗い過去を思い出したルファ。


 しかし、そう言ってルファは明るい未来を想像し、暗い過去を振り払うかのように、大きく尻尾を振り笑みを浮かべた。


「アンナさん。こんにちは」


 そんなやりとりをしながら、ルファの機嫌が戻った頃。ギルドに着いた。


 ギルドへと入ると既に依頼のピークは過ぎ、ギルド内にはまばらに冒険者がいるだけだった。


 いつもより少ないのには訳がある。皆ワイバーン討伐後の後片付けの依頼を受けているのだ。


 王城に繋がる道は、いち早く片付けが必要な為報酬が良いらしいですからね。


 だから今日は予定通り、人目につかない下水に行く予定です。


「こんにちはタクトさん。今日はどうされますか?もうワイバーン関係の依頼は一杯ですが…」


「ワイバーン関係の報酬はいいみたいですね。大丈夫です。今日はこのルファの冒険者登録といつもの下水の討伐がてら、ルファとの連携を確認するだけですから。」


「そうですか。あっ!すみません……タクトさん。重大な事をお伝えしておりませんでした。タクトさんは本日よりEランクです。申し訳ございません。査定を見直したところ、既にEランクに昇格できるポイントが溜まっておりました。最初の査定が0になっていた事に気付かず……」


 あぁキャシーさん。あの意地悪な受付嬢が私の評価を0にしていたんですね。


 まったく…ホントどこまで私を嫌っていたんでしょう。


「アンナさんが謝らないで下さい。気付いて貰っただけで良かったですから。」


「ありがとうございます。そうでした。ルファさんの冒険者登録ですね。それなら大丈夫です。冒険者の奴隷に登録の必要はありません。こちらでパーティ登録だけさせて頂きますね。」


 そう言って情報を打ち込むと、なにかを手に持ちにっこりとアンナさんが笑った。


「おめでとうございます。本日よりEランクです。これまで以上に依頼の難易度は上がりますので無茶はしないでくださいね。」


 そう言って手渡されたのは、鮮やかな黄色のタグだった。


 一つ上のランクとは言え、くすんだ茶色とは大違いですね。


「おめでとうございます。ご主人様さま。」


「うん。ありがとう。」


「では気を付けてくださいね。」


 新たなタグを首に掛け、アンナさんに見送られると、リィスとペルの待つ下水へと向かった。



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