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カインの使者  作者: 天野 了
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「最後の別れ」

志門とミカ、地上に残された理乃、蘭人との最後の別れの後、アベル(地上人)の攻撃が始まる。船を動かすためにミカは船の命になるための交感回路である霊子回路が身体に彫り込まれることになる。作業が始まるまでの8時間、二人はお互いを求めあう。この時、新しい命がミカの体内に宿った。


約2日掛けて船、ループストライカー84号機はアベルの攻撃の最中に霊子次元へと飛び立つ。船は損傷を受けながらも、目的地“ポイント ゼロ”へと向かう。が、船の航法システムそのものであるミカの寿命が尽きてしまう。

必死で船のコントロールを試みる志門だったが状況は悪くなる一方だった。そんな中で志門は不思議なものを見る。息絶えたはずのミカが半身を起こし、必ず助けると言う。


「絶対………私を産んでね、お父さん―――」


その言葉で志門はミカの体内に残った新しい命だと悟る。船はその命に導かれ目的地へ到達する―――


第九章 「最後の別れ」



 結婚後、ミカと志門は一つの部屋で寝泊まりするようになった。「生活」という言葉が当てはまらないほど身の回りのことはボディーコーティングと腕のブレスレットが自動で行っているため志門とミカは始終ミッションの事について話していた。志門はミカのサポートの介もあって訓練で高い成果を出すようになっていた。


そんな中、志門は一つだけ心の中で気になることがあった。此処へ来て既に地球時間で半年が経とうとしている。地上にある自分の家や大学、従姉の理乃や叔父さんや叔母さん、そして友人の蘭人―――その思いは日増しに強くなっていた。


 志門はその日の訓練を終えるとミカと一緒に本部へ趣いた。二人はマグダレネに地球に居る知り合いに最後の別れを伝えたいと申し出た。

 マグダレネは暫く考えた。この段階で万一の事が起きれば計画そのものが水泡に帰すどころか人類に対するハァシュタンの支配を助長させる結果になる。


この件についてはドバルカイン最高評議会ケルブとセラフィム及びレビの律法義委員の裁定が必要であったが上申すれば間違いなく許可は得られないのは明白だった。


 マグダレネはこの事を秘密裏に行うことを決めた。その為ドバルカイン最高法廷サンヘドリンのチーフテンであるエステル・ランスと非公式な形で折衝を行った。探査計画の日々の進展についてはクライシストから評議会への報告はサンヘドリンを通して行われるからだった。


 この結果がミカに伝わったのは二週間後だった。二人の部屋に訪れたマグダレネは条件付きで許可を与えた。


 「地上で会うのはアベル理乃と蘭人に限る、滞在時間は1ホーラ以内。超過は認めない、軌道上の亜空間に船を待機させサンヘドリンの護衛の武装憲兵を二名同行させる。

 会話の内容は極めて制限が掛かる。カインの所在の関連事項と本計画の関連事項は絶対黙秘する事。話して良いのは地上であった事柄だけでミカについてもカインの関連事項と同等とし、話さないこと―――君たちはこれを守れるか?」

 「お互いの命に賭けてこれを守ります」と二人は誓った。


 翌日ループストライカーの操縦訓練の名目で訓練を行い、その後地球の軌道に船を忍び込ませた二人はサンヘドリンの護衛二人を伴って志門の家へ空間転移した。同行した護衛の武装憲兵は以前志門とミカをカインへ連行した女性だった。

 志門は二人を二階の自分の部屋で待ってもらうよう頼んだ.。


 「ここから先は僕たち二人で行きます、ここで待っていてください」

 「私たちは君たちの傍にいて監視し保護するように言われている」


ミカが志門の前に出て言った。

 「本来、ドバルカインと私たちの存在自体が機密事項なんだ、私に加えて更に二人を地上の者と会わせるのは良くない………大丈夫だ、制限事項は守る」


 サンヘドリンの二人は暫く顔を見合わせていたが相槌を打つと許可した。

 「こちらのクロスライザーを開いておく、何かあったら部屋に踏み込む。それで良いか?」

 志門は頭を下げ一礼すると下に降りる前に二人に名前を尋ねた。


 「私たちの名前がそれほど重要なことだろうか?」

 「こうして一緒に来てくれて最後に無理を聞いてくれたことを僕は自分の思いに留めておきたいんだ」

 「そうか……以前君には酷い扱いをした、許してほしい。私はクライシストの専属護衛隊長のリベカ、こっちはサライだ―――行けっ‼ 時間を無駄にするな」

 「ありがとう、お姉さんたち」そう言うと志門とミカは一階へ下りた。廊下へ踏み込んだ時、玄関の鍵が開く音がし次いで引き戸がガララッと音を立てて開いた。


 そこに立っていたのは理乃だった。


一瞬驚いた表情で固まっていたが志門だと分かると静かに戸を閉め走り寄った。理乃は爪が食い込むほど志門の肩を掴みガクンガクンと揺すった。彼女は何も声にしなかったが大粒の涙がこぼれていた。志門は理乃を落ち着かせるためリビングのソファーに座らせた。


