おっさんの課外演習とダンジョン探索
パーティを組んだ特進クラスの生徒達が、順にダンジョンへと入っていく。
学園内の一角。宮殿のような建物にダンジョンの入口はあった。
宮殿内のホールにポッカリと開いた穴。そのダンジョンの入口は、周囲に兵士が配置され出入りを厳重に管理されている。
まぁ、人の出入りを管理しているだけではないんでしょう。ダンジョンモンスターも出てくる可能性もあるでしょうし。
ダンジョンはその場に収束した大量の魔素がコアとなり、創り出されたと言われています。そのダンジョンが1度でも人間の侵入を認識すると、本格的に始動するらしく、始動したダンジョンは一定期間内に1層以上のモンスターをある程度、間引きしないとこちら側へ出てくる事が分かっている。
この演習もその間引きの一環なんでしょうね。
「C班入ります」
「それじゃ行こうか。タクト?」
「ん?あぁすみません少し考え事を。じゃあ行きましょうか」
そんなことを考えていると、前のチームが入口の穴へと消えたのを確認したマリーが、書類を持ち入口に立つ担任にダンジョンへの挑戦を宣言する。
既に我等がCチームをのぞく4チーム12人が、ダンジョンへと入っていた。どうやら最後のチームになっていたようだ。
ここから先はモンスターが出るんですね。
2人が入って行った穴を間近で観察する。暗いではなく、黒い穴の中はもちろん目を凝らしても一寸先も見えない。
そんな穴の中に片足を入れた瞬間。フッとした浮遊感に襲われ、景色が一変した。
「あっやっと来たわね。」
浮遊感が消え、景色が宮殿から土に囲まれたダンジョンへと変わると、目の前で不機嫌そうにマリーが腕を組んでいた。
そんなに待たせていないと思うのですが……。
まぁこの班のリーダーはマリーですからね。彼女の指示に素直に従っておきましょう。
チームが決まった際、真っ先にマリーは自分こそがリーダーだと主張した。
おそらくこの中で最も輝度が高いというのが、理由でしょう。実際私もファロンも自分の輝度は言っていないものの120以上はかなり高い輝度であり、ファロンも否定しなかった事で彼女がリーダーとなる事が決まった。
周囲を見渡すと授業で話していた通り、このダンジョン内を照明のように照らす鉱石のおかげで、ダンジョン内は明るく視界が確保されている。
この鉱石を持って帰れれば便利なんですけどね。
どういう訳か、ダンジョンの外に持っていくとただの石になってしまうという他のラノベ小説でもあるような不思議鉱石なんですよねこれ。
まぁ外は科学ではなく魔法が発達しているので、そんなに不便はありませんが。
そして後ろには白い穴。つまりダンジョンの出口があり、もう一度ここに入れば外に出れるのだろう。
これも習った通りですね。
さっここからは初めてのダンジョンですからね。慎重に行きましょう。何せ今日はルファもリィス達もいないんです。
頼れるのはこの剛棒とファロン達だけですからね。まぁ輝度40台の私より弱いって事はないでしょう。
この演習は、5階層まで行って講師に証明書を貰い帰るだけ。魔法を使える彼らなら問題ないレベルに設定されているはずですからね。
ほへー凄い勢いですね。
マリーを先頭にマップを埋めながら進んでいく。このダンジョンに地図は持ち込み禁止ではあるが、多少は出回っており頭に入っている。マリーはどうやら過去に宝箱がでた部屋も寄ってから進んでいるようですね。
「紅蓮を走らせ!ファイアボルト!」
そしてモンスターが出現し暫くすると、少し長めの詠唱と共に赤い閃光が走る。
まぁ詠唱自体は決まった詠唱がある訳ではないですからね。自分にあった詠唱を決めて発動するのが一般的ですし。
私は少々こっぱずかしいので、魔法名だけですが……。
モンスターの群れ、大体2〜3体の中心に閃光が走ると一瞬で魔石を残して焼失する。
ファロンも苦笑いの中、マリー無双です。
私は結局一切何もせずに4階層まで来てしまいましたね。ここまではダンジョン特有の罠もありませんし、ホント散歩でもしているような気分です。
エンカウントしたのは、お馴染みゴブリンや初見のコボルト、ペルの素となったビックバットなどがメインでした。
群れを作るモンスターが多いのが特徴のダンジョンなのでしょうかね。
「見てくれタクト。ここだけ壁の感じが違うよ。」
ファロンが何かを見つけ声を上げる。見れば確かに僅かだが壁の感じが違う。
「隠し部屋よきっと!」
そして 2人を押し退けるように覗き込んできたマリーが 、壁を叩き確認し始めた。
「では確かめてみようか。マリーここを破壊してくれませんか?タクトもそれでいいよね。」
「ねん……」
「お安い御用よ!ちょっと離れてなさい……剛なる炎舞 ファイアボール!」
念の為報告をと言おうとしたこちらの返事を待たずに、マリーの杖の先から炎が広がり、それが球体上に凝縮する。
ドンッ
ファイアボールが壁に向かい放たれると質量を感じるような音を鳴らしファロンが指差した場所の壁が崩れた。
そして壁の先の真っ暗な空間に、自然の鉱石が照明のように照らしだし、光が漏れ4畳程の部屋が現れた。
「見て!まだ未発見の隠し部屋よ!」
「ちょっと待ってくださいマリー。危険すぎます。」
ぴょんぴょんと飛び跳ね興奮し、確認もしないまま部屋に入ろうとするマリーをファロンが止める。
確かに未発見という事、それに隠されていた事を考えるとファロンの言う通り、迂闊に入るのは危険でしょう。
「大丈夫よ。何があってもリーダーの私がついてるわ。それより見て見て宝箱よ!ほら言った通り宝箱見つけたじゃない。隠し部屋の宝箱なんて期待持てるじゃないの。」
「なっこんな宝箱見た事がない」
マリーの言う通り、4畳程の部屋の中央には他の木箱のような宝箱とは違う装飾の施された一回り大きな宝箱が台の上に置かれていた。
マリーだけでなく、先程まで慎重な行動をとっていたファロンまでもが宝箱に駆け寄るように部屋へと入っていく。
宝箱が豪華なのは、隠し部屋だから?いやいや違うでしょう
止めようと、先に足を踏み入れていたマリーとファロンの背を追い中へ入り 2人の肩に手を伸ばすと、先にマリーとファロンが宝箱に触れる。
その瞬間。ビカッと一瞬宝箱が光る。
「何これ?!」
そしてその宝箱を中心に部屋までダンジョンの入口のような漆黒の穴が広がり、その穴が3人を呑み込んだ。
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