おっさんの輝度と成長の軌跡
お互いに挨拶が終わり、ルファもリィス達に慣れてきた。
「さてそれじゃあもう一個の能力をみせようか。」
『融合』 キュリ
融合を唱えた瞬間。その場にいたキュリが光となって重なる。
実は初めてだったキュリとの融合は終えたが、驚いたことに部屋の鏡を見てもあまり外見的変化はなかった。少し青白くなったくらいだろうか。
さすがスケルトン。変わったとしたら“骨”なんでしょうね。
しかしキュリとの融合は外見的以上の変化をもたらした。
全身を巡る魔力の量、質が共に跳ね上がったのだ。
「おぉ魔力がかなり上がりましたね。凄いです。それこそ骨の一つ一つに魔力が蓄えられているのがわかりますね。」
それぞれの指先からビー玉程の火の玉を出す。
うん。イメージ通りに自在に魔法が使えますね。こんなにスムーズに魔法がだせるのであれば、アレが出来そうですね。
『解除』
一通り、やれる事を試しキュリとの融合を解く。
「ルファ。これが私のオリジナルスキル。『融合』だよ。今のは魔石から創り出した融合魔物と魔物融合ね。これが普段隠している私の能力。今のところ言いそびれたのもあって、師匠にも師範にも言ってないかな。」
そこでステータスカードを出しルファへと見せる。勿論非表示にはせず、全てをさらけ出した
。
一瞬輝度をどう思われるか不安になったが、それくらいで彼女の態度が変わるとは思えず、全てを出す事にした。
名前 タクト・マミヤ
年齢 17
スキル 融合 採取Lv2 魔法操作Lv3 棒術Lv2 殺傷耐性Lv2 土属性魔法Lv2 生活魔法Lv1 火属性魔法Lv1 ステータスカード
輝度 43
その他
冒険者:F
∈ : S
眷属 :リィス ペル キュリ
奴隷 :ルファ
先日のトロール戦で棒術がLv2となりました。やはり大物との戦いは経験値が違うみたいです。
「そっそっそ……そんな秘密をルファなんかに!大丈夫ですルファはルファへの奴隷契約がなくてもご主人様の秘密は絶対に守ります。忠誠の儀は奴隷契約なんてチープな契約より、もっと凄いですから!」
ん?
なにか結構重い事実をサラッと言いましたねこの子は。
いつのまにか私じゃなくてルファになっているところをみると、これが自然体なんでしょうね。良い傾向です。
それにしても
「えっとルファ?さっきのお腹を撫でる行為って、具体的にはどういう……」
「はい。ご主人様。『忠誠の儀』はルファ達天狐族が一生をかけて忠誠を誓うに値すると決めた方。それは族長だったり、伴侶だったりですが…(ぽっ)そういう相手ができた場合、それこそ一生かけて尽くす事を誓う行為です!もちろんこの儀式が使えるのは一生に一度。それだけの覚悟を持った儀式が奴隷契約なんて魔法で縛る契約よりも弱いなんて事はありません!」
ん?ん?ん?そうですか。
でもおかしいです。おかしいですよ。いつの間にそこまでの忠誠心が彼女に芽生えたんでしょう?昨日の大半は無表情でロボットのようだった彼女にいつ?