 理乃は少し落ち着くと志門とミカの方へ目をやった。

 「志門、その金属のタイツみたいな服は…」

 「理乃、ごめん。時間がないんだ………今日はお別れに来た、急いでラントを呼んでくれないかな」

 そう聞くと理乃は携帯で蘭人にメールを送った。携帯を畳むと理乃は向き直って叫んだ。

 「志門、バカッ‼ 皆がどれだけ心配したと思ってるの。お父さんやお母さんだって…………もう戻って来ないんじゃないかって……」理乃は涙声で言った。


 「理乃、僕は大学では除籍になってると思う。家も叔父さんに処分してもらって………理乃、僕はミカと結婚したんだ、この娘と一緒に遠いところへ行く。もう二度と………会えないんだ」

 「何、それ? …訳分からない、もう―――頭の中がグチャグチャで理解できない」


するとミカが理乃の肩に手を置き慰めた。

 「私も理乃と別れるのが辛い、私はここで理乃から親切にされ自分を理解してもらった。私は理乃のことを思いに留めよう、絶対忘れないから………」


 ミカが話している途中で玄関の戸が勢いよく開く音がし廊下をドタドタ走る音が聞こえた。部屋のドアがバンッと開かれ蘭人が現れた。

 「志門‼ テメェ、このっ―――」

 「ラント、声が大きい、静かにっ‼ 人が来る」


 蘭人は拳を大きく振りかぶって志門の顔の前で寸止めすると拳を頬に当ててグリグリと回した。

 「ヒテテッ………止めろよ、ラント」

 「テメェ、どれだけ人が心配したか分かってるのか‼ オラオラァッ」


 ひとまず落ち着くと四人はソファーに腰を降ろした。

理乃も蘭人も志門とミカのいでたちを見てこれから話される内容が普通とはかけ離れた事と思っていた。が、志門とミカは制限事項に関しては一切口にしなかった。ただ、二人は結婚した事と今日が最後の別れになることを告げた。


理乃と蘭人は最初、どこか遠い外国へ行く程度にしか思わなかったが志門が涙を零しながら別れを告げる姿を見てそれが場所を移すことではなく本当に二度と会えない別れであることを悟った。

 理乃は部屋のクローゼットを開けると綺麗にクリーニングされた服を取り出した。それは皆で旅行へ行ったときに理乃がミカに貸していたものだった。

 「あなたがいつでもそれを着れるようにクリーニングをして仕舞っておいたの…これはミカにあげる」

 「ありがとう理乃、大切にする…………理乃の気持ちも私の思いの中で生き続けるんだ」


 傍らにいた蘭人は志門に言った。

 「志門、今ここでこんなことを言っていいのか分からないけど………いや、今だから言わせてくれ。

お前とミカさんがいなくなってから何処で何があったのか、そんなことはいいんだ。オレはミカさんが好きだった、ミカさんの奴隷になることさえ誓った。だから絶対にミカさんを幸せにしてくれ。オレという奴隷の主人であるミカさんがお前を選んだんだ―――ミカさんが泣くようなことをしたら許さないぞ」


