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おっさんの隠し事と隠しきれていない秘密

 結局この状況で思い付く言い訳などあるはずもなく、洗い晒い話す事にした。


 ニイナさんは小売連合会会長のわけだし、協力が得られるかもしれないですしね。


 宿ではなく、寮であるこの建物内に幸いにも人の気配はなく、私達とニイナさんとネルさん親子だけのようだった。


 もう皆さん仕事に出たようですね。


 融合魔物フュージョンモンスター達とルファと共に下へと降りると、既に食堂で寛ぐニイナさんとネルさんの姿があった。


「おはようございます。ご馳走様でした……」


 視線を感じながらネルさんに持ってきてもらい、食べ終わった朝食の食器を片付け、食堂に戻る。


 あぁ。なんだか空気が重いですね。


「あー……この子達はですね……」


「あんたのスキルで生まれた子達だろう?知ってるよ」


「なっ! 」


 意を決して言おうと決めた覚悟が、ニイナさんからの一言で吹き飛んでいく。


「うちの情報力を舐めるんじゃないよまったく。とうにスライムの子は知ってたよ。さすがにここ最近で増えたそこの蝙蝠ちゃんやら、フードの子も知っているとはいえちゃんと紹介してほしいけどね。詰めが甘いよ。夜に連れ込むんなら、あの猫なで声はやめときな」


「あっ蝙蝠ちゃん」


 リィス達を紹介するため覚悟を決めたつもりが、既にニイナさんには殆ど全てバレていましたね……。あの声を聞かれていたとは……。いつまでも隠し通せるものではないですね。


 それにネルさんのこの感じからして、ペルの事もよく知っているみたいです。


 気まずそうなペルが、羽についた鉤爪を交差して顔を隠しながら落ち着きなく肩を移動する。原因は一心不乱にペルに手を振るネルさんだろう。


 その姿。すっごい可愛いんですが。

 ネルさんとの間に何かあったんでしょうかね?


「すみません。では改めて紹介しますね」


 結局全てを説明した。いや喋らされた……。そりゃあもう一問一答です。

 具体的には、キュリとの『融合』もネルさんに見られていたらしく、『融合』のスキルも含め、自分のスキルで生み出した魔物である事。


 基本外の魔物とは違い、自分の魔力で作られているため恐ろしいものではない事。


 そして異世界人である事……は、まぁもう知っている様子でしたが。


 おそらく冒険者ギルドより早く情報は入っていたんでしょうね。


「はぁー。あんたが色々隠したい気持ちはわかるけどね。冒険者稼業をやっていく上でいつまでも隠し通せるものではないよ。そんな能力。魔物を下水や墓とはいえ放置してるんだしね……。私達の情報操作も限界があるってもんだよ。流石に森迄は無理だったけどね……。今思えば、ルファちゃんを奴隷にしたのはよかったのかもしれないねえ。まったくノッツのやつに感謝だよ」


「ですよね」


 今更ながらリィス達を見て思う。いくら融合によってできたオリジナルモンスターと言っても、フリナのように見た目魔物というだけで、他人からは同じなのだと……。


 魔物を放し飼いにしているのも同意なのだと……。


 でも今更なんですよね……。最初の事もあってギルドも含めて、この国自体信用出来ませんからね。情報は出したくないですし……。


 その辺も実は上手いことニイナさん達が情報を操作してくれていたらしい。


 手勢の冒険者を使い下水や墓に他の冒険者が行かないように……。依頼を受けて。森まではというのはそういう事なのだろう。


 ホントすみません。


 ルファの事は、ノッツさんの事を含め、その日に話している。

 大商人のノッツさんと、ギルドの納品を奪った形になる小売連合会を立ち上げたニイナさんは、敵対していると思っていたが、そうではなかった。


 どちらかと言うと良い関係を保っているらしく、ノッツなら信用できると太鼓判押していた。


「それに、今の説明じゃ。アンタ師匠さんにもその子達の事言ってないんだろ?ちゃんと説明するんだよ。アンタの師匠なら良い案だしてくれるだろうさ」


「はい」


 ニイナさんもネルさんも、この一件に関してはこれからも秘密にしてくれるという事で、今まで通り自分が強くなって冒険者ランクを上げていくのが一番だろうという結論に至った。


 いつまでもFランクのままでは、大きな権力に飲み込まれる。


 この街にいる限り、ある程度はニイナさん達が護ってくれるが、やはり限界はあると難しい顔をしていた。


「さてと。そろそろ街も落ち着いて来ただろうさ。出掛けるにはいい時間だよ」


「そういえば私が寝込んでいる間に何かありました?その辺の情報がまるでなくて……」


 ワイバーンを討伐し、気を失いそうになったところ迄は薄っすらと覚えてます。


 ですが、目を覚ませば次の日の朝。すっかりその辺りの情報が抜けていますね。


「あっ。じゃあ私が説明するね」


 ネルさんが手を上げ説明してくれる。


 なるほど。セイドウくんが冒険者と兵士を率いてワイバーンを討伐を宣言ですか。


「そう。ほらこれ」


 ネルさんが見せてくれたのは、号外で発行された広報誌。


 そこにはこう書いてあった。


『勇者ヒジリ。ワイバーン10体撃破。勇者の聖剣は天を斬り裂きワイバーンを地に落とした』


 その文字とともに、大きく1面にセイドウくんの聖剣を振った姿が描かれていた。


「おや?」


 10体撃破と書いてありますね。ギルドでは10体と言っていましたがもう1体いたのでしょうか?


 そういえば私の討伐したワイバーンが無くなってるみたいですね。軍が持って行った?


 そうすると少し厄介です。倒したのが誰だという話になったら勿論(セイドウくん)が出てきますよね。


「あっ。店前のワイバーンならこっちで処理しておいたよ。然るべきルートに流したから、軍関係にバレる事はないと思うな。タクトくんのお役に立てたかな?」


 またしても顔に出ていたようですね。


 どうやらあのまま放置するのが危険と考えたネルさんは、軍に見つかる前に処理し証拠隠滅してくれたらしいです。


 わざとらしくウインクをするネルさん。あれがなければマトモな人なんですけどね。


 ワイバーンの代金は後から貰えるようです。勿論手数料はお渡ししますよ。


『送還』

 リィス

 ペル

 キュリ


 2人にリィス達の紹介が終わったところで、下水と墓地にそれぞれ送還する。


 今日はまず、行けずじまいだった教会にルファを連れて行く予定です。


 ただセイドウくんにも会いそうな気がしますからね。


 その後は少し身を隠しておきたいので、しばらくは下水に籠りましょうか。


 あそこならもう調査もしてないので、他の冒険者もいませんし。


 ワイバーンの時に、少し見たルファの強さも普通の魔物で知っておきたい。


 それに下水にすればリィスとペルに後で会えて、一石二鳥ですからね。


 ある程度の計画を立て、準備が出来たところで宿から出る。


 名前 :ルファ

 年齢 :17

 スキル :多尾Lv2 狐火Lv2 幻覚魔法Lv1 料理Lv1 聴覚強化Lv3 ステータスカード

 輝度

 その他

 主人『タクト マミヤ』


 見た通り、ルファは教会で洗礼を受けていないため輝度の表示がない。だから教会に行かなければならないのだ。


 冒険者としてやって行く以上、ルファにも輝度の表示が必要ですからね。


「じゃあ行こうか。ルファ」


「はい」







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