おっさんの融合ポーションと師匠からの報酬
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本日二話目投稿します。
次の日
前日のうちに王国騎士団、冒険者ギルドによってスケルトンが討伐されたと市民たちに広がり、同時に大量のスケルトンを率いたリッチを討ち取り、最も活躍したものを讃える式典を城内にて行うと通達がされた。
城の前の広場に集まった市民達が歓声をあげるなか、2階部分に出てきた勇者 ヒジリ・セイドウが、スキルによって創り出した聖剣を掲げる。
今回は一市民として王城へと入る事が許され、その姿を見ていた。
リッチの危険性を散々煽ったのちに、今回の功績を大袈裟に讃える大臣の一人。初めの謁見の間で見た顔だが自己紹介したわけではないので、名前はわからない。
そして王が壇上に上がると、歓声は最高潮となる。
「勇者ヒジリに騎士の称号を授けるものとする。同時に貴族となった勇者ヒジリは我が娘、サラ・アルグレントの夫なるべくここに婚約を宣言する!」
さすがは、王ですね。
あの不健康そうな見た目に騙されていました。雄々しく発せられる声は広場の隅々まで届き、王が話し始めると同時に誰一人話さなくなった広場の一人一人の耳にはっきりと届く。
王たる威厳が胸を締め付け、王の宣言と共に広場に集まった市民達が、一斉に膝を折り頭を下げ始めた。
順調に取り込まれていますね。
壇上のセイドウくんの隣には、腕を絡ませる王女サラ・アルグレントが寄り添う。
そして2階部分の壇上から市民に手を振る姿は、自分が上だということに酔いしれていた。
この後騎士団長ホーエンからの発表により、今後勇者ヒジリとして仲間を募り魔王討伐の旅へ出ることが発表された。
まずは各地の魔物被害の大きな場所へと赴き、その問題を解決しながら強い魔物の魔素を吸収させ、レベルを上げるようですね。
さすがにネズミやウサギでは限界がありますし、彼はこの辺の魔物ではもの足りないのでしょう。昨日のリッチも不完全とはいえ一撃で倒していましたからね。
「師匠!」
広場では未だ興奮が止まず盛り上がりを見せている。
その中でこっそりと師匠の家へと移動する。
「おや。昨日のスケルトン騒ぎは大変だったみたいだねぇ。全くこの国もロクなことしないよ全く。それにしても、勇者ヒジリがいなくなるからと言って、ホイホイきてよいわけでないぞ。こちらは……まあ良いがな。ここに入るための試験じゃ。いつものをやってみせい。」
家に入る前に、全身に魔力を循環させる。
この家を出てから、毎日欠かさずに循環させ操作し変化させ枯渇させてきた。
お陰で絶対量も増え、質もかなりよくなりました。
「ふむ。ヌシはしっかりと基礎を磨いているようじゃの。よい魔力の流れじゃ。入ってよいじゃろ。」
少し含みのあるお許しが出たところで、家に入る。
そして入ったところで師匠が口を開いた。
「ところでの。1日に何個ポーションを作れる?」
ポーション作りも毎日の日課となっている。作りすぎは良くないので1日3本とほかの調合薬にしているが、純粋にポーションのみであれば
「1日40個〜50個くらいですね。」
修行の分を考えれば余剰魔力ではこれくらいは作れる。2〜3個だった頃に比べれば進歩しましたね。
「ふむ 。ならば高品質の治癒ポーションを卸してみんか?このところポーションの消費が早すぎての。この街のポーションの供給が安定していないのでな、それとマジックポーションを…卸値はこの位でどうじゃ?」
そこに書いてあったのは、高品質の治癒ポーション1本5,000トール。そして後から付け加えられたように書いてあるマジックポーション要相談の文字。
「そんなにですかっ!やります。ってマジックポーションの要相談って…書く必要あったのですか?師匠」
高品質の薬草を卸しても、少し値があがった今ですら5束で700トール。2束で1本のポーションが出来ることを考えれば約20倍になる計算です。
「最近分かった事じゃがの。融合で作った緑のポーションは使用期限が非常に長いのじゃよ。調合と違って混ぜているのではなく、結合しているからじゃろうな。だから多く作って貰って構わん。とりあえず治癒ポーションは100個納入して貰えんかの。300個納入毎に更新させてもらおう。ちなみにマジックポーションは10個で良い……。」
「300個ですか。随分多いですね……。」
これは少し安請け合いしすぎましたかね。この量はなかなか大変そうですね。
「むぅ。それと。そうじゃな。これが相談なんじゃが、この街のポーション供給の安定に寄与と、同時にマジックポーションの供給の礼として、1属性のスキルスクロールでどうじゃ?」
「はい⁈師匠!どういう事なんです?私の作ったポーションにそんな価値があるんですか?」
スキルスクロールといえば安くても50万以上の価値がある。ポーション100本以上だ。
「何を言っておるか。使用期限が圧倒的に長い上に、この品質のポーションじゃぞ。かなり薄めても通常利用に足るポーションじゃ。高級ポーションより常備薬としてのポーションじゃな。最近は国や冒険者が大量に購入して一般の市民に行き渡っておらんのじゃよ。希釈して売れた分の1割は更にヌシに入ってくるでな。」
そして興奮した師匠が最後に小さく付け加える。
「それとな……旨いんじゃよ。ヌシがくれたあのマジックポーション…また飲みたいんじゃ」
あぁ師匠が飲みたいんですね。
たしかに後から気付きましたが、私の作ったマジックポーションって苦くないんですよね。マジックリーフの甘みがそのまま生きてる感じで。調合や錬金術と違って材料に一切火を通してないですからね。それが原因でしょう。
治癒ポーションに関しては、おそらくセイドウくんの訓練や、それに付き添う騎士団用のポーションに加え昨日のスケルトン討伐の準備で、一気にポーションの需要が増えたのだ。今の品薄状態が続けばポーションは高騰し、転売目的の買占めが起こり、余計一般の家庭で手に入れられなくなっていくだろう。
「わかりました。まずはポーション100個納入します。」
私の『融合』が役に立つのならそれが一番ですからね。
「それと、勿論師匠の為にマジックポーションを喜んで作ります。スクロールも欲しいですしね。」
「なっ…うむ。有難い。あのマジックポーションはまだ流通させるのはまずいからの。よからぬ事を考える馬鹿が出てくるでな。それで?スクロールの属性は何にするのじゃ?」
あぁ今から作るんですか。さすがですね師匠。
 