 それを聞いていたミカは蘭人の前に出てこう言った。

 「ラント、今までありがとう。君の私への忠節は忘れない…………今日で奴隷の契約は解除だ。ラント、もう私に縛られる必要はないんだよ」

 「オレは言った………ミカさんがここを去って尚永遠に、って……そう言ったんだ」蘭人は俯いたまま体を震わせながら泣いていた。


 ミカは近づくと蘭人の手を自分の手で優しく包み込みこう言った。

 「私は奴隷の主人として何も与えずにラントを去らせる訳にはいかない」

ミカはそう言うと志門の方を向いて許可を求めてこう言った。

 「志門、彼とはもう会えなくなる。この場限り、少しだけ私を彼に分け与えてもいいだろうか?」


 志門はミカの要望に目を閉じて頷いた。志門にはミカが蘭人にどの様にしてあげたいか分かっていた、そして背中を向け視線を逸らした。

 ミカは蘭人の方に向き直ると首に両手を回し彼の頭を自分の胸で受けた。


 「ラント、君が私に求めていたことはこの様なことだろう………これで許してくれ、全部はあげられないけど…」

 蘭人はしばらくミカに抱かれたまま泣いていた。


理乃は二人に近づくとミカの手を解き蘭人を離した。

 「ミカ、ラントは変態だから……いつまでもそんなことしちゃダメ」

理乃は泣きながら少しだけ笑みを浮かべてミカに忠告した。



 1ホーラは瞬く間に過ぎようとしていた。志門は理乃と蘭人の手を握り締めて最後の別れを言った。

 「僕はここで過ごしてきた時間と皆のことを絶対に忘れない。理乃、叔父さんたちに今までありがとうって必ず伝えてね。

 ラント、お前のことも忘れないからな―――親友」


 ミカは志門の腕を取ってリベカたちが待つ部屋に戻るよう促した。

 「二人とも………ありがとう、さようなら」と志門。


 ミカは理乃と蘭人に後を追わないように言った。

 「皆、付いて来てはダメだ、別れが辛い………理乃、ラント、ありがとう。いつまでも元気で」

 志門とミカはリベカたちのいる部屋に戻ると号泣した。しかし転送と同時だったためその声が下にいる二人に聞こえることはなかった。



 暫くして理乃と蘭人は二階へ上がり志門とミカが入った部屋の戸を開いた。志門が私室として使っていたその部屋には静寂が漂い、そして誰も居なかった。


  「二人はどこへ行ったんだろう………」と蘭人が呟くように言うと理乃がそれに答えて言った。


 「私たちが想像もできない…………遠いところ…」




 ループストライカーに戻った志門とミカとリベカたちは直ちに現在の軌道から離脱し地表から距離を置いた。

その際、ミカが操縦する傍らで志門の目に異様なものが映った。青く輝く地平線上の軌道に巨大な構造物が浮いているのが見え、志門は最初それが宇宙ステーションだと思ったがどう見ても規模が違い過ぎた。

 「ミカ、あれは何だ? ドバルカインの物なのか」

 ミカは横目で視認するとこう言った。

 「ハァシュタンに加担するアベルたちの船だ。あれで私たちの都市セイルを攻撃するつもりなんだ」

 「そんなっ⁉ いつ頃からあんな物を―――」志門が言い終わる前にアラートが鳴動した。


 ミカの髪の毛が逆立ち顔面が蒼白になった。そして叫んだ。

 「アベルの―――あの船の電測システムに捉えられている‼ バカなっ…船が揺れる、皆しっかり摑まってろ! ループストライクに入る余裕がないっ」


 この時初めて志門は船が揺れるのを感じた。船はガクンと大きく右側に傾斜すると同時に凄まじいスピードで移動した。この時、船内の重力制御が追い付かないのか志門とリベカたちは床に張り付いて身動きができなかった。床に伏す志門が見たのは左側に反れていく何本もの光の筋だった。

 途中、航法をループストライクに切り替えたミカは一気にドバルカインの都市セイルまでジャンプした。



 ループストライカーの動きをモニターしていたクライシスト本部は既に大騒ぎになっていた。格納ドームには緊急事態に対応するために様々な機械が急いで配置された。

そんな中ドーム内に船はループオンし着地した。ループストライカーは直ちに細かな点検作業が開始され、志門たち四人は別の憲兵に連行されサンヘドリンの本部へ向かった。


 そこにはサンヘドリンのチーフテン、エステル・ランスの他、クライシスト本部の要職にある顔ぶれが揃っていた。マグダレネとルーファ、そしてロタの三人だった。


 エステルが言った。

 「攻撃されたのは予想外だったな。この事は評議会に伝わっている………人柱が立つかもしれんな」

 マグダレネは腕を組んだまま目を瞑っていたが顔を上げると次のように言った。


 「その役、私が引き受ける、全て私の勝手でやったことだ。エステル、サンヘドリンには迷惑は掛けない、むしろ今回の計画を伏せておいてくれたことに感謝している」

 そこへルーファとロタの二人が詰め寄った。そして先ずロタが言った。

 「私は予告者の仕事柄、人の意見に左右されることはない。全て『ヤーワァ』の意志と導きとをもって答えを出している………マーナ、何で私やルーファに相談してくれなかったんだ」

 「そうだ、私たちは評議会の頭の硬い年寄りたちとは違うし職場の仲間内じゃないか。今回のことは連帯責任として私の名前を挙げても良い」とルーファ。


 志門たちは何のことかよく分からなかったが今回の地上帰還はマグダレネが仕組んだものというのが何となく理解できた。


 格納ドームから呼び出しがありエステルが受けた。

 「私だ、ウムッ………そうか、ご苦労だった。こちらでマグダレネに伝えておく」

 「何か?」とマグダレネはエステルに問うた。

  「良い知らせ、と言って良いのかなぁ………評議会はマグダレネを裁いている暇は無くなった、という事だ。恐らくな………私たちも忙しくなる。

さっき格納ドームの守衛監視室から連絡があった。クライシストの技術班がループストライカーのシステムレコードを解析しているのだが―――霊子シグナル、アベルの電測システムを無効化させるはずの霊子信号が変質させられた疑いがあるらしい」


