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カインの使者  作者: 天野 了
『カインの使者』第三部 [ 世界再創造編 ]
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『カインの使者』第三部第4章「志門とエディ」

遂に地上で志門との邂逅を果たしたエディ。だが、志門の話は決して彼女に安心感を与えるものでは無かった。それを聞いたエディは自分が犯した裏切りと反逆に、その場で泣き崩れる。それを見た志門は改めて自分の言った誓約の履行を彼女に誓う…


帰って来ない志門を心配したミカは一人キッチンで待ち、夕部、志門に対して自分が吐いた言葉を反省していた。そこへ帰って来る志門とエディ。エディの正体を志門が話すと木刀を構え、警戒するミカ‥‥一先ず誤解が解け、ミカはエディの今後と志門のやろうとしている事を聞くが「滅茶苦茶な希望的観測…」とコキ下ろす。夜が更け、三人は一先ず明日に話しを伸ばす。


『カインの使者』第三部第4章「志門とエディ」



僕の傍らに居た人影は腰をずらし近づいたので僕はやっと(?)と思い、そっちの方を見た。



月明かりに照らし出された、その人物は僕の方を向いていた。自分より背の高い外国人で髪型はショート?、色はエメラルドグリーンのように美しく見えた。白い服を着ているその者は中性っぽい感じだが体形が丸みを帯びていたので女性と分かった‥‥互いに目が合う。



「もし、貴方が自分の誓約を守らないならヒヒイロカネを返してっ!」とその者は言った。


「えっと……何の事っスか?」と僕は答えた。その者はいきなり僕に襲い掛かるように両肩を掴んで僕に迫った。

「忘れたのっ⁉ 貴方はヒヒイロカネを受け取る時に地上の人を護るって言ったじゃないっ!」とその者は目に涙を溜めて迫った。




僕は家の事で鈍くなった頭の中の記憶を整理し過去を遡った‥‥



「‥‥‥‥あっ ‼ 」と僕は気が付いた。彼女はアベルの軌道プラットフォームに潜入した時、カインの剣の同位体を譲ってもらった時の声、その本人なのだと‥‥僕はようやく慌てた。


「えっ、エエ~ッ ‼ あの時の声の人なの、お姉さんっ⁉」と僕は仰け反った。僕の声を聴いた彼女は少し不満そうな顔をして僕に言った。


「私はエディ・スイング、貴方が思っているところのアベルの軌道プラットフォーム…正式には統合機動宇宙軍の機動空母SCV-01リベレーターの機関操作員よ。それと――私、見た目こんな感じだけど、まだ二十歳にもなっていないのよっ!」


「………エディ・スイング(意識の声の主は男性と思っていた!)……エディ、まさかこんな所で…何でこんな所に居る訳? 僕に何か用なの?」と僕は彼女に聞いた。




エディは俯いて両膝を手で抱えると事の次第を志門に語って行った。


先ず、自分がヒヒイロカネと同時に見つけられた古代のミイラからクローン再生で造られた人工人である事、その後、ジェネラルバイオエレクトリック社でヒヒイロカネを動力源としたTX機関を自身とセットで開発に携わって来た事―――、そして戦争の道具として利用され、それに自分が耐えられず、遂にTR-3Dで月の裏側で戦闘を行った後に遁走した事など‥‥



「私は貴方がこの世界を創った事を知った時、頼れるのは風早志門、貴方しか居ないと思ったの。」と彼女は言う…



僕は彼女の言葉を聞き、黙った。




「どうしたの?」と彼女は僕の様子を伺った。



「今の自分は無力だ……頼ってくれるのは嬉しいけど…」と僕は答えた。

「貴方に渡したヒヒイロカネはどうなったの?」と彼女は聞いてきた。


「それな……カインの国都市セイルに積んだまま霊子世界に行っちゃった……君から譲ってもらったそれは、物質世界と霊子世界を往来するための…帰って来る為の燃料だった…彼等カインが戻って来るか自分には分からない…」と僕は答えた。彼女は目を大きく見開くと僕に迫って驚いた。


「そんな…それじゃ、私のした事はっ…⁉」と言うと彼女身体を小刻みに震わした。



「済まない…と思っている…」そう僕が言うと彼女はワァッと泣き出した。



「私は沢山の人を裏切って…中尉(バートル)さんにまで怪我を負わせて……やっとここまで来たのに…ウゥッ…自分はもう生きていられないっ ‼ 」





彼女はその場に崩れるように泣いた。余りにも悲惨な彼女の姿に僕の気持は引き裂かれるような思いだった。そして、今の自分の無策と無力を呪った。




(ここまでカインを追い込んだのは君たちアベルじゃないかっ!)そんな思いも過ったが僕はその思いを飲み込んだ。少なくともこの世界を創った僕には目の前で起きている彼女の悲惨は在ってはならない事だからだ。


(僕は同位体を受け取った時、確かに彼女の願い〈地球を異星人の手から護る事〉に誓約した…それは、この世界を創った僕、いや、この世界自身が叫んだ誓約なんだ…)





