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おっさんの目覚めと迂闊な行動

 朝日が窓を超え、足元から伸びた光が枕元にさす。

 全身を温かな太陽の光が包み、体がゆっくり覚醒していく。


 眩しさに薄目を開けて横をみれば、スースーと可愛い寝息をたてルファ。枕元にはリィス。天井にはペルが逆さになって寝ていた。


 ん?キュリ……。


 あぁ。そこは床なんですね。光の差さない部屋のすみの床では、小柄なスケルトンであるキュリが胸の前で手を組み全く微動だにせず眠っていた。


 そこはアンデット。その骨の体に、呼吸も鼓動もない……。


 皆を起こさないように、ゆっくりと体の調子を確認する。


 大丈夫。前よりも軽いくらいですね。


 師範から教わった技を出した後は、決まってボロボロになってしまう。誰かに担いでもらわないとしばらくは歩けない程に。


「私は強くなったんでしょうか」


 グーパーと拳を握る。


 この世界は、変なところがゲームっぽいくせに自身の成長……レベルアップを軽快な音や音楽で教えてもらえない。


 だから強くなった実感が得られにくい。あるのは高揚感。


 それがどの位強くなったかはわからないが、今回も確かにいつも以上にそれがはっきりとわかった。


 ステータスカードの輝度は更新できない。


 あれは初期能力の指標。どちらかというと潜在能力を見るものですからね。私はずっと輝度43のままです。


 軽々と複数のワイバーンを倒したセイドウくん。対して通常の攻撃が効かずに、無理をしてやっと1体の私……。


(マスターおはよー。かなしい?)


(おはようリィス。起こしちゃった? 大丈夫だよ。みんなが周りにいて嬉しいくらいだよ)


(ぼくもうれしー)


 そう言って枕に飛び乗り体を擦り付けるリィス。魔物達には私の不安が伝わりやすいのかもしれませんね。


 まあリィスもペルもキュリもLvがかなり上がりましたからね。総合的に強くなった。今はそれで良しとしましょう。これからですね。


 ベッド横にあるサイドテーブルの上のワイバーンの魔石を手に掴む。

 キラリと太陽の光に反射するその魔石は、スライムやゴブリンの小指程の魔石とは比べ断然大きく、綺麗な結晶だった。


「んっんん。ご主人様?」


 反射した光が、ルファの目に入り目を覚ましたルファがゆっくりと目を醒ます。


「ご主人様! おおおはようございます! お体は! お体は大丈夫ですか!」


 慌てて全身をペタペタと触り出すルファをギュッと抱き寄せる。


「大丈夫。スキルのおかげでね。一晩寝ればこの通り。これも内緒ね。」


「はっはい〜」


 朝から真っ赤に染まったルファを離し、腕を回してみせる。


「師匠や師範曰く、私は回復力が異常に高いらしいんだ。ルファも昨日はありがとね。助かった」


「はいっ!良かったです。」


 お礼を言いながら頭を撫で、そのモフモフを堪能する。


 しかし、すぐに誰かの気配が近付いてくるのがわかった。


「ん? 誰か来ましたね」


 コンコン


「声が聞こえたけど起きてますかー?」


 おや。ネルさんでしたか。こんな感じでくるのは珍しいですね。いつもなら知らぬ間に隣にいますからね。


 それにしても、随分早くネルさんの気配が分かった気がします。どういうことでしょう。


 ステータスカード

 スキル:気配察知 Lv1


「おぉ」

 なるほど。これのおかげでネルさんの気配がわかったんですね

 そういえばこの前の演武の時にも、うっすらと気配を感じていましたし、スキル化直前だったみたいですね。


 まぁこれがついた理由については、いつかネルさんに“直接”問いただすとしましょうか。


「?どうしました? ご主人様。外でネル様が呼んでますよ?」


「あっそうか。はい! 起きてます!どうぞ」


 ルファが鍵を開け、ネルさんがお盆を手に持って入ってくる。


「おはようー。タクトくん。ルファちゃん。はい。2人の朝食よ。まだ歩けないと思ったんだけど……」


 言葉を止めネルさんの視線が上下に動く。


「んっうん。昨日、宿に入ってきた時ボロボロだったでしょ。あの様子じゃ数日はは起きれないかと思ったんだけど。呆れた回復力ね。うん。ほんと。大丈夫そうね。ぐひ。ほんと。うん。」


 心配はしてくれている。それはたしかでしょう。しかし……視線が怪しすぎます。


 そういえば上半身裸で寝てて、そのままですね。うん。この人の前で脱ぐのは危険ですね。ホントこれさえ無ければと思うのは私だけでしょうか……。


「ルファ……」


 ルファに無言で視線を送る。


「はい!」


「いーやー。ルファちゃん? そこ持つのダメー。出さないでー。お姉ちゃんの保養がー目の保養がー」


  あまりに視線が怪しいので、視線の意味を理解したルファが無言で首根っこをつかみ、外へと出した。


 そしてドアが閉まる直前。そのタイミングで


「あっ今度その子達も紹介してねー」


 カチャン


 ドアの外から聞こえた最後の一言に、一度大きく心臓が跳ね上がり、一斉に血の気が引く……。


「ご主人様……」


「あぁ」


 その言葉を聞いて部屋を見渡す。


 ベッドの上にはスライムのリィス

 天井には大蝙蝠のペル

 極め付けに、床には横たわり子供の白骨死体となんら変わらぬ姿で眠るキュリ……。


 ネルさんの普通の訪問に、普通に応対してしまっていた。


 それが本来、気配察知Lv1程度では全く意味をなさないネルを感知してしまった結果だと知らぬまま。


「やっちゃったな」


 よくよく思い出してみれば、ボロボロだったのを知っているんです。ボロボロになった理由も、宿前のワイバーンの事も説明しなくちゃならない。


「はぁ〜」


 ネルさんの出て行った部屋で、頭を抱える事になった。






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