 マグダレネはカッと目を大きく開くと拳で壁を叩いた。

 「アベルは霊子ジャマ―のようなものを既に開発しているんだ。クソッ‼」


 エステルはクライシストの三人と志門とミカに直ちに本部へ帰るよう促した。

 「評議会に対しては私が上手く調整しておく。三人とも予定を早めてくれ。」

 「済まない、エステル」

 マグダレネはそう言い、クライシストに属する者は皆本部へ転送された。



 本部に戻ったルーファとロタは直ぐに自分の部署に走った。マグダレネはミカに背を向けたまま次の指示を出した。

 「ミカ、リマスターの準備としてあなたの体に霊子回路を施す。8ホーラ後だ、施術が完了次第リマスターに入る。それまでメサイヤは待機!」

 情報が忙しく往来する中マグダレネはゆっくり振り返ると志門にこう言った。

 「ミカを……抱いてあげて」と確かにそう言った。


 それを聞いた志門は周りの騒音が一瞬消え自分の時間が止まったような錯覚に陥った。


 「急げ、志門。私たちは自分たちが出来ることをしよう!」

 ミカは志門の腕を取って引っ張った。

 「⁉ ミカ…」

 志門は我に返りミカと共に自分たちの部屋へ飛んだ。その後も志門は先の異様な感覚について考えていた。

 (あれは自分に於いて何かを示唆していたんだろうか………とても重要な何かを…)


 志門は最後にマグダレネが何を言ったのかミカに尋ねた。

 「こっちを振り向いたとき、か? 周りが騒がしくて私には何も聞こえなかったしチーフも口は動いてなかったと思う」

 「そんなはずはないっ、確かにマグダレネさんは言ったんだ。その後周りの音や声が急に聞こえなくなったんだ」


 ミカは腰に手を当てて俯くと暫く考えて志門に答えた。

 「何かを示唆している、感じだ。志門、これは頻繁ではないがよくある事象なんだ。前もって何かを知らせている。いい意味でもそうでなくても……ところでチーフは志門に何て言った?」

 志門は言うのに少し抵抗を感じながらあった通りのことをミカに話した。志門はミカと結婚はしたが過密な訓練スケジュールをこなす中で男性、女性としての交渉は未だなかった。


 「そうだったのか……『ヤーワァ』の霊が後押ししてくれたのかもしれない。私もそうしたい………実はそう思っていた。あと8ホーラ後に私は体全体に霊子回路を彫り込まれる………体の色は茶褐色になってリマスターが終わると私の意識は船に移されるんだ。私の肉体は船のパーソナルディバイスとしてコックピットの壁に収納されて―――志門は私と部屋の中で出会ったときもう一人居たのを覚えているだろう」

 「確か事故で跡形もなく消滅した、あの子か? 名前は確か――」

 「エルシャナ、私のパートナーだった。メサイヤは二人一組で造られてそのどちらかが船になるんだ。人の体を持つメサイヤ……そう、私は、実は予備なんだ。私は―――」


 志門は人差し指をミカの口元に当て言葉を制した。


 「ミカの気持ち、分かってる………君がその姿でいる間にすべてを愛したい」


 志門はミカを引き寄せ肩に手を回した。

 「志門、あなたを慕っている………あなたは私の帰るところだ……」

「僕もだ……ミカに逢うための8年間だった。僕も君に帰る……」


「あなたは私のために……私もあなたのために―――与えよう……」と、ミカは静かにそう言った。


二人はどちらが促すわけでもなくボディーコーティングの金属膜をブレスレットの中に収納させるとそれを外してテーブルの上に置いた。


何も纏わない二人は向き合った。


 「ミカ…」

「志門……」

志門とミカは引かれ合うように抱き合うと同時にこう言った。


「ひとつになりたい―――」



一方クライシスト本部では計画を大幅に前倒しで行おうとしていた。

リマスターのために既に都市機能と個人における生命維持システム、各人が装着しているブレスレットの霊子エネルギーさえもループストライカーのエネルギー蓄積へ回され始めていた。

 その為、作業を行っている者に体調不良を訴える者が続出した。体に必要な栄養分も経口摂取しなければならず排泄のための場所も応急的に設置された。多くの者が機能しなくなったボディーコーティングを脱ぎブレスレットを外し、代わりに貫頭衣の様なものを羽織った。


 評議会からマグダレネに対しては今回の地上帰還の件について問い質されることはなく、ただ速やかに計画を続行せよ、というのみであった。

 サンヘドリンのチーフテン、エステルは都市に戒厳令を敷き計画外の部署の者については出来るだけ動かずエネルギーの消耗を抑えるよう通達を出した。また対アベル戦闘に備え戦闘部隊であるレギオンを都市セイルの各所に配置した。が十分な霊子エネルギーが供給されない中では、まともに稼働できるものは極めて限られていた。


