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閑話:おっさんの仕立て屋 前編

 服飾屋 『夜の蝶パピオン』


 私はそこの店長サンドラ。

 みんなからはサンドラお姉さん。なんて呼ばれてるの。


 カラン


 扉が開く音と共にドアベルの音がなった。


 この時間は遅くまで働いていた仔猫ちゃん達が、新しい衣装を選びにやってくる。みんな常連の可愛い仔猫ちゃん。


 だからすぐに分かったわ。その声が新しい仔猫ちゃんだってこと。


「こんばんわー……」


 入口から遠慮しがちに入ってくる男の子。


「はぁい〜。ちょ〜っと待ってねん」


 作業の手を止めて応えてあげると一瞬ビクッとなって引き返そうと背を向ける。まったく失礼しちゃうわ。


 逃がさないわよ!


「大丈夫でっすぃっ!」


「っと。な〜に帰ろうとしてんのよ。あら可愛らしいお顔ね。いらっしゃいませ〜。夜の蝶パピオンへようこそ〜。どうしたの〜。」


 奥からタンっと華麗にステップを踏んで首襟を捕まえる。でっすぃって何かしら?


 ふふふ。この華麗なステップなら店の奥から一瞬で仔猫ちゃんの元へいけるわん。勿論商品の服は揺らさずに……それがプロよ。


 仔猫ちゃんの視線が私の胸から顔に……。いやん!スケベなんだから!


 んっ?もう。なに死んだ魚のような目してんのよ!


「ちょっとー。何走馬灯見てるような顔してるのよ!失礼しちゃうわん。ここの店長のサンドラよ。サンドラお姉ちゃんってよんでねん」


 自己紹介をしてかるーくウインク。可愛い子にはアピールも忘れない。


「は…い…。サンドラさ…オネエさん」


「あん?なんか違う気がするけど。まぁいいわ。あなたタクトちゃんでしょ?ニイナ姉さんの所の。」


 そう。この男の子はタクトちゃん。ニイナ姉さんの所に現れた不思議な男の子。


 黒髪に黒眼実年齢よりも幼く見えるその顔は、まさに怯えている仔猫ちゃん。キュンってしちゃう。


 でもこの子考えている事がダダ漏れね……。誰よオネエさんって……


 私が知っていることを告げると、スッと顔の緊張が抜ける。どうやら少し落ち着いたようね。


「はい。タクトと言います。あの〜サンドラオネエさん。おろして貰っても?」


「あら。よいしょ。ごめんさいね。ニイナ姉さんから可愛い子がいるって聞いてたのに、あなた。なかなか来てくれないんだもの。ちょ〜と興奮しちゃった。でもすぐ分かっちゃった。うふ。」


 そう言って襟を捕まえて宙に浮いていたタクトちゃんを下ろして、指で額をちょんと優しくつつく。


 予想以上に頭が後ろにガクンってなったけど、大丈夫大丈夫。


 そんなタクトちゃんにここにきた理由を聞く。この時間に来るなんて余程の事情がありそうね。


 するとバッグからおもむろにビッグバットの生地を取り出し、事情を説明し始めた。


 どうやら魔法を使う小さな女の子の為にローブ作って欲しいらしい。でも半分本当で半分嘘ね。いや……嘘と言うより誤魔化しているって感じかしら。


 その子に何かあった?んーでもそういう焦りじゃないのよね。


 それよりも……。


「あら。スキル持ちの生地ねん。それに継ぎ目のないこの形。随分と腕のいい錬金術師の物なのね。これを私好みにしていいのねん。」


 ちょちょちょ。ちょっとなによこの生地⁈


 冷静になるのよ!わたし!タクトちゃん分かってるの?この生地の異常さ!ビックバットの飛膜を何枚使えばこんな生地になると思っているの?腕の良い錬金術師?そんな馬鹿なことあるかい!こんな継ぎ目もなく魔力の宿った生地作れるわきゃねぇだろ!


 ……っと冷静に冷静に乙女がはしたない言葉は使わない。ふー。


 でも何よこんな生地を持って来られたら興奮が止まらない。あぁ!素敵なローブに仕立ててあげたい!早く早く!


 その前に不思議そうな顔をするタクトちゃんの疑問に答えてあげる。


「経験よ。姉さんの言った通りね。顔に全部書いてあるわよ。ただ肝心な所は隠してる。そんな感じね。ふふっ。いいわ〜その感じ。ふふ。冗談よ。任されたわ。こんな素敵な生地を持ってきてくれたんだもの。あなたの小さなハニーに似合うようにしてあ・げ・る。」


「有難うございます。どのくらい……」


 どのくらい待てばよいか聞こうとしてくるタクトちゃんのお口をチャック。


「野暮な事。聞かないの」


 あぁ早く早く作りたい。作るわよ。いくわよ。


「はっ!!」


 ふー。


 完成。もぅ。ちょっと低めの声が漏れちゃったじゃない。でも会心の出来ね。


「はい。完成よ。」


 あなたの小さな恋人に、最高のローブをプレゼント。


「すごいですね。可愛いです。」


 喜ぶ顔がまた可愛い。


 そんなタクトちゃんに、ローブの説明をする。

 自分でも驚きの効果……。宿っていた魔力もきっちりスキル化出来たし大満足ね。


「ありがとうございます。」


 満足してくれたようで、満面の笑みを向けるタクトちゃん。


「あらいい笑顔ね。毎度あり。また来てね」


 最後にもう一度。また来てねのウィンクをプレゼント。


 ここは『夜の蝶 パピオン』迷える仔猫ちゃんを可愛く飾る女の楽園。


 また来てねん。今度はハニーも一緒にね。



 

アクセス有難うございます。

3章に行く前にサンドラネエさんのお話しです。


これからも応援よろしくお願いします!


もし面白い、続きが気になると思って頂ければブックマーク、評価頂けると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] テンポが良くて、話も読みやすい。 あえて言えば『閑話』が少し多いな(笑) ってくらいかな(*´ー`*) 本編が面白いからこその閑話かぁ~的な?(笑) これからも頑張って下さい。
[良い点] 閑話で100話おめでとーw
[一言] 100話おめでとうございます! 100話に近づくにつれ、日々遅くなる更新… やっと来た100話がどうでも良さそうな閑話で… 最高です。
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