『協力者 五十鈴摩利香』
逃亡する志門とミカ。広大な地下ドックで統合機動宇宙軍SCV-01リベレーターのロバートソン提督と防衛省先端技術開発局が建造した対高次元戦闘艦〈あまてらす〉の艦長、五十鈴摩利香一等宙佐との出会いは、志門とミカを思いも寄らない方向へ導く。
『協力者 五十鈴摩利香』
「動くなっ!異星人。」、と宇宙服を着た女性は叫んだ。そう言いながら、彼女の目は穏やかだった。
もう一人の年配の男性が前に出て、彼女の方を向き、制止した。
「五十鈴艦長、彼らに戦う意図はない。さっき君も理解した筈だ。」
女性は小声で男性に返した。
「分かっています、提督……私の言う通りに動いてください。多分、モニターで監視されています。」
女性は僕とミカに、エレベーターの中に入れ、と目で合図した。
全員がエレベーターカプセルに入ったところで、ドアを閉鎖し、パネルの幾つかのスイッチをカチッカチッ、と落とした。そして耳に着けたインカムのような物を外すと、ハンドガンをホルスターへ戻した。
「すみません、ロバートソン提督、………もういいわよ、二人とも。楽にしなさい。」、とその女性、五十鈴は言った。
年配のロバートソンという男性が僕たちに近づき、次のように言った。
「先に君と目が合ったとき、君たちの全てが分かった………どういう力なのだ? 君は月の裏側の基地に居た女性だな、月のドローンオペレーションの映像で見た………」
この時、ミカは、エッという顔をした。
僕はこの時やっと、フゥ〜ッと大きく息を整え、ミカの前に出て、自分たちの事を言った。
「貴方たちは僕らに危害を与えない存在のようだ。………彼女がそう言いました。僕は風早志門、元は大学の教授です。彼女はミカ·エルカナン。出身はカイン………」
「カイン………月の人間の総称なのか? 私はJC·ロバートソン、こっちは五十鈴摩利香一等宙佐だ。………私は君たちが言うところの軌道プラットフォームで敵性異星人と戦っていた。カインともね………」、とロバートソンは言った。
それを聞いた僕は少し慌てた。
(カインとも……それって、ここで会うの、マズいんじゃないかっ?)
「あの船のっ………艦長!?」、と僕は聞いてみた。
「いや、……艦長は君たちを此処に連れて来た者だ。………君たちに聞きたい、我々が君たちと戦わねばならない理由は何だ?」、とロバートソンは尋ねた。
この問いに僕がどこから話して良いのか迷っていると、ミカがその記憶をロバートソンへ霊子感応で伝えた。それは遥か太古に遡る人類の創世期の記憶……
ロバートソンはこの時、SCV-01の機関操作員でTR-3Dのパイロット、エディ·スイングの言葉を思い出した。
“争いの元凶となる事象が遥か昔に起きました………これは人間の創世期の話です………”
(確か彼女もそう言っていた…)
ミカは口頭で自分の考えを述べた。
「争いの原因は遥か太古に遡る…………だけど今、貴方がたを戦わせているのは、それと違う理由だと思う…………いや、そう思いたい。」
ロバートソンは頷くと目を閉じ、俯いてミカに言った。
「そう思いたい、………か。確かに………昔のボタンの掛け違いを世代を超えて話しても意味はない。軍人の自分が言うのもアレだが、政府が軍事に力を入れる理由は、戦争をしなければ社会が成り立たない構造を作ってしまった事だ…………平和な時も仮想の敵を忘れない。」
横で聞いていた五十鈴は志門に尋ねた。
「私は貴方たちがアメリカの対異星人特別チームから尋問を受けていた事を聞いていたけど、彼等のイメージは貴方にとってどうだった?」
「残念だけど疑念と支配しか感じなかった。………責任者のクラウディアって名前のお姉さんだったかな? あの人は異星人の事で家族に何か有ったんだと思う…………根は悪い人には感じなかった。」、と僕は答えた。
「志門くんもミカさんと同じような能力があるの? 私は少しだけ、そういう能力を持っているの。人の感情が文字のように読めたり、近い時間の予知とかね………何れ、貴方たちと会うような気はしていたの。」、と五十鈴は言った。
横で聞いていたロバートソンは彼女の方を向き、目を大きくした。
五十鈴の言う事を聞いて僕は目を丸くして言った。
「そうなんだ! もしかしたら………自分もそういう部分が覚醒しているのかも知れない。ミカは隈野出津速雄とコンタクトしてから劇的に変化している。」、僕は間接的に、何らかの影響を受けていると思った。
五十鈴は志門の方を黙ってジッと観た。そして、次のように僕の思いを語った。
「志門くん、貴方は超次元に逃げた仲間を追っているのね………」、そう言うと、彼女は更にロバートソンの方を向いて話した。
「ロバートソン提督、アメリカ政府の特別チームは必要な情報をミカさんから取得すれば、恐らく二人を拘束監禁するか、表に出れないようにするでしょう。彼等はカインと交渉する前に対等な力を持ちたいと考えています…………もし、それが出来なければ二人と引き換えに技術的要求をするかも知れません、…………私は志門くんとミカさんを逃がしたいと思います。」
「一体、…………どうするのだね?」、とロバートソン。
五十鈴は暫く腕を組んで俯くと、ミカの方を向いて尋ねた。
「ミカさんは空間転移は出来る? 貴方の力は秒を追うごとに大きくなっている感じがする。」
「確かに力は大きくなっている………だけど、私の身体が支え切れない………」ミカは顔に汗を滲ませながら言った。
五十鈴は頷き、宇宙服の、首の気密ファスナーを開くと身に着けていたネックレスを外し、ミカに手渡した。そのネックレスには勾玉のような物が付いていた。
「これは?」、とミカは聞いた。
「TXマテリアル。貴方が言うところの霊子で出来た物よ。これで貴方の身体は少し楽になるわ………」、と五十鈴は答えた。
横に居たロバートソンは、その事について尋ねた。
「TXマテリアル(エキゾチックマテリアル)!? あれはTX機関開発のために厳重に保管管理されている筈だが…………何故、君がっ?」
それに対し、五十鈴はクスクスッ、と笑いながら答えた。
「これは、私の家に永らく伝わっている物、私物ですよw………私の家は代々、巫女の家系、依代(TXマテリアル)として伝承されて来ました。私は幼い時から、これに依って特別な意識を持つようになったんです。科学用語では、高次意識や高次感応と言われるものです。私は、その特殊な能力を山元作戦司令に認められて、このプロジェクト(あまてらす建造計画)に参加する事になったんです。」、言い終わると彼女は僕の方を向き、次のように言った。
「ミカさんと一緒に、ここから飛びなさい!」
「飛ぶ、空間転移?…………でも、まだミカが………」、そう言い、僕は横に居るミカの方を向いた。
ミカは五十鈴摩利香から渡されたネックレスを手に巻き、自分の胸に着け、祈る様に俯き、目を閉じていた。
その時、異変が起きた。ミカの身体は半透明になり、次に眩い光に変わった。
「さあっ、行って!」、と五十鈴は僕に向かって叫んだ。
僕は言われた通り、その光の中へ飛び込んだ。
このエピソードはSFミリタリーアクション『機動空母リベレーター』第二部ep:43「エイリアン脱走」、44「密約」とリンクしています。其々の台詞は双方の物語によって、若干の違いが有ります。対局から見たストーリー展開をお楽しみ下さい。