 クライシスト本部でレギオンの鈍重な配置を見ていたルーファはマグダレネに呟いた。

 「見ろ、あれを‼ 真面に動かないぞ――只のゴミ以下だ」

 「そう言うな、エステルの奴も必死なんだ。それに内の兵器は正面から向かって行って戦うような性格の物じゃない。相手に戦わせない為の兵器だ、本来ならループストライカー一隻でアベルの―――地上の全ての戦闘システムを無効化することも出来ると思っていた。

だが今回ループストライカーが攻撃を受けたことで状況が変わった………8年の間でアベルは奴らなりに進歩していたんだ。

 ドバルカインは霊子技術という一点でアベルの科学を凌駕していた。しかし、あまり正直には言いたくないのだが――――霊子エネルギーを用いない自動機械の技術で我々は負けている」


 ルーファは額に手を当てて次のように言った。

 「我々には闘う術がない………『カインの剣』も “無 ”のサイトを開くための鍵として持って行かねばならないしな………奴らはいつ攻撃してくるだろうか?」

 「来るとすれば完全に都市のエネルギーが無くなった後、ループストライカーがエネルギーを蓄積して発進する前か………若しくは飛び立った後だ」




 志門とミカの部屋で二人は寄り添ったまま寝ていた。エネルギーをループストライカーへ回しているため環境調整用のエネルギーが安定しないのか部屋の温度は少しずつ下がり始めていた。

志門は肌寒さで目を覚ました。横でミカが安らかな寝顔で寝ている。志門はミカを抱き寄せると頭と背中を撫でてやった。

 (夢じゃない………彼女は自分の腕の中にいる)

 暫くしてミカは目を開けた。

 「ごめん、寒いと思って…起こしちゃったかな?」

 「………」

 「どうしたの?」

 ミカは横たわったまま志門の首に手を回すと引き寄せて「志門……」と一言つぶやいた。

自然二人は唇を合わせた。

 「………もっと私をあげたい」

 志門はミカの胸に顔を沈め、最初自分の部屋で出会った時のことを思い出していた。


 (僕はあのとき出逢った娘と―――ミカとこうしている)


 志門はミカへ自分の全ての思いを彼女の中へ出した。



 予定時間が迫っていた。

二人はブレスレットを着けずその代わりにミカは理乃から譲り受けた服、志門はここへ来た時の服を着た。それは志門の元に返されていた。

二人は自ら本部へ赴いた。指令センターでマグダレネは二人を迎えると志門にこう言った。

 「志門君、最後の時間をミカと悔いの残らないように過ごせた?」

 「‼ ―――はいっ」

 「ミカは?」とマグダレネは聞いた。ミカはこのとき自分たちが部屋へ帰る前にマグダレネが志門に伝えていたことが事実だったと悟った。


 ミカの気持ちを察したマグダレネは次のように説明した。

 「律法義委員のロタが予告していたの。貴方たちは一つになるって」

 「私にはあの時チーフが何か言った様には見えなかった」とミカ。


 マグダレネは志門の後ろに回って肩に手を添えミカの方を見て言った。

 「私たち女性の頭は本来男性―――ミカを連れていくのが志門君に与えられた役目なの。『ヤーワァ』の思いは志門君に強く向いていたのね…」


 リマスターの推進監視部門から連絡が入りマグダレネはそれを受けた。ミカの身体への霊子回路の施術とループストライカーとの霊子接続交換の準備が整ったことが報告された。


 「ミカ、志門君と………その体で会うのは最後になる」


マグダレネは背を向けると体が小刻みに震わせた。マグダレネはミカと志門のことを何れ来る来門との別れと重ねて思った。


 ミカは最後に志門と強く抱き合うと唇を重ねた。そして施術室へ転送された。志門は指令センターに残された。


 その後、ルーファが指令センターに戻りマグダレネと共に志門に口頭で最後のレクチャーを行った。


最初にマグダレネが志門に話した。

 「志門君が行わなければならないことはループストライカーの航法制御システム、つまりメインシステムであるミカの意識が失われた後、正確に目的地 “無 ”のサイトがあると思われるところまで船を移動させ『カインの剣』によってそのサイトを開き、その中にループストライカーを突入させて爆散させること―――船には一つの宇宙を形成させるほどの霊子エネルギーを蓄積している………これは君とミカの(思い)なのよ」


