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おっさんの趣味と図書委員さん

 地図の隅を凝視する図書委員さん。


 ここは小売と全く関係ないと思うんですが、ここにも影響力があるんですか……。


「はっ!すみませんでした。まさかニイナさんのご紹介だなんて思わず!」


 心の中でツッコミを入れていると、静かな図書館に、甲高い声が響く。


 幸運にもこの時間に図書館の利用者はなく、その声は誰かの耳に入る事もなく、図書館に何度か響くだけですんだ。


「顔を上げてください。それで会員にはなれるのでしょうか?」


 頭を地面にぶつける勢いで謝り倒す図書委員さんの頭を、なんとか上げさせると、その表情はやっと元に戻った。


「もちろんです。ランクはシルバー。2階の本の閲覧許可並びに入会金の免除となります。」


 大盤振る舞いである。


「えっと……そこまでは。ブロンズで十分ですよ」


 結局使うのは1階だけでしょうしね。


「いえいえいえ。ここは、受付嬢時代に知識不足で死んでいく冒険者を、何とか減らしたいと考えたニイナさんがほぼ100%出資して作られた図書館なんです。ようは会長なんですよ!そんな方のサインを持った方からお金を取るなど出来ません!いやでもシルバーからスタートしていただきます!」


 ここもですか!

 何でしょう。そんな大物に毎日食事を作って貰ってる私は……。

 恩恵受けすぎじゃないですか?これがMMORPGだったらプレイヤーからバッシングの嵐ですよ?


「分かりました。それならシルバーでお願いします。」


「はい!ではステータスカードを」


 そう言われステータスカードを図書委員さんの持っている石につけると、また青く光りステータスカードの備考欄に本のマークとSという文字が記載された。


「はい完了です。あっすみません私はシエルと申します。タクトさんですね。よろしくお願いします。シルバーのタクトさんは、2階も自由に使えます。本を読むならそこにいる係に持ってきて欲しい本を伝えれば用意致します。静かな場所で多くの本を、それもシルバーの特権です。」


 笑顔でここの説明をしてくれたシエルさんに2階に案内されると、そこは1階よりも本棚が少ない分広く感じるスペースで、観葉植物が置かれ座り心地の良さそうな椅子とセットとなった1つ1つの机の感覚も広く取られ、プライバシーが守られるよう仕切りがされゆったりと本が読めるようになっていた。

 さすがはシルバーランクだ。


「ではこちらに置いておきます」


 1階でシエルさんに伝えた本を、係の男性が持って来てくれた。


 今回頼んだのは、

 スキルについての本

 周辺の薬草の本

 魔物についての本

 周辺地図

 人間と魔王の関係性がわかる本だ。


 ここにいる係員はほぼ全ての本とその場所を把握しており、用意するのに時間はかからなかった。


「有難うございます」


 礼を言い、本を手に取る。

 木漏れ日がさす。静かな場所を選んだ。

 暖かな優しい日差しを浴びて、本を開く。独特の紙の香りが鼻を刺激する。


 やはり読書はいいですね。元の世界の数少ない趣味を思い出す。この世界にきてからも本は自分を支えてくれていた。


 パタン


 最後の本を読みおわる。

 どうやらかなり集中していたようで、日は沈みかけ館内はオレンジ色に色付いていた。


 ここの本はニイナさんが揃えたものが多く、さすがは受付嬢目線。冒険者に必須な本はかなり充実していた。

 植物の本や薬の本は、師匠宅の方が詳しく、自分の知らない情報は書いてなかったが、その他は非常に参考になった。


 スキルには、取得さえしていれば、常に効力が発揮されるパッシブスキルと、意識する事で効力が発動するアクティブスキル がある。これはゲームでもお馴染みのスキルシステムです。


 私のでいうと

 名前 タクト・マミヤ

 年齢 17

 スキル 融合 採取Lv1 魔法操作Lv1 棒術Lv1 ステータスカード

 輝度 43


 使おうと思って使用するのは、『融合』と『ステータスカード』のスキル。

 反対に自動的に効力が発揮されているのが、それぞれの行動に補正のかかる『採取』と『魔法操作』『棒術』ですね。


『融合』にかんしては、両手に持つと『融合』が出来るか直感が働くので、一部パッシブ扱いなんでしょうね。


 そしてそれぞれに熟練度があり、それを満たせばLvが上がる。

 それを強制的に植え付けるのがスキルスクロールであり、熟練度経験値にマイナス補正がかかっていると言われている。


 またスキルの取得条件としては、スキルスクロールの入手。

 覚えたいスキルを持つ者と師弟関係を結び、密に教えてもらう指導型

 そして、産まれた際に授かる自然取得とスキルなしでも行動を繰り返すことによる、熟練度加算型の取得があり、成長を加味すれば、最も効率のよいのはやはり指導型だった。


 周辺の地図はないが、この国周辺の大雑把な配置と、この城下街の形は別の本で知ることができた。


 それが人間と魔王の関係という本だ。

 だいぶ魔王が悪というのを強調して書かれている。まぁこれが正解って話ではないんでしょうね。

 戦時中に敵国の情報を見るようなものです。反日の国で日本を褒めるような情報は、王政であればなおさら見つけづらいでしょうね。


 まぁあの親子が統治する国です。なおさら反魔政策を徹底しているでしょうし。他国の情報も規制しているでしょうね。


 魔物については師匠に教えてもらった事の復習で、魔族は体内に魔玉があり、魔物には魔石。

 ここ周辺の魔物の生息と特徴についても知る事が出来た。


 この情報に関してはかなり力が入っていて、絵付きで分かりやすく紹介されていました。冒険者には有難い本ですね。


 そして閉じた最後の本を係の人に返し、シエルさんに礼を言い宿へと戻った。







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