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おっさんの実力とCランクパーティの力

 近くの街道で馬車が襲われているようです。

 悲鳴と共にその方角を見ると、木々の隙間から馬車が視えた。


「行きましょうリィス ペル!」


 馬車に向かって駆け出すと、水生成で焚き火を消したリィスが肩に飛び乗る。


 街道に出ると、1台の馬車が2m以上もある体躯の魔物に襲われている。

 これはまた大きな棍棒を振り回してますね。


 その丸太ほどもある棍棒を振り回す魔物こそ、トロールと呼ばれる人型の魔物。

 動きは比較的鈍いが、その怪力とダメージをものともしない耐久力と鈍感さが特徴の魔物が2体。


 冒険者5人を相手取り戦っていた。


 馬車を守りながらなんとか踏ん張ってますね。


 馬車を背にトロールに向かい合う冒険者達。そしてその馬車の裏には商人と思われる男性と、御者であろう女性が震えながら身を潜めていた。


 おそらく、この女性の叫び声だったんでしょう。


 トロールの後ろへと回り込みリィスに指示を出す。


(リィス!アクアカッター)


 今は遠距離攻撃はリィスしか出来ない。

 ペルに待機を命じ、リィスに先程覚えたばかりのアクアカッターを指示する。


(いくよ〜。アクアカッター!)


 リィスのアクアカッターをトロールの膝裏に向けて放つ。こういう時に声を出す必要がない念話は便利ですね。


 その刃がトロールの右膝の裏を斬り刻むと同時に

 魔力操作を行い、身体強化により脚力を強化し地面を踏み込みジャンプすると、膝を斬られ片膝を付き、しゃがみこんだトロールの後頭部の近くに飛んだ。


「助太刀します!」


 茂みを超えたところで、冒険者達に声を掛ける。


「誰だか知らんが助かる!」


 冒険者の一人がこちらに答える。


 がその瞬間


「ごぁっ!」


 大きな盾を持った男が、横薙ぎに振られた棍棒からパーティを守り、そのまま吹き飛ぶ。

 しかし、その隙をつき一気に攻撃を仕掛け、かわりにその1体を仕留めていた。いい連携ですね。


 そしてこちらの目の前には痛みでうずくまり、混乱するトロール。


「この!」


 そのまま剛棒をジャンプの勢いのまま螺旋の動きを加え突くと、耐久力の高いトロールの頭が砕け、ゆっくりとトロールが地面に倒れた。


「……」


 おや?

 おやおや?


 簡単に頭部が砕けましたね。さすがは剛棒です。混乱していて頭部に力が入っていなかったんでしょう。膝を切りましたしね膝に意識がいっていたんでしょう。プロレスラーですら気を抜いた瞬間殴られれば……と言いますしね。


 周りを見れば、吹っ飛んだ大楯の男を介抱している冒険者達。


 取り敢えず大丈夫そうなので、後ろの茂みに隠れているリィスとペルに礼を言い送還する。

 魔物と間違えられるのは勘弁ですからね。


「大丈夫ですか?」


 5人の冒険者に近付くと、すでに大楯の男の治療は終わっていた。


「あんたいったい……トロールの頭。砕けた音がしたわよね……」


 冒険者の女性が立ち上がり、今倒したトロールを指差す。


「いや〜意外に柔いものですね。」


「「「いやいやいやいや。」」」


「ん?」


「ないから!トロールよ!あいつら結構耐久力あるのよ!」


 魔法少女がきついですね。


「おい!リーン。助けてもらったのに失礼だろ!すまんな。助けてもらったのに。俺はこのパーティのリーダーのゼクトだ。本当に助かった。」


「ああホントに。さすがにもう一回アレを食らうのは勘弁ですからね。私はシュルド。見ての通り盾役です。」


「ねぇねぇそれ魔具でしょ?ダンジョン産?衝撃波?凄いよねー。頭グシャってなってたね!あっ私はシーフのククリ。よろしくね!」


「助かりました。神は私達を見捨てなかったようです。本当に有難う御座います。神官のフィリーです。」


「ふん。リーンよ。魔具ならおかしくないわ。そうならそうと言いなさいよ!」


「おいっ失礼だぞ。冒険者が自分の力を言わないのはわかっているだろ!」


 立ち上がり順々にお礼と挨拶をする5人。男性3人女性2人のパーティだ。

 パチリとウィンクをするククリさんは、女の子っぽいがれっきとした男らしいです。所謂男の娘ってやつですね。


 それにしても剛棒を魔具と言っていましたね。

 んー衝撃波は出ないですがLvは変化するので、魔法具…魔具なんでしょうか…。まぁ破壊力はトップクラスの武器ですからね。

 これを振れる…という意味ではそれなりの力が必要ですから、それは自分自身の力何ですけど…言っても納得しないでしょうね。


「いえ。たまたまそこの湖にいたものですから。私はタクト。冒険者ですよ。かなりランクは下ですけどね。」


 そう言って首元に隠れていたタグを出す。胸元に下された茶色タグが鈍く光る。


「はぁーーーFランクーー」失礼な魔道士リーンが声をあげる。


 見れば皆鮮やかに光るスカーレットレッドと呼ばれる色のタグを付けている。

 どうやらCランクパーティのようです。


「はい。先日登録したばかりです。」


「ほー。それならお主ほど強くてもFランクなのは納得だな。最初は低いものだ。だからそんなに騒ぐなリーンよ」


 シュルドさんに諌められたリーンが、いじけたように横を向く


「ふん。どうせその魔具のおかげでしょ。」


 この子にはデレはないのでしょうね。まぁ先程の風魔法を見ても優秀なのはわかります。


 横を見れば5人が倒したトロールが横たわっている。そしてそのお腹は風の刃で大きく裂かれていた。


 それに馬鹿にしているのかもしれませんが、そうですよ剛棒のおかげです。なんて正直に言ったら。火に油注ぐんでしょうね。分かりますよ。クレーム対応もしてましたからね。こういう時は無言で受け止めるのが一番です。相手は言いたいだけですから。


「あの〜」


 5人との挨拶が終わったのを見越してか、馬車の裏から隠れていた商人が顔を出した。

 小柄なその男は、しきりに頭を下げる。Fランクの冒険者にも礼を尽くせる良い商人のようだ。


「助けて頂き有難うございます。アルグレント王国にて幅広く商売をさせて頂いております。ノッツと申します。いやいや急な大物取引で護衛もほとんどつけず私自ら交渉にいったのはいいいですが、まさか森の中層にいるトロールに襲われるとは。流石の彼らでもトロール2体から馬車を無傷で守るのは厳しかったはずです。あなたは私の恩人です。そう。恩人です。そうだ!Fランクのあなたが。強いといってもソロで行動しているところを見るに、まだパーティはお組みではないのでしょう。」


 ね?

 っと一気に話し尽くした商人。ノッツが急に喋りを止めた。


「あっはい。パーティは組んでません。ソロで活動してます。」


「そうですか!そうですか!」


 やはりこちらかの返事を待っていたみたいですね。営業ってこんなに押すもんなんでしょうか……。

 久野木課長は、営業中は非常に寡黙な人でしたが……。


「では。どうか商品から1つ好きなものをお選び下さい!」


 言葉を止めると同時に、バンッと馬車のボタンを押すと馬車のサイドが開き、その内部が姿を見せた。









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