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カインの使者  作者: 天野 了
『カインの使者』第三部 [ 世界再創造編 ]
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『カインの使者』第三部 第6章「時空機TR-3D」

その夜、ラーヤの家から宿に帰った志門とエディは望美と一緒に翌日の行動計画を練る。望美はTR-3Dの走査システムを用いて探査ポイントの皆神山地下深部の探査を提案する。

翌朝、宿を発った三人は車でTR-3Dを隠した山中へ向かう。現地に着き、TR-3Dを隠した山頂に上がった志門と望美はエディによってTR-3Dの機体内部へと進む。


エディはTR-3Dとリンクし、いよいよ皆神山の地下深部の探索が開始された。


『カインの使者』 第三部 第6章「時空機TR-3D」



宿へ帰り、僕たちが行った事はTR-3Dを隠してある山の位置を調べる事から始まった。



エディが提示した地点をグーグルマップで調べたが、そこは狭い県道に入った先で小さな川の流れる横にある山だった。標高は1400m、元々高地なため下の道路からは凡そ250m、車で現地の近くまで20分、河川脇に在る鹿島大冷河川公園という所の駐車場に車を置き、そこから山頂を目指す。一応念のためラーヤさんから貰った光学迷彩のポンチョを着て衛星からの監視を逃れる‥‥次にTR-3Dに辿り着いた後の行動計画を練った。


エディは望美にどのような事をして欲しいのか聞いた。それに対して望美は探索ポイント、長野県皆神山の地下深部の地質構造を調べて欲しいと頼んだ。近年の地質調査では過去に此の辺りで起きた地震は地下水脈がマグマ溜まりに接する事で地下水脈が膨張した、とされるが望美はこの点に疑問を持っていた。相当大きなマグマ溜まりなら分かるがそれに対して地震の発生したエリアが狭すぎるのだ。また、周辺地域にも大きな温泉の様な物も無い。それと、この地域が低重力地である事、これは地下深部に何かしらの強力な磁場異常を起こす物が在るか、想像を絶するような巨大な空洞が在るかも知れないと考えた。



望美の話を聞いていた僕は感心した。考古学者というより地質学者なのかと思う程で、どちらかと言うと、それは僕の鉱物学の分野でもある。彼女の容姿と併せて僕は彼女の明晰さに魅かれた。


(始くんは良い妹さん持ったなぁ…)と僕は彼女の横顔を見ながら思った。その時、エディが僕の肩を揺すった。


「志門はどう思う?」とエディは話し掛けたが僕の耳は聞いていなかったようで問いかけの意味が分からなかった。


「えっ、何がっ?」と僕が言うとエディはフゥ~ッと溜息を吐いた。

「(また破廉恥な事を考えてたんだ、志門…)志門の意見を聞きたいの。」とエディ。


「この地域はフォッサマグナだ、泥砂状の地質に巨大な岩塊が折り重なったような地質だと思う。他の地域みたいに直接岩盤の上には無いからね…望美さんの言う線は有るかも知れない。」と僕は答えた。



エディは望美の要望に対して特に技術的な問題は無い、と答えた。


「通常の地上走査器でも重力分布や磁気反応は調べられるけど、これに高次元走査を組み合わせれば大深度の地下構造は調べられると思うわ。」とエディ。僕はTR-3Dを移動しなければならないか聞いたがエディは高次元走査ならその必要は無いと答えた。通常の走査器は面に対して行うが高次元走査は指向性のもので通常のように物理センサー波動の入射角を考慮しなくても良いとの事だった。




その日、検討する事は終り皆は布団に身を沈めた。




      ◆




翌日の早朝、他の登山客等と一緒に宿を発った。僕たちは車に乗ると平地から北西に在る山間を目指した。山間部が近づくと道幅は次第に狭くなり、想像通り山間部の狭い田舎道になった。冬は降雪のせいか路面のアスファルトはかなり痛んでいて、車のタイヤが拾う衝撃が室内に響いた。


「エディは、こんな所よく歩いて来れたな…熊が出そうだ。」と僕は言った。


「防空システムの穴は、ここしかなかったの。志門の家に着くまで大変だったけどね…」エディはその時を振り返りながら言った。


車が目的地に近づくと道は林道のようになった。僕は轍に注意しながら車を進めた。河川の上流、鹿島大冷河川公園に入った所で景色は大きく開けた。車を駐車場に止め、出ようとする僕と望美をエディは待って、と制止した。エディは目を瞑り、この辺りに他の意識が向いていないか調べた。