 次にルーファが細かな指示を志門に伝えた。

 「実際に限りなく “無 ”に近いものを捉えるには “在る ”側から探そうとすれば不可能に近い。それを可能に出来るのが『カインの剣』だ。

近年まで武器として考えられ保存されてきたがその本当の存在理由はこの日のためにあった………『カインの剣』の刃の先端の “無限小 ”がこの世界を見つけ開く鍵なんだ。

 『カインの剣』は原子界側から振るえば時空に無数の傷と分断を残す。前に君にも言ったが………パラレルサイト発生の理由だと私は今、そう確信している。

 逆に霊子界側からこの “無 ”に対して剣を振るえば爆発的な時空の拡大と結合を起こす――――無と実在の位相の反転だ。だがこれだけでは意味のない時間と空間でしかない………そこに意味を付すのが志門君、君の役目だ。私は前に言ったよね、君とミカの喧嘩の後、良い世界を創ってくれ―――とね」


 ルーファは志門の両肩に手を添え向き合うと志門を見つめた。志門にはクロスライザーを介してルーファの大きな期待が伝わってきた。志門はその気持ちを言葉にして彼女に返した。

 「私たちの全ては貴方に託された――――ですか?」


 ルーファは微笑んで頷くと志門の頭を撫でながらこう言った。


 「良い青年…」




 それからどれくらい時間が経過しただろうか………数十時間、ここの時間単位では36ホーラ位か。ミカの霊子交換は今も続いている、マグダレネの話ではこの作業は通常の計画段階でも数か月を要し急ぎ過ぎるとメサイヤ、つまりミカの魂がもたない、との事だった。


 更に時間を重ねた。

志門は自分の中にパートナーの姿が見えないことに対する寂しさとも不安ともつかないような感情を覚えた。それは自分の中の「ミカ」は既に死んでしまっている、とさえ思わせた。


 部屋にいる間、何度も心の中でミカの名前を口にしていた。そして彼女に関しての追憶を何度も繰り返していた。

ミカの容姿から始まって彼女の性格や存在理由に至るまで全てを自分の中に問いかけていた。その内、志門は答えの出ないループの中をただグルグル回っていることに気が付き始めた。自分の心の姿は乾いた砂漠をひたすら水を求めてさまよい歩く遭難者の様だった。

 そんな中、志門は一つの声を確かに聴いた。


 『あなたは確かに水を求めてはいる、だが地を掘っただろうか―――水は底にある、掘り続けよ』



 その言葉で我に返ったとき既に5日が経過していた。


そんな時、ちょうど様子を見にマグダレネとロタが部屋に現れた。僕のげっそりとした姿を見るなり「やっぱりな」という顔をした


 志門は自分の心の中であった5日間を全て吐露するとマグダレネは頭と肩に手を回し引き寄せると次のように言った。


 「ハァシュタンは人の弱い心に付け込むのが巧みだ。私たちドバルカインも人として例外じゃない………志門君、これはあなた自身の試練なのよ」


 そしてロタはこう答えた。

 「志門君の聞いた声の主は『ヤーワァ』だ………『水は底にある』か。見事に計画の内容と符号しているな…… “無 ”のサイトに近づくには霊子界の創造記憶、地上の言い方では「ユニバースメモリー」とか「アカシヤレコード」とか称されている其れにかなり近ずかなければならないんだ。

 簡単に言えば “思い ”の最も深い部分だ、技術的な言葉では霊子界深度―――この前ルーファが言ったけど霊子界に時間や距離や方向はない。ただ “思い ”の浅いか深いか、それだけなんだ。

 いずれにしても “無 ”の向う側に『水』はある。それはね、志門君――――君とミカの事なんだよ」



 それから更に日を重ね、遂に出発の時が来た。同時にアベルの、自分と同族である地上の船がカインの都市セイルに向け侵攻を開始した。

評議会のケルブとセラフィム、クライシストやレビ、律法義委員会、サンヘドリンやレギオン、そして両親を含め、大勢の者が見守る中、志門はループストライカーへ向かった。


途中、自分の名前を呼ぶ声を聴き振り返ると僕の両親が走り寄ろうとしたがサンヘドリンの護衛に制止された。涙声で叫ぶ両親――――― 。


 志門は今までにない大声で心の底から感謝を込めて叫んだ。

 「今まで本当にありがとう。お父さん、お母さん、絶対忘れない―――僕はミカと一緒に行くよ‼」


 志門はループストライカーの下まで来ると向き直って右の拳を左の肩の上に置き「ドバールカイン‼」と叫んだ。それは自分にミカを与え短い人生ながら大きな意味を持たせてくれたドバルカインの人々に対する感謝だった。


 コックピットに引き上げられた志門はバイザーを装着しミカを呼んだ。

 「ミカ、発進準備を―――格納ドームから直接ループストライクに入る。外に出てからでは危険だ」

 {了解、志門。機体の最終調整は終わっている、いつでも出せる}


 久しぶりに聴く彼女の声、伝わってくるものは紛いもなくミカのものだった。クライシスト本部の指令センターから通信が入り、マグダレネがモニターに映った。背景に異様な振動音や爆発音の様なものが入り混じっている。

