おっさんの郷愁と久し振りの登校
「ふー。久しぶりにマンドレイクなんて食べたね。しかし庭の畑になるなんてやっぱりエルフの加護は強力だねえ。この弟子は色々とやってくれるもんだよ。」
師匠がお腹をポンっと叩きながら、テーブルのクッキーに手を伸ばす。
マンドレイクを収穫し、久しぶりに師匠を招待したのだ。
今は食後のお茶を楽しんでいる。リスのようにポリポリクッキーを食べる師匠。撫でたくなりますね。
おっとまた睨まれました。やはり顔に出ているんでしょうか?
それよりも、貴重な食材の礼だと食事を作ってくれた師匠に感謝です。
マンドレイクですか?ふろふき大根のような物に調理され、美味しかったですよ。
あとちょっとだけ前の世界の母親を思い出しました。元気にやっていますかね……。
「魔物なのは間違いないんですよね。魔石もしっかりありますし」
「あぁそうじゃ。魔力の多い森の奥に自生する事が多いのじゃ。魔力の濃い場所の植物が魔物化するとも、魔石が植物に近い属性を吸収して魔物化するとも言われておる。まぁ殆どが強力な魔物の餌になっておるがの。そういった環境にいる魔物は特に魔力量が多く危険じゃ。注意するんじゃぞ」
「わかりました。」
そう言った魔物は大体がそのテリトリー内にキングや王と呼ばれ、同族を従える強力な個体になっている事が多いらしく。
マンドレイクの影響で別進化を遂げているのだろうと教えてくれた。
今回食べたマンドレイクは、そう言った強力な魔力のもと生まれた物でなく、さらに皆で分け摂取量は少ないが、それでも若干魔力の最大値が増加した。師匠は久しぶりに増加したと喜んでいた。
師匠クラスになると、魔力の上限を増やすのも大変のようですね。
「むー」
魔石を手の平で転がしていると、ムーちゃんが肘を突つき魔石を植える動作の真似をする。
「えっ?魔石を植える?」
「む!」
そしてそこから芽が伸びる仕草をを繰り返した。
おぉ。かわいいですね。
「もしかして、またマンドレイクなる可能性がある?」
「む!」
何度も魔石を植え、芽が生える動作を繰り返していたムーちゃんが親指を立てる。
どうやら正解らしい。
定期的にマンドレイクが採れるようになるなんて、素晴らしいですね。
「ではお任せします。畑はさっきの3番目の畑を使って下さい。それとも増やした方がいい?」
「むー むー」
「分かりました。ではお願いします」
頭を撫で、 その小さな手に魔石を乗せると、ぎゅっと握りしめて足早に玄関から出て行く。
どうやら畑はそのままで良いらしく、首振って出て行ってしまった。
心無しか頬が薄っすらとピンクに染まっていた。
精霊にも感情があるんですかね。植物を育てているときは嬉しそうですし、きっとあるんでしょうね。
「それはそうとじゃ。ヌシよ。入学式以降、ワシに挨拶どころか、学校にも行ってないみたいじゃないか。明日から必修科目が始まるからね。絶対に行くんだよ。まぁ魔力の鍛錬は怠って無いようで安心したよ。せっかくの学生の身だ。うまく学園を利用しておくれ。」
入学式から1週間は各科目のオリエンテーションやら、体力や魔力の軽い基礎訓練のような予定が続き、家やお店の準備が忙しくたしかに登校する気にはなれなかった。
まぁ明日からは本格的な授業が始まりますからね。
「分かりました。」
「うむ。うむ。弟子は素直が一番じゃ」
了解すると、そのまま椅子の上に立ち胸を張る。
あぁ。クッキーの粉が床に落ちて……。
「ん。すまぬ……。じゃない!このくらい自分でやるわい。なんじゃその幼な子を見るような目は!全く我が弟子はなんと失礼なのじゃ。それ。取れたぞ。それではな明日は必ず授業を受けるんじゃぞ」
口のカスを拭いていたタオルをパっと奪い、乱暴に自分の口を拭いた師匠は、玄関に向かいながら再度授業について忠告し、そのまま迎えに来ていた馬車に乗り込んだ。
「はい。必ず」
学園都市に向かう馬車を見送りながら、手を振っていると横に並んで見送っていたルファが柔らかい笑みを浮かべていた。
「どうした?」
「タクト様とジーマ様は本当に仲がよろしく、信頼し合っているのですね。羨ましいです」
「そうだね。あの人がいなかったら私は1日すらこの世界で生きられなかったでしょうね。そう言った意味で命の恩人だし、母親と同じような信頼感を持ってるね」
「そうですか。母親のような……(よかった)」
「ん?何か言った?」
「い……いえ!では帰りましょうか」
なぜか嬉しそうな、ルファに手を引かれ家と帰る。
明日は久し振りに学校に行かなきゃですね。
さて、今日は1週間ぶりに学校です。
特進クラスとはいえ、流石にこれ以上休むのも気が引けますしね。必修課目も含め今後は授業出れるようにスケジューリングしないといけませんね。
この日は必修の歴史学、魔法学の日で、明日は地理学、社会学の日ですからね。
取り敢えずは、この2日は休まず出席しないと師匠にどやされます。
教室へ行くと、入学式以来の顔が一斉にこちらに視線を向ける。
流石に自由登校が認められている特進クラスなだけに、毎日誰かしらはいないらしいが、既に何人かの顔と名前がはっきりしない。
「ちょっとあなた!やっと来たわね。」
挨拶を交わしながら、自分の席に座ると真っ赤な髪を揺らしながら少女が歩み寄ってきた。
あぁたしかマリーさんです。
前回と同じような登場シーンですね……。
「1週間ぶりですね。おはようございます」
「あっ。おはよう。っじゃないわよ!あんたなんで授業にこないのよ!」
素晴らしいノリツッコミ有難うございます。しかしマリーは会う度に怒ってますね。
「すみません。家が決まったばかりで、忙しかったんですよ。何かありましたか?」
「ごめんなタクト。マリーは実技の授業でタクトに実力を見せるって張り切ってたんだけど、タクト授業に出ないだろ?それでさ。」
すかさずフォローを入れるあたり、やはりファロンはイケメンですね。
そう余計なことを考えている間にも、お怒りマリーは腕を組み何かを言いたそうにこちらを凝視している。
「ふんっいいわ。きょうの午後の実技で目にもの見せてやるわ!」
ビシっと指を指される。
ですが……
「あぁすみません。午後は帰ります。必修の授業はないですからね。」
今日の午後は予定があるんですよね……。
「むきーーーーーー」
地団駄を踏むマリーと苦笑いのファロン。
んー。これは少し毎度毎度だと面倒ですね。
今日授業が終わったらマリー対策をしときますか。
また更新が遅くなってしまいました。
在宅の方が忙しい……。
頑張りましょう。
チリも積まれば30万文字。
この小説は1話あたり2000〜3000文字で軽く読めるようにしています。
だからこそ早く更新しろよ!
なんですよね。これからも楽しみにお待ち下さい。
まだまだ在宅頑張りましょう。