「大丈夫、行けそうね。」とエディは言った。念の為、僕たちは車内で光学迷彩を羽織って車外に出た。光学迷彩は見事に僕たちを透明にしている。各々、フードから見える顔と少しだけ見える足元で互いの存在を確認し合った。


エディは、あの山と言う風に顔を向けて場所を示した。結構な急斜面を僕たちはブッシュをかき分けながら登った。


高度差250mは目視で見るよりも大変だった。僕たちは足元に気を付けながら進み、やっと地面が平らな所へ辿り着いた。その中央部は樹木が横に倒れ、折り重なっていた。中には上から何かが押さえているかの様に幹をしならせている樹もあった。



「間違いない、ここにTR-3Dが在るんだ!」と僕は言った。

「本当に在るの?只の平地じゃない…」と望美は言うと立ち上がって小走りに走って行った。エディは直ぐに制止しようとしたが遅かった。“ ゴンッ” という鈍い音と共に望美はその場に崩れ手で頭を抱えた。


「痛っああっ ‼ 」と望美は叫んだ。エディは注意しながら駆け寄ると心配そうに望美の横に屈んだ。



「大丈夫、望美さんっ⁉ 怪我はない?」とエディは望美の手を除けてブツけた部位を診た。望美の髪の毛の隙間から血が滲んでいるのが見えたが、幸い大ケガじゃなかったのでエディは安心した。


「大丈夫か、望美さん⁉」と僕は彼女に言うと、顔を歪めながらもハンドサインで大丈夫と示した。


「志門、此処を動かないで。着陸ギヤやセンサーアンテナ類の突起があるからブツかると危ない………機体は量子迷彩が起動している。底部ハッチを開放するからちょっと待ってね。」とエディ。



エディは手を差し出すと機体にそっと触れた。彼女の脳に埋め込まれている操作用マイクロチップにリンクしTR-3Dは機体底部の昇降ハッチを開放した。それを見た僕と望美は揃って「オオ~ッ!」と驚きの声を漏らした。


「早く中へっ!」


エディは二人に機体内へ入るように促した。僕と望美は転がり込むように急いで中へ入った。僕たちが入るとエディは直ぐに昇降ハッチを閉じた。


僕たちは直ぐに光学迷彩を脱ぐと、機内の冷えた空気?で汗で湿ったシャツが冷たく感じた。



機体内部はとても狭く、僕は頭を天井の機材でぶつけないように注意しなければならない程だった。円形の機体キャビンの中央には太いシャフトが天井と床を繋ぎ、壁には幾つかのキャビネットが在った。機内は微かに重低音が聴こえ、機体が稼働し続けている事を示していた。


この地球でも最新の部類に入るTR-3Dを見た感じ、カインのループストライカーを見慣れた僕にはこの機体が、まだ物質技術から抜け出ていないように感じた。反して望美は食い入るようにあちこちを見回し、感嘆の声を上げた。


「凄い、これが地球製のUFOなのっ!初めて見たけど、航空機っていう雰囲気じゃないわね!」と望美。


エディはパイロットスーツを着ながら次のように答えた。

「軍事技術は一般の人の想像を超えた所に在るわ……機体システムとリンクするからリクエストを頂戴、望美さん。」


エディはコックピットへ通じる小さなエアロックを開放し、パイロットシートに着くと座席を前方にずらし正面パネルの両サイドに有る感応スティックに手を添え、機体とリンクした。


「メインパワーリンク…走査プロトコル、Ago!…… 高次指向性波動放射…レディON 。望美さん、準備が出来たからリクエストを!」


「分かった、では長野県皆神山の地下深部、先ず深度300mで……捜査範囲は半径500mでお願い。」と望美。


僕はパイロットシートの後ろからエディを見ていた。コックピットにはデジタルパネル等の表示機器は一切無く、機体、各種センサー類とのリンクは彼女が手を乗せている半球状の感応スティックで行われている様だった。



「高次元走査開始、ポイント36.553953, 138.220585……高度192ft、山頂より地下へ向け走査を開始する、走査半径500m…」




エディはTR-3Dとリンクし、目を閉じてセンサーの深度に意識を集中した。






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