 [アベルの侵攻が予想以上に早い、もうこちらで船をモニターしている余裕はない。これが最後の通信になる――――志門君、船を出してっ‼]

その後ろでルーファが何か叫んでいた。よく聞き取れなかったが船に三人乗っているとか――――志門は再びマグダレネを注視した。


 モニター越しにマグダレネと目が合った。ほんのわずかな時間、いや一瞬だったがそれは永遠のように感じられた。

 映し出されていた画面にノイズが走り通信が途絶えた。


「お姉さん、ありがとう…」

最後に志門は自分の気持ちを言葉にした。そして振り返りミカに指示を出した。

 「ループストライカーを霊子界潜航準備深度へ移行―――ループストライクッ‼」


 原子と霊子が交換される狭間で格納ドームの天井が爆発と鈍い振動を伴って崩落するのが見えた。


 ループストライクは一瞬で完了し船は霊子界に入っていた。コックピットの窓、外を映し出すモニターには景色の代わりに霊子波形と呼ばれるオシログラフの様な波形が映し出された。霊子界に於いて周りの状況を人の目で確認できる唯一の手段だ。

 {志門、セイルが…私の国都市が‼}ミカは悲痛な声を上げたが志門はそれを制止し、そして静かにミカを諭した。


 「ミカ、僕は今まで周りの多くを犠牲にしてきた。いつも支えられてばかりだった………今も自分たちの可能性のために沢山の人が犠牲になっている。自分でそれを掴んだ訳じゃない、皆、譲ってくれた………いや、与えてくれたんだ。

 ミカ、僕は振り返らない――自分に与えられた事を全うしよう。僕たちの犠牲になった人たちと全てを与えてくれた神、『ヤーワァ』のために」


 {志門………私は最後に間違いを犯すところだった。私もあなたと共に前を向う……}


 コックピットの壁からミカが現れた。それを見た志門は「アッ」と声を出した。肌の色は聞いていた通り茶褐色になっていたがそれ以上に目を引いたのは彼女が理乃から記念に貰った服を着、腕には自分が旅行に行ったときに買ってあげたブレスレットをしていたことだった。

 {私のコピーをその体に移したから………あなたと一緒に居たい}

 「その服とブレスレットは…どうして?」


 パーソナルディバイスのミカは答えた。

 「あなたと地上でいた時のことを忘れたくないから………チーフを説得するのに苦労したよ」ミカは笑みを浮かべながらそう言った。

 志門はミカをやんわりと抱きしめた。伝わってくる体温や心臓の鼓動、クロスライザーを介して伝わってくる感情はとてもシステムの一部になった人間の体とは思えなかった。

マグダレネから聞いた話では、伝わってくる感情は機械的で無機質なものだ、と言われていたからだ。

(僕は確かに命を…感じている⁈)


 次にアラートによって心地よい瞬間は切り裂かれた。

志門はミカを放すと直ぐにパネルの方へ目を向けた。最初、何が起こったのかよく分からなかったが船に重大な影響を与えている霊子波の干渉を確認した。

 訓練は積んできたものの未知の想定外の状況となると実際この領域を経験したことのあるミカが先に動いた。

 「志門、直ぐに次元潜航を始めて‼ この深さの境界層ではアベルの霊子ジャマ―の干渉を受けている―――急いでっ‼」


 志門は焦りながらも必至でダイブを開始した。しかしアラートが消えない部分が残っている。

 「志門、落ち着け。大丈夫だ……ジャマ―の干渉から離れた」

 「アラートが残っている、ミカ…これは?」

 ミカは志門からバイザーを取りメインシステムの本体と繋いだ。暫くしてミカは「クソッ!」と言うような顔をして僕の方に向くと次のように言った。

 「船の航法プログラムが壊された! 霊子界深度に応じて船を安定した状態に保つのに必要なんだ」

 「自動修復は―――予備は⁈」

志門があたふたしているとメインシステムのミカが答えた。


 {ループストライカー自体がプログラムなんだ、入力されている指向性霊子エネルギーの一部が欠損した。修復はできない……}

 ディバイスのミカが志門の隣に座り指示を与えた。

 「志門に会う前に私は霊子界の最深部の近くまで行っている、プログラムの補正は私が行うから志門は船をそのままダイブさせて」

 志門は前を向く彼女の中に心の強さを感じていた。ループストライカーを操るメサイヤの彼女こそドバルカインのミカELLE・カナンの顔なのだ、と。



 霊子界における深々度への潜航はかなり長い時間が掛かっているように思えた。物理的な時間の概念はここでは適用できなかったがそれでもミカの魂の寿命が長くなることはないのだ。

 (急がないと……)