僕は優しく彼女の肩を持ち上半身を引き起こして自分の方へ向かせると確かな声で彼女に約束した。


「君と交わした誓約は必ず履行する。自分がこの世界を創った……君が悲しむような事が在ってはいけないんだっ!」と僕。


彼女は真っ赤に腫らした眼で僕を見た。



「本当……?」と彼女が言うと僕はウンッと頷いた。




      ◆




その頃、家ではキッチンでミカが一人起きていた。他の者は既に寝入ってしまったが何時間経っても家に戻らない志門の事が気になっていた。



(夕部は言い過ぎたかなぁ……)



ミカはそう感じながら昨日の自分の言葉を振り返りながら反省した。


「子供も産んだのに……か。それは産んでやった!、と志門に言っている様なもの…子供が出来たのはお互いが愛しているからなのに…自分は志門に酷い事を言ってしまったんだ…」とミカは呟いた。





暫くして玄関のドアが開く音がした。


(志門………?)


そこでミカは妙な足音に気が付いた。


(何じゃら… 一人じゃない、もしかして強盗⁉)



ミカはリビングのソファーの隅に置いてある(常備している)木刀を取ると廊下の入口ドアの横に立ち構えた。複数人の足音が近づく‥‥ドアが開かれ、入ったのは志門だった。アレッ?と思ったミカは直ぐに木刀を後ろに隠したが―――



次に入って来たのは志門より、やや背の高い女性だった。ベストの襟から出したフードを掛けていたが次に女性はフードを外した。見た感じ、深く輝く緑色の髪の毛と中性がかった女性という感じでフンワリ優しそうな雰囲気だったが何か鋭い洞察のようなものを感じた。


「お帰りなさい、貴方。その(女性)は?(志門がまた女を囲い込んだっ⁉)」とミカ。それに対し志門は次のように答えた。


「ミカにはどこから話したらいいんだろう……そうだなぁ……セイルが飛び立つ時にアベルの軌道プラットフォームから時空機が来ていただろう、二機いた内の一機のパイロットさんだよ。名前は…」志門が言い終わらない内にミカは背中に隠していた木刀を突きの型に構えた。


エディは直ぐにCQC《近接戦闘(Close Quarters Combat)》の構えを見せた。



(牙突か、何処で覚えたんだ?ミカ…)志門は焦りながらも思った。




志門は慌てて修正した。


「カインの剣の同位体を僕に譲ってくれた人だよっ!落ち着けっ、ミカッ。」


それを聞いたミカは牙突の型を解いて、ブンッと木刀を振り下ろした。

「目的は何っ⁉」とミカは尚も警戒を解かなかった。


志門は二人をテーブルに着かせ、自分も座ると、事の経緯をミカに話した。



「かくかくしかじか‥‥‥と言う事なんだ。当分、彼女にはこの家に居てもらう。恐らく彼女の捜索は地上でも始まっているはずだ。自分がやろうとしている事に彼女、エディにも手伝ってもらうつもりでいる。」と僕はミカに言った。


ミカは無表情にテーブルに置いてあったペットボトルの飲物を二人のコップにドブドブッと注いだ後、自分も一口飲み、深く溜息を洩らした。


彼女(エディ)がこの家に留まる事は構わない、志門が霊子界へ行きたいのも分かる。だけど…地球の乗物で霊子世界に行くことが出来ないのは貴方も知っているでしょう、志門。何か方法が在るの?」とミカは聞いた。



「エディはTR-3B、もとい…TR-3Dを長野県の山中に隠してある。こいつは時空機だ……それと望美さんの提示したポイントで古代遺物の同位体が見つかれば何とかなるかも知れない。」と僕は少し自信有り気に言ったが、次のミカの言葉で打ち砕かれた。



「志門、貴方は何も分かってないっ! 彼女の機体(TR-3D)では頑張っても高次元飛行が限界でしょ…カインのループストライカーはそれ自体が霊子金属で出来ていたから向うとの往来が可能だったのよっ!それに霊子次元に入るには向う側の許可が必要なのよ、誰がナビゲートするのっ?」とミカは悲観的に答えた。


「僕とミカじゃダメかな?一応、この世界を創った人間だから…」と僕。


「滅茶苦茶な希望的観測ね……貴方、今日はもう休みましょう。夜明けまで数時間もないけど。」とミカ。


「そうだな、話はまた明日にしよう。」僕はそう言い、エディの手を引っ張って自分の部屋へ戻ろうとしたがミカはそれを制止した。


「同じ部屋で寝るの?」とミカ。僕は「もう部屋、空いてないから…」と言うとミカは唇を曲げて顔を暗くした。




「貴方はリビングのソファーで寝てもらうからっ!」と言い、エディと僕の手を解くと彼女を僕の部屋へ連れて行った。




僕は部屋の照明を消し、ソファーに体を横たえた。


(課題山積ってか……)眠りに入る中、僕は心の中で呟く‥‥






この章はSFミリタリーアクション『機動空母リベレーター』Ep:28「月の潜入者」https://ncode.syosetu.com/n3174kl/28とリンクしています。双方の物語を比較しながら読んで頂けると幸いです。

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