『捕われの志門とミカ』
ミカの霊子の魂により、皆神山の大深度地下に眠る太古の遺物、隈野出津速雄とのコンタクトに成功した志門たち。
だが、望美とエディを出津速雄に転送した後、TR-3D内に潜伏していた男により拘束され、TR-3Dで連れ去られてしまう。
ミカは霊子感応で状況を隈野出津速雄に伝え、望美とエディを乗せて霊子次元へ飛翔するようにお願いする………、隈野出津速雄の中で、望美とエディは霊子次元を通過するための認証を得なければならなかった。
連れ去られた志門は広大な飛行場のような所に連れて行かれるが、そこはどこかで見た風景だった。
『捕われの志門とミカ』
銃口を向けられた志門は男に言われた通り黙った。
その時、コックピット入口で空間が輝き、ミカが現れた。彼女は志門の魂の変化に気が付き、何か有ったのか確かめるため、隈野出津速雄からTR-3Dへ戻った。
「志門、何で返事が無い…………あっ!!」
男は志門に銃口を向けたまま、ミカに言った。
「動くなっ、月の女!こっちの言う通りに動けっ!」
男は志門とミカを特殊な拘束具で身動き出来ないようにすると、コックピットからキャビンに引き摺り出し、パイロットスーツが格納されているキャビネットを開くと、パイロットスーツを取り出し、代わりに二人を押し込んだ。
手足を拘束された志門とミカは閉鎖されたキャビネットの中でもがいたがどうにもならなかった。
「クソッ、あいつ僕たちをどうする気だっ!」と志門。
ミカは暴れるのを止め、隈野出津速雄に霊子感応で呼び掛けた。
“私たちは捕まってしまった………出津速雄は二人を連れて霊子次元へ飛んで!、………私たちは自分でなんとかする……”
“応!”、と隈野出津速雄は返した。
暫くして機体の駆動音が聞こえた。
ブゥウウウーンンンッ、という低い重低音から次第にビィイイイイイイーンンンッ、という音に変化した。この時、機体が僅かに揺れ、水平を取り戻した感じを覚えた。
◆
一方、隈野出津速雄に送られた望美とエディはミカと同じように魂をチェックされ、二人は最初のことで慌てたが隈野出津速雄の説明を受け、次第に冷静さを取り戻した。
魂の審査の結果は二人の思いを二分するものだった。
古代のミイラのDNAからクローン再生されたエディ·スイングは天津神の魂の痕跡が見つかり、隈野出津速雄の認証を受けることが出来たが、一方の望美は普通の地上人として認証を受けることが出来なかった。
この事に望美は酷く落胆し、隈野出津速雄に文句さえ言った。
「兄ちゃんは一般人で霊子世界に行っちゃったのに、何で私はダメな訳っ?」、と望美は憤慨した。
それに対し、出津速雄は望美に尋ねた。
“兄ちゃん?、それはお前の兄妹か………”
「私の兄よっ!」、と望美は答えた。
暫く間が空いた後、出津速雄は次のように言った。
“どんな理由が有るにせよ、高天原に入れるのは呼ばれた者だけだ…………私も認証出来ない……だが実際、お前の兄が行った、と言うのであれば、それは高天原と葦原中国の境界に留まっているのかも知れない……”
「月の裏側に有った基地………もとい、ミカさんの居た都市は実際、まだ完全には超次元の深い所までは行っていない…………境界層に居るってことなの?」、とエディは出津速雄に聞いてみた。
“水先を示す神が居なければ、その辺りに居るだろう…………私はミカという天津神から、お前たちを乗せて高天原(霊子世界)へ飛べ、と言われたが一体どうしたものか…………”
(困ってる?、超次元のUFOが………こんな事も有るんだ!)、とエディは心の内で失笑した。
しかし、出津速雄はそれが分かっているようで、二人の前に人の姿として現れた。その姿は古墳時代に見るような髪形(美豆良)と服装で直線的な太刀を持っていた。
出津速雄はエディに憤慨した顔で言った。
「人が真面目に悩んでいる時に笑うなっ、コラッ!」
「ワァッ!、ゴメンなさい………でも、UFOよりそっちの方がコミュニケーションが取りやすい。」、とエディ。
ここで望美は改めて出津速雄にお願いした。
「何とか私の兄を探して頂けないでしょうか…………」
「分かった、………横に居る………エディ、だったかな?お前の記憶に有った御椀(半球状のドーム)のような物を探せば良いのだな。」、と出津速雄は言った。
望美は出津速雄に頭を下げ、エディは進み出て彼の手を握った。
「宜しく頼みます。」、とエディ。
握手を知らない出津速雄は、最初キョトンとした感じだったが次に力強く返した。
「任せよっ!」
彼の声と同時に出津速雄の船内は眩しく輝き、超次元と高次を含む物質次元の境界層へと飛翔した。
◆
志門とミカを乗せたTR-3Dは男の操縦により、程なくして、とある所に降着した。
志門とミカは手足を拘束されていたが、歩けるように足の拘束具は外された。
キャビネット内の志門とミカに男は注意した。
「こちらの言う通りに動け。それと喋るな………私は君たちの安全を君の両親に約束している。此処で私と他の者に銃口を向けさせるような行動はするなよっ!」
それを聞いた志門は驚くと同時に、両親を巻き込んでしまった事に愕然とした。
志門は男に向かって叫んだ。
「お前、両親に何をしたっ?!」
男は応えず志門とミカを機体の外へ出した。
機体の外には大勢の警護?、の兵士が緊張した面持ちで銃を構え、二人を注視していた。
警護の兵士は全員、日本人の様で、それは自衛隊の隊員と思われた。
TR-3Dは既にハンガーに格納されていたが、開放されている格納扉の間から、広大な飛行場の様な敷地が確認できた。
(ここは………どこかで見たような……?)、と志門は思った。
その後、志門とミカは警護に取り巻かれ、用意されていた部屋へ収監された。
志門は事の重大性を感じ、ミカに謝った。
「ごめん………ミカ……大変な事になった。自分は………自分が作った世界のために皆を巻き込んでしまった。自分の両親さえも………こんな筈じゃなかった。」
それを聞いたミカはウフフッ、と笑うと志門に向いて言った。
「私が志門、貴方を初めてカインに連れて来た時もこんな感じだったわね………今回は貴方も私も監禁されてるけどw。」
ミカはそう言うと、部屋の中央に置かれている、テーブルと椅子の方へ歩き腰を降ろしてテーブルにうつ伏した。ミカは額から汗を滲ませていた………
少し苦しそうな様子を見た志門は駆け寄った。
「大丈夫?、どこか具合が良くないか?」、と心配そうに聞く志門にミカは次のように答えた。
「隈野出津速雄にコンタクトした後に………霊子の力が覚醒した感じ………身体がまだ追い付いていない。」
………………………………
翌日、志門とミカは健康状態を確認するため、部屋に軍医?、と衛生関係の者が入ったが、ミカは激しく拒絶したため、志門だけ健康状態の確認が行われた。
それから、凡そ一週間後………、スーツ姿の男性と女性数名が二人の部屋を訪れた。
外国人の様で、黒のスーツにサングラスを掛け、特に責任者らしい女性はブロンドで背が高かった。
女性は志門に近づくとサングラスを取った。
顔立ちは美しくカインの女性には及ばないまでも、ある種の責任に鍛えられた、毅然とした美しさを漂わせていた。
(お姉さん[ マーナ ]に似てるな………)、と志門は思った。
本エピソードはSFミリタリーアクション『機動空母リベレーター』第二部とリンクしています。対極から描いたストーリーを楽しんで観て下さい。




