おっさんの呑みこまれた先と本当のパーティー
黒い穴が足に触れ、体が呑み込まれと同時にダンジョンへと入った時と同じような浮遊感を味わう。
そして浮遊感がおさまり、穴に呑み込まれる際に閉じてしまった目を開けると、そこは先程と同じような4畳程の部屋であった。
先程と同じ部屋……ではないようですね。前の部屋に似ていますが、宝箱も、それが置いてあった祭壇のようなものもありませんか。
恐らくは転移系の罠。隠し部屋に転移の罠とは嫌らしいですね。
問題はどこに飛ばされたか。そして、どう考えても良い状況でない今の状況をどうするかですね。
「マリー。ファロン。大丈夫ですか?」
とりあえず、宝箱を触れた状態。手を伸ばしたままの姿で固まっている 2人に声をかける。
「ん。あぁ大丈夫かな」
「なっなんなのよ。ねえ宝箱は?宝箱はどこ行ったのよ」
状況を全く理解出来ていないマリーの言葉につい、手で目を覆ってしまう。
頭が痛くなりますね。まったく。
「マリー。今の状況わかってますか?」
「何よ。宝箱触ったら黒い何かに宝箱が持っていかれたんじゃないの!」
ん?
「私の宝ば「黙って!」んんん…!」
周囲を警戒するため最大限に意識していた『気配察知』に強烈な気配が引っかかる。
慌てて大声を上げ続けるマリーの口を塞ぎ、部屋の壁際へと押しつけると部屋の外から気配察知がなくてもわかる程の、強力な気配が近づいてきた。
「グルル……」
部屋の外。広くなったその場所は、大きな岩などが点在する空間となっており、部屋から慎重に覗きそのモンスターの姿を確認する。
ゆっくりとその姿を見せつけるように歩くその姿は、虎程の大きさのウルフ系のモンスターであった。
そしてその大きな特徴は長く突き出した短剣のように鋭い犬歯。その姿は王国の魔物辞典で見た事のある姿。
その名は
「サーベルウルフ…」
「ゴワァァァァ!!!」
「キャイン」
その姿を確認した瞬間だった。
サーベルウルフの死角から、巨大な熊がその鋭い爪を振り下ろし、それを避けるように身を捻るようにして跳んだサーベルウルフの後ろ脚を切り裂いた。
「あぁぁぁ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。」
「なっどうしたんだファロン」
急に頭を抱え蹲り怯え始めたファロンの肩を空いている左手でさする。
「わからないのか!あれ、あれはアウルベア!大迷宮の50階層以降で生息する魔物だぞ」
「ちょっとまってよ!じゃあここは50階層以降だっていうの!どうしてよ!私たち4層にいたのよ!」
強引に口から手を外したマリーがファロンに詰め寄る。
「どうしてじゃないだろ!お前の身勝手な行動で!身勝手な行動でこうなったんだ!」
「いや いや いや 私じゃない私じゃない私じゃない!あなただって触ったじゃない!」
2人とも小声とは言っても、これ以上騒がないでください。気づかれますよ。
責任をなすりつけ合うように互いを罵り始めたマリーとファロンよりも、今は外の様子の方が重要です。
幸い襲われたサーベルウルフは撒き餌的な役割だったみたいですね。
確かにウルフ系は群れで行動しますし、あからさまに気配を振りまいていましたからね。
いつの間にか増えた7頭のサーベルウルフが、アウルベア囲い、連携して襲い始める。
しかし、これはちょっと力の差がありますね。
隙をつくサーベルウルフ。
しかし1つ傷を与えればカウンターのように振るわれる腕でなぎ倒されてますね。
これは時間の問題でしょうか。あちらさんはどうやらこちらに気付いているようですね……。
「ふぅ」
マリーはもうダメですね。心が折れましたか。まあファロンもですがね。どうやらアウルベアは完全な物理特化のようですね。
「2人とも落ち着いてください。さ。水を。」
そしておやすみなさい。30分もすれば起きるでしょう。
2人に一口水を飲ませる。これには麻痺薬と共に融合してあった睡眠薬が入っています。
眠った二人を壁際に横にする。
そしてそのまま手をかざし、いつものように呼ぶ。
『召喚』
リィス
『召喚』
ペル
『召喚』
キュリ
3つの魔法陣が床に描かれた瞬間。
オリジナルネオスライムのリィス、大蝙蝠のペル、そしてフードを被り杖を持った少女。レッサーリッチユニークのキュリ。
3体の融合魔物が召喚された。
急にリィス達が消えたら残されたルファは心配するでしょうね……。
「マスター」
「キキ!」
「・・・」
3体が魔法陣から召喚されると、すぐに状況を念思をリィスに伝える。
勿論その情報はすぐにリィスから他の2体へと伝わり、リィス達の表情が一気に戦闘モードへと切り替わった。
リィス達のLvは…
リィス オリジナルネオスライム Lv18
ペル 大蝙蝠 Lv28
キュリ レッサーリッチユニーク Lv14
ですか。あまり戦闘に参加させられていなかったペルと進化後で既にレベルが上がっているリィス達との差が大きい。
慎重に行くべきですかね。
「みんな、力を貸してくださいね。」
リィス達の頭をなで、剛棒を握り直す。
やはりアウルベアの圧勝ですか。
7頭のサーベルウルフが1頭また1頭と致命傷を負っていく。恐らくは本来釣れるはずのモンスターとは想定外のモンスターだったんでしょう。そうじゃなきゃこんな圧倒的な光景になるはずはないですからね。
しかし、傷ついているのも確かです。
「行きますよ。リィス、キュリはアウルベアを。ペルは周囲のサーベルウルフにトドメを!」
ペルは隙があれば毒牙でと思いましたが、レベルがカンストしそうですね。
それならば、あの瀕死のサーベルウルフ達にとどめといきましょう。50階層の魔物です。かなりの魔素量でしょう。
火属性魔法
『ファイアボール』!!
「……」『影帯』
辞典の通りであれば、アウルベアは風属性と土属性が強く、火属性に弱い。
それを信じて、部屋を飛び出すと遠距離から瞬間的に込められるありったけの魔力を込めたファイアボールを放つ。
そして無言のままキュリの影が伸び、地面を這うようにアウルベアに向かい、足元から急浮上しそのまま片足に巻きつき拘束具のように締め上げた。
そしては同時にリィスの鎌状になった『アシッドショット』がもう片方の足を襲う。
「グァアアアア!!」
「キュリ、リィス。ナイスです!私も足元を削ります」
頭部に放ったファイアボールに対し両腕を交差するようにして防御したアウルベアが咆哮をあげる。
そして、もう一度サーベルウルフにトドメを刺してまわるペルへと吠えた。
「ゴァーーー」
おっと獲物を横取りされてご立腹ですね。
さぁこれからです。
ではいきましょうか。
サブタイトルが難しいです……
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