おっさんの実力と豹変する後輩
初ブックマークありがとうございます。
まだまだいきます。
チリッ
ん?光りましたか今?いやこの周りの反応は、間違いなく光ってたみたいですね……。
はい。予想通りです。
「おっおめでとうございます。これでヒジリ様、タクト様はこの世界に登録されました。ステータスカードと唱え、ステータスをご確認ください」
周囲の期待の入り混じった空気が一気に冷める。
ホーエンもだいぶ動揺しているようですね。
はぁー。どうやらこれは確定的のようです。
取り敢えず。
「「ステータスカード」」
2人揃ってステータスカードと唱えると、目の前に宙に浮くクレジットカード大のカードが現れる。
名前 ヒジリ・セイドウ
年齢 17
スキル 聖剣 ステータスカード
輝度 421
名前 タクト・マミヤ
年齢 17
スキル 融合 ステータスカード
輝度 43
手に取ったお互いのカードを見比べる。
若返ったとは分かっていましたが、まさかの17歳ですか。
若返るとこう、若さ故の高揚感があるもんだと思いましたが、心は中年のままなんですね。
心は中年。体は青年。ってアニメありましたね。あぁ少し違いますか。
まぁ誠道くんは、心までしっかり若返っているように見えます。判断力や思考、精神年齢なんかも完全に高校生って感じです。
「ステータスカードを見せて頂いて、宜しいですかな」
ホーエンに従い、ステータスカードを渡すと、それを一目見たホーエンの表情が大きく二度変わった。
その表情は喜びであり、畏敬の表情である。
その表情は怒りであり、侮蔑の表情である。
「ヒジリ様。輝度421!」
「「「「おぉーーーーー!!」」」」
周囲が、一斉に沸き立つ。
ザワつく周囲の興奮があたりを支配するなか、ホーエンは満面の笑みを誠道くんに向けた。
「ヒジリ様。これは凄いですぞ。輝度というのはすなわち強さ。現行能力と戦闘潜在能力の高さを表しております。更に鍛えればまだまだ強くなりますぞ!ちなみに前勇者様の初期値は約300。つまりはヒジリ様は前勇者様より強くなるという事なのです。更には、スキル『聖剣』。これは勇者固有のスキル。紛れもなくヒジリ様は勇者様です」
それは沸き立つはずです。強さを表すという輝度が421。まさかの前勇者越えですか。
誠道くんも心なしか、背筋が伸びて表情が明るいですね。
この国は、一体どれだけの勇者とやらを召喚しているんでしょう。
使い捨て感が凄いですよほんと。
それにしても……。
まずいですね。この流れは。
「タクト様……。」
そしてフッと消える周囲の声のなか低く響く重い現実。
「輝度43…です」
おい!騎士団長。
あからさまながっかり感はやめて欲しい。なんか面倒くさくなってませんか?
再びおこる周囲のざわつきも、ハズレか。酷いな。など、期待外れ感が占めていた。
「まあ戦闘潜在能力は、所謂素質ですからな。低くても現行能力は成長するが……ちなみに一般兵士でも輝度70以上。43というのは一般兵士以下。まぁ戦いの才能はないですな……。」
は〜。
完全な巻き込まれ確定です。しかも中途半端に弱い……。
これがエラー表示や、0に近いくらい弱ければ成り上がりの始まりだったんですが。
戦いの才能がない。
それはそうでしょう。こちらは生まれてこの方、喧嘩とは縁遠い青春時代を過ごし、人数合わせの空手部に在籍してた以外は、出世に何もひっかる事なく過ごしてきた。完全インドア派中年事務員ですからね。新進気鋭の彼とは大違いです。
あーでもこれは本当に不味いですね。
明らかに、王様の表情が変わっています。ハッキリ言って、こいついらねぇ。と言った感じでしょうか。
道端のゴミを見るようなそんな眼が向けられる。
処分される前に、出て行く方向で考えないとですね。
「ちょっとちょっと。マミさん。これやばくない?俺が勇者でそっちが普通以下って……。あれ?俺への勇者召喚に巻き込んじゃいました?そう言えば、あの時の光も俺中心だったような……」
余程嬉しいのでしょう。
自分への反応と私への反応を確認し、勝ち誇った表情を誠道くんが向けてきます。
「まぁ大丈夫ですよ。俺が元の世界に戻すんで」
そして、そう言った瞬間。
彼の表情が変わりました。それは何の敬意も感じられない。完全なる格下を見るような目付き
「だからさ。邪魔。しないでくれねえか?それともまた俺の補佐役します?間宮。くん」
はぁ。
事務員は営業の補佐ですか。そうですか。
随分と言ってくれます。
その辺は、久野木くんの指導は受けなかった。
いや受けてはいたんでしょうが、受け入れなかったみたいですね。
彼は全く逆。事務員が裏方に徹してくれているから、全力で営業に力を注げる。そういう考えの持ち主でしたから。
「補佐役って。久野木課長は、そういう言い方は嫌っていたはずですが?」
「はっ?何言ってんの?事務なんて使ってなんぼでしょ。金稼いでるの俺らでしょ。あんたらの給料は俺らが稼いでんだから。使えるものを上手く使うから優秀なんっすよ。仲良くするのも気持ちよく俺の補佐やってもらうためでしょ。」
「なんと言う事を……」
「まぁこれで分かったでしょ。俺が勇者であんたが雑魚。これがこの世界のシステムが下した答えって事でしょ。この世界でも上下関係は変わらないって事だな」
まったく。
ここまでの男でしたか。久野木くんが主任以上に推薦しないはずです。
彼は知らないでしょうけど、課長候補に彼は上がっていませんでした。
流石は久野木くんです。彼のこの性質を理解していたんでしょうね。
おや。部屋にローブの男が3人駆け込んできましたね。
これは何かありそうです。