おっさんの悲願と極上のモフモフをもとめて
初めてレビューを頂きました!
本当に嬉しいです。これからも頑張ります!
内覧を終え、日が落ち薄暗くなった外へと出ると、先程確認した結界石がネオンのように光を帯びその境界を主張していた。
そういえばスクロールのことを師匠にまだ聞いていませんでしたね。
そのまま家の裏手に周りながら追加で貰った結界石を確認するため、魔石布から取り出そうとすると、2本のスクロールに気付く。盗賊のアジトから取ってきたスクロールについて何の魔法が入っているか聞くの忘れてました。
「キッ!」
2本のスクロールを取り出し戻る事を伝えると、家の裏、その先の森の奥に視線を向けたペルが警戒の声を上げる。
次の瞬間枝の折れる音と落ち葉の踏み荒らされる音と共に、森の奥から牛のような巨体が飛び出した。
ゴォン!
巨体が結界石と結界石を結ぶ、結界の線上に足を踏み入れると轟音と共にその突進が止まり、結界に触れた2本の巨大な牙が姿を現した。
ワイルドボア
そう。ルファの高級ブラシの毛の材料となったボアです。
その身は食用で食べられるビッグボアやフォレストボアとは違い、筋肉質で硬いため食用には向かない。主にその針金のような硬い毛皮と牙が特徴の猪型の魔物で、正直危険度の割に肉が売れないのでうまみが少ない魔物です。
そんなワイルドボアの強烈な突進が結界に阻まれる。
「成程。結界石が安全なのは保障されましたね。」
「そうですね。あれなら安心できますね」
久しぶりの人の気配に興奮しているのでしょうか。何故か何度も結界に突進を繰り返すワイルドボアのお陰で、計らずしも結界の強度が証明されました。
これでみんなも安心して生活できるでしょう。
家の裏に向かい何度も突進を繰り返していたワイルドボアが横目で、こちらの存在に気付くとゆっくりと向きを変え、ヨダレを垂らしながらこちらへと歩を進める。
「タクト様!」
守るように前に出たルファの肩に手を置き、そのまま横へと立たせる。
「えっ?」
「大丈夫。ほら」
視線の先には既に臨戦態勢のリィスとペルの姿があった。
「いくよー」
「キキッ!」
既に正面に立ち、前脚で土を掻き力を蓄えるワイルドボアに恐れる事なくリィスが跳ねる。
『渦玉〜』
リィスの目の前に水の渦が現れ、その回転を内に閉じ込めながら球状にその形を変える。
リィスの水生成のオリジナル技の一つで、その回転力で木の幹を粉砕するほどの衝撃を与える。
球体が完成すると同時に、ドンっという音とともに放たれると、ワイルドボアの額に衝撃音と共に命中しその脚を止める。
「ブモォー!」
グラつく脚をを踏ん張りながら、気合いを入れ直すように吠えるワイルドボアの声が響くと、その首筋の小さな傷跡から血が滴り落ちる。
「ブモォ」
そして弱々しく鳴き声をあげる。
間違いなくペルですね。使ったのは潜伏からの消音飛行にとどめの毒牙といったところでしょうか。
さすがはリィスとペルですね。良い連携です。
『ダークボール』
『影帯』
頭部への衝撃と、毒の効果で勢いをなくしたワイルドボアを更に闇属性の魔法で追撃し、キュリが拘束する。
「マスタ。とどめ」
そう。たしかに滾っていた。滾る理由が目の前にいるから。
その証拠に既に背中から剛棒を外し、いつでも出れるようにと剛棒を握りしめていた。
それがわかっていたのか、キュリが拘束したワイルドボアと私に交互に視線を向ける。
体を半身にし、剛棒を構える。
拘束されたワイルドボアが叫び声をあげるが、抜け出せず苛立ちを募らせる。
そしてそのままリィスが濡らした額の中心部に剛棒で突きを放つ。
「ピギィ……」
小さく苦悶の声を漏らし、グラリと揺れたワイルドボアの拘束をキュリが解く。
するとその巨体がそのまま崩れ落ち、その目から光が失われた。
「よし」
「もー!よしじゃないです。タクト様!危ないじゃないですか!」
ルファが尾を震わせながら目を釣り上げながら抗議する。
どうやら急にやる気を出して前に出た事に怒っているみたいです。
「マスター。とれたー」
そんな中、容積変化で大きくなったリィスが目的の物を運んでくる。
「これは?」
「ルファさん」
「へ?はい。」
「これはなんですか?」
「えっと…ワイルドボアの毛皮……です」
そう。今回の魔物がワイルドボアとわかった瞬間。『念思』でリィスに指示を出した。傷付けるのは最小限にして仕留めて欲しいと。
その指示を受け取り、リィスがペルとキュリに瞬時に指示を伝えほとんど傷付ける事がないように衝撃を与え、毒で弱らせ拘束し、こちらにとどめを任せてくれたのです。ちなみにルファを下げたのは彼女は燃やすか斬るかの選択なので、手出し無用という事で、今回は見学です。
そして、目の前にはリィスが体内へと入り毛皮以外を溶かしたワイルドボア丸々一頭分の綺麗な毛皮と牙そして魔石。
「ありがとう。リィス」
毛皮を受け取り、小さくなったリィスの頭を撫でる。
「おー。やっぱり本にあった通りですね。ふふふ。これで最高のブラシが作れます。」
その感触を確かめるように毛皮を撫でる。生前と違い魔力の通っていないその毛は針金のような硬さから程よい芯のある硬さになり、そして部位によってその質感が全く違っていた。
そう。今使っているワイルドボアとクラッシュホースの毛を使った3万トールの最高級ブラシだけでなく。実はワイルドボアの部位ごとの違う毛だけで作った超高級ブラシが存在する。
ただし、希少な毛の部位があるだけに丸々一頭綺麗に取らないといけないが、このワイルドボアは冒険者にとっては直接の依頼がない限り、実入りの少ない討伐報酬と魔石の売却頼みの魔物。とにかく倒す事を優先する為毛皮はボロボロで結局使い物にならない。
だから希少部位の毛が入る事はまずなく、ワイルドボアと馬の毛のように混毛のブラシが流通している。
しかし!
ルファの毛並みがもっと美しくなるブラシがあるならば、入手しない手はないのです。
この世界には猫カフェも犬カフェもないですからね。私の趣味的な楽しみはルファへのブラッシングだけなのですよ。いわばワイルドボア100%のブラシはモフラーの悲願
だからこそ、ワイルドボアを見た瞬間。是が非でも手に入れたかったわけです。
「えっと……タクト様?」
「さぁ学園都市に戻りましょう。早く職人さんに会いたいですからね」
スクロール?そんな物は後回しです。
モフモフが絡むと性格が変わるおっさん……
いつもありがとうございます。
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