 「志門、集中しろ………潜航速度が速くなってる。誤差を0.2以内に抑えて――――私の事はあとで考えてくれ」


 モニターに映し出される霊子波形が滑らかな波の様に安定した形状を映し出していた。

 「かなり近づいたのか………静かだ」と僕はミカに言った。

 「もう一息だ、あと少しで――――」

 ミカが言い終わらない内に「パァアアーッ」というひと際かん高いアラート音が鳴動した。それは船にとって重大警報だった。続いて自動音声が流れる。

                                         “航法オペレーションシステムニ、ジュウダイナシショウガハッセイ。


 ノコリ0.2ホーラデコウコウフノウニナリマス ”



 それを聞いた僕は船とディバイスのミカと自分の生体の霊子波形をモニターに展開させた。思った通り、いや予測されていた通りメインシステムのミカの霊子波形は今にも止まろうとしていた。そしてディバイスのミカの波形も弱まりつつあった。

 メインシステムのミカが志門に話しかけた。

 {志門…………そろそろ限界…………後はあなたがやって…………必ず私を新しい世界へ送り出して………お………願……………い―――}


 次いで「ズウゥーン…」というモーターが停止するような音と共に各システムがダウンしコックピットは灯りを失おうとしていた。志門とディバイスのミカは機能が全停になる前に各システムを単独で立ち上げるため全力を尽くした。



 システムは立ち上がりはしたが既に統括者であるミカはいない。地上の出来事に準えるならコンピュウーターのオペレーションソフトウェアが逝った、と言うのが近いかもしれない

 志門は横にいるミカの生体波形を見た。今にも止まりそうなくらい波形は微弱になっていた。そんな中、志門は波形に奇妙な部分を見つけた。発光する赤色で示されるミカの波形にだぶって、これもまた非常に微弱だが緑色に輝いている波形が見え隠れしていた。


 志門はミカの手を止めさせシートに横たわらせた。彼女の残り僅かな時間まで作業に当てたくはなかった。

 ディバイスのミカが次第に意識が薄らいでいくのが分かった。志門は彼女の手を強く握りお互い目を合わせ声にならない思いで頷いた。

志門は声が出ない代わりに涙が零れ彼女の顔の上に落ちた。


 ミカは志門の手を自分の胸の上に持ってくると薄らぐ意識の中で呟くように言った。

「わたし…………志門と家族を…………あなたの子供…………作りたかった………………志門みたいに………きっと優しくて……… 」

 志門の手を持っていたミカの手が滑り落ち目は完全に閉じないままゆっくりとうなだれた。

 志門はミカを強く抱きしめると心の中で固く誓った。

 (君を新しい世界に連れていく‼ 絶対に―――)


 その後、志門はすぐに船の状態維持に取り掛かった。船は思うように安定せず霊子界波形は再び乱れ始めた。志門は船の状態を回復させるために出来うる事を何十回も再試行した。が、結果は同じだった、いや前の状況より悪くなり始めていた。


 苦悩と絶望の中、志門はバイザーを外しコンソールの上へ置いた。そして両手で頭を抱え何度もミカの名前を叫んだ。

 暫くして志門は自分の横で何かが動く気配を感じその方を向くと横たわっていたはずのミカがゆっくり、本当にゆっくりと半身を起こした。

志門は直ぐにミカの生体波形を確認した。赤色に光る波形は完全に止まっていたが緑色に光る波形は尚も動き続けていた。

 ミカはゆっくり志門の方を見ると小さな声でこう言った。

 「わたしは未だ魂になっていない霊………必ずあなたを助ける…………だから―――」

 志門は声も出ず、ただ聞くだけだった。ミカは続けて言った。

 「絶対………私を産んでね、お父さん―――」

そう言うと再び崩れるミカ。


 志門は「アッ!」という感じで気が付きミカを支えた。そして映し出されている緑色の波形を見て叫んだ。

 「君は僕とミカの子供っ⁉」

 直後に航法オペレーションシステムが回復しループストライカーは再び霊子界の最深部へ向けて動き出した。



 「霊子界深度レベル9。霊子波形、『カインの剣』と同期を確認、ポイント “ゼロ ”を確認した」


 志門はループストライカーの霊子波形を『カインの剣』の波形に同期させると剣が収められたカプセルをコックピット内に浮かび上がらせた。同時にカプセルが開き、志門は静かに『カインの剣』を取り大きく頭の上に振りかざした。


 志門は今までの思いの全てを込め『カインの剣』を振り下ろした。


同時に船を中心にして爆発的に時空間が広がっていく。モニターの霊子波形は消え真っ黒な空間が映し出される――――コックピット内で鳴り響くアラート。ループストライカーは霊子界の最深部からいきなり通常空間へ現れた状態となりリアクター内の霊子圧力に耐え切れず崩壊を始めた。そして終わりは早かった。


目の前が眩く輝きその中で体の感覚や意識や思い、全てが消えて行った。



僕は…  もう…  いない


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