彼女の言う通りなら強制的な主従関係なんてあってないようなもの。つまりその契約で起こる御奉仕なんて以ての外。
そりゃあ。体は重ねましたよ。昨晩。そりゃあもう最高でした。
「ご主人様。それ違います!」
あっまた顔に出てたみたいですね。ルファの顔も真っ赤です。
では体を重ねる行為自体は違うと……。あとはなんでしょうかね。ルファが態度を変えた行為……って⁈
いやいやいや。
「ご主人様!」
「なっ何⁈」
「アレは反則です。あんな愛情のこもった行為をあんなにも長く丁寧に。あの優しい指使い。耳元で囁かれる声。緊張していたルファの体が、解きほぐされていく感覚。これだけの物を頂けて、あなたの愛情や優しさを疑う天狐族はいません!ルファは怖かったです。奴隷として失敗すればまた売られる。次はどんな人に買われるのか。どんな扱いを受けるのか。それをご主人様が全て取って、ほぐして、安心させてくれたんです。あんなに気持ちいいのルファは初めてでした!」
うんすっごい卑猥に聞こえるけど、違うよね。
そう言ってルファが手に持っていたのは、私のブラッシングセット。
あぁそうですよね。ルファが態度を変えた事って言ったらこれしかないですよね。うん。おかしくないですか?これで一生を捧げちゃうって……。
「どうせルファは奴隷の身。もう伴侶も見つけられません。ならば一生お仕えする人くらいは自分で選びたいんです。」
「そうか。そうだったね。ルファの気持ちはわかった。その儀式にルファ自身が納得しているならいいんだ。私もそれに応えれるように頑張るよ」
「はい。改めてよろしくお願いします!ご主人様!」
ルファは、昨日とは違い弾けるような笑顔を見せる。こっちとしては彼女を奴隷にした時から覚悟を決めているんです。
他に売ったり手放したりする気はありませんよ。ルファが望まない限りはね。
「そういえばルファも戦えるみたいな事をノッツさんが言ってたけど。」
「はいっ!戦えます『ステータスカード』」
名前 :ルファ
年齢 :17
スキル :多尾Lv2 狐火Lv2 幻覚魔法Lv1 料理Lv1 聴覚強化Lv3 ステータスカード
輝度
その他
主人『タクト マミヤ』
「おっステータスカードですか。全部表示されてますね。」
えっ奴隷の主人には強制的に解除になる?なるほど。そういう違いもあるんですね。
全体的にレベルが上がっている。特に聴覚強化はLv3。なかなか強力ですね。
「ルファ。輝度の表示がないのはどうして?」
「はい。輝度の測定は成人になって戦闘職を希望した魔術を行使する人が教会で測定します。輝度は戦闘に関連したものの潜在能力なので戦闘希望や魔法を使うなどがないと意味のないものなので」
「あっそういう。」
まったく私には戦闘職の希望なんてなかったんですけどね。異世界人は強制なんですか。
「すみません……。ご主人様。ご主人様の輝度の事でお聞きしてもよろしいでしょうか…」
きた…。やはり来てしまいました。自分の主人の輝度が43なんて期待外れもいい…
「ご主人様の輝度。おかしくありませんか?」
ん?期待外れのような言葉が飛んでくると思っていたが、ルファからの言葉は予想外の言葉だった。
「どういう事?」
「いえ。輝度43となっていますが、おかしいんです。魔法を十分に使える時点で43はないと思います。魔法が全く使えない身体能力だけの数値か、身体能力は貧弱で魔法が少し使えるならばわかりますが…魔法も武器も使えるのにこの低い数字は……」
あっそういえば師匠が言ってましたね。私には魔法穴が開いていなかったと。輝度を測った後に開いたからこちらの世界の感覚と差が出たみたいですね。
身体能力も魔法ありきで鍛えたし、あまり参考にならないって事でしょうか?
「あぁ。測った時、魔力穴閉じてたらしいんだよ。幸運な事に魔法の師匠が開いてくれたけどね」
「そうですか……そういう事ならご主人様の輝度はあまり才能とは関係ないのかもしれませんね。トロールをお一人で倒されたと聞いていたので、おかしいと思ってたんです。万全な私でも難しいですから。」
「やっぱりあまり参考にならない?流石にトロールを倒したあたりから、輝度と強さが比例しないって思い始めてんだよね。じゃあ私も少しは強くなってるんですね……。」
輝度と強さが関係ない。そう言うルファの言葉は正直嬉しかった。
城にいた時、全てを輝度で決められ才能もない。スキルもゴミだと突き放された。
セイドウくんの圧倒的な才能を見せつけられた。勇者とはこう言うものだと。輝度で全てが決まるのだと
ただ師匠に出会った。そして魔法の基礎を授かった。
次に師範に出会った。そして剛棒の基礎を授かった。
殺傷耐性というスキルのおかげで、異世界にも対応することができるようになった。
一歩ずつ。一歩ずつ。進んだ結果、今がある。ルファの人生を変えられた自分がいる。
うん。成長してる。まだまだ彼には届かないけど、地道に力をつけよう。リィスやルファ達の力を借りて。