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おっさんの心の隙間と入り込む営業の怖さ

 そこにはずらりと並ぶ首輪を付けた人族や獣人の男女。

 全員奴隷ではないですか……。


【奴隷】

 借金もしくは犯罪などにより、奴隷として売られた者。

 人族の借金奴隷は、買い手が解放を望めば解放が可能だが、この国では獣人や犯罪奴隷は解放は出来ない。

 奴隷は秘密厳守等、様々な条件を付与して契約し、基本“物”扱いがこの国の奴隷のあり方となっている。


「いやいや。いらないです。ホントいらないです。」


 勿論断りますとも。


「まままま。そう言わずに。あなたも冒険者なら報酬で揉めない奴隷がおすすめです。結構いるんですよパーティメンバーが奴隷だけって言う方も。何より絶対服従。盾にも武器にも荷物持ちにも使えます。どうです。少々お待ちを今あなた様にお薦めの奴隷を……」


 いやいや。どんどん話が進んで行くのはどう言う事でしょうか……。


 確かにそういうパーティがいくつかあるのは知ってますし、自分の抱えているものを考えればどこかのパーティに所属するなんてことも、知りもしない冒険者とパーティを組むことも難しいでしょう。


 それにしても盾にも武器にもですか……

 確かこの国の奴隷の扱いは使い捨てに近い感じでしたね。まったく。ホントろくなことしない王族です。


 それでもパーティですか。ランクあげてソロでは厳しい時が来る可能性もありますね。

 奴隷は定番ですし見るだけみましょうか。勿論私は使い捨てにする気はないですよ。


 あれ?選ぶ気になってません?

 怖っ!これが営業の力!


 やはりここは断りましょう。


 しかし顔を上げれば、ずらりと並ぶ奴隷

 前半に並ぶのは屈強な肉体を持った男性に肉食系がベースとなった獣人にアマゾネス?な女性達。

 次は魔道士でしょうか少しひ弱な感じの奴隷が続いて……。


 うん。

 後半は見なかったことにしましょう。所謂性奴隷ってやつです。


 しかしここまで様々な人が並ぶと、異世界を感じますね。


 ん?ん!


「ほほー。タクト殿はそちらが好みですか。」


 一人の奴隷に目を奪われる。それを誤魔化すように次の奴隷に目を移しましたが遅かったようです。その瞬間を商人ならば見落とさない。ホント目ざといですね。


「おやおや。そんな顔しないで下さい。少々お待ち下さいね。」


 そう言うと他の奴隷を下げさせ、その奴隷を前に進ませる。


 長い旅で汚れ、くたびれてはいるが、たしかにモフモフを想像させる尻尾に耳の毛並み。

 狐の獣人ですね。道具屋のフィスさんはあまりモフモフ感が無かったですが、違う種族なんでしょうか?


 たしかに。たしかに今の生活に足りない物は何か考えた時に、癒し成分としてのモフモフ成分が足りないと言う結論に至りました。


 あぁ近所のスコティッシュフォールドの雑種の野良は元気でしょうか。一度餌をやったら決まった時間に家の前に来るようになったんですよね。大家さんも猫好きで飼うことを許してくれましたけど、結局家には入りませんでした。今思えば私がいなくなっても野良のままなら大丈夫でしょう。


 アンナさんにそんなモフモフ成分を求めて、フォレストキャットという小型の猫型モンスターを教えてもらって、狩りに行きましたが……あのモフモフにつぶらな瞳。いや…つぶら…ではなかったですかね。完全に脳内補正です…。


 あれを魔石の為とはいえ、100体以上狩るなんて……私には出来ませんよ。魔石の依頼も出せませんし。用途を疑われますからね。


 まぁちょっと強力な眠り薬で眠って貰って、その隙にモフモフは堪能させてもらったんですけどね。ついでに鋭い爪を避けて肉球を堪能しておきました。もちろんちゃんと気付薬で起こしましたよ。


「うんうん。本当に気に入ってもらえたみたいですね。いいでしょう!彼女は今回の目玉奴隷ですがお譲りしましょう!」


 ノッツさんは、一人で勝手に盛り上がっていく…

 いや…どう見ても竜人の奴隷がいるのですが……超強そうですが…。今回の“大物”取引の目玉って、彼らですよね。絶対。


 押しの強い商人に、なし崩し的に選ばされ契約を結ぶ。契約自体はあっさりとしたものだった。背中の魔法陣に血を一滴垂らすだけ、絶対服従と秘密厳守、この国での解放不可はデフォルトだそうで、そのままの契約となった。


 奴隷の子と同時に商品から服と20万トールを貰い。ノッツ商会の木札を貰う。


 彼は結構手広くやっているらしく。彼の店の系列店でこれを見せれば安く買えるそうだ。日用品も扱ってるらしい。

 これだけでもよかったんですが……。


 これだけもらっても、積荷を失っていた事を考えれば安いそうです。契約前の彼らには戦闘禁止の命令がされているらしく、戦力にならないらしい。


「ではこれで契約は終了です。彼女の名はルファ。天狐族のルファです。」


 契約が終わったルファと呼ばれた少女の背中をノッツが押し、私の前に立たせる。


 薄汚れたフードを被り、下を向く彼女の顔はあまり見えませんが、先ほど見た限り可愛らしい顔をしていました。


「よろしくお願いしますね。ルファさん」


「よっよろしくおねがいします。ご主人様。」


「さささ。挨拶も済んだところで、タクト殿。これからのご予定は?もしよければこの後も一緒にアルグレントの街に行きませんか?タクト殿とゼクトさん達がいれば鬼人に金棒です。」


 なるほど。この20万トールは、この後の護衛料も込みでしたか。やはりノッツさんは商人ですね。


 いいでしょう。もう用事は済んでますからね。

 リィスやペルの遊ぶ時間は減ってしまいましたが、ルファもいますし、今日はもう帰りましょうか。


「はい。ではご一緒させて頂きますね。」


「おおー。よかった。それでは行きましょう!」


 道中たいして危険な魔物が出るわけでもなく、街に着くと、いつもの冒険者のラインではなく、より早い一部の大商人が使うラインで街へと入る。

 やはりノッツさんは大物のようですね。


「それでは、有難う御座いました。これからも是非ご贔屓に」


「じゃあなタクト!またどっかでな!」


 ノッツさんとゼクトさん一同と別れると。


「じゃあ行こうか。」


 あまり言葉を発しない、影のある表情のままのルファを連れ、宿へと帰る。


 そこで案の定、ルファの事でニイナさんとネルに質問責めにあい、深いため息とともに憐れみの目で見られたのは必然だったんでしょう……。


 宿はそのままでよかったのは幸いでした。



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