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カインの使者  作者: 天野 了
『カインの使者』第三部 [ 世界再創造編 ]
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『カインの使者』第三部第3章「考古学者 独 望美」

部屋でミカの説明を聞く考古学者の独 望美。霊子金属の人工的な生成が現在の技術では不可能と知った彼女は考古学の立場から霊子金属(古代の遺物)の所在を志門とミカの二人に提示する。話が終った後、望美は部屋を出るが、その間に志門とミカは其々の思いで対立し互いに傷つく。


その晩、傷心を癒やしに外に散歩に出る志門。遂に地上へ帰還した後、家族で夕涼みに出た河川敷に辿り着き、斜面に腰を落とし物思いにふける。マーナたちを連れ戻すことを諦めかけようとしたその時、彼に近づく人影があった。

志門の心の中に直接語りかけて来る言葉、それは彼に夢を諦めないようにと促した。


『カインの使者』第三部第3章「考古学者 独 望美(ひとり のぞみ)



志門の横に居たミカは少し前に進み出ると次のように説明した。



「望美さん、霊子世界へ行くには特別なマテリアルが必要になるの…霊子金属っていう、それをコントロールするための補機も必要になって来るわ。私たち一般社会人はそういうのを揃えることも造る事も出来ない。」



「霊子金属?…初めて聴く名前。それはどんな金属なんですか?」と望美は身を乗り出すようにミカに迫った。


「基本材質は鉱物質だけど自然な物ではないわ。意志が金属として現れたもの……言わば、霊子の塊のような物ね。ループストライカーはカインの剣ほどではないけど人工的に生成された霊子金属を使っている…この金属には色々な命令や実行プログラムを組み入れることが出来るの、勿論それだけじゃなくて形そのものを変えたり時空間を拡張する事も出来るわ」とミカは彼女に答えた。


「何ですか、そのループ…何とかって?」と望美は少し訝しがった。


「今は霊子世界に行ってしまった私の国都市セイルが造った霊子次元探査船の名称よ。」とミカ。


「ウゥ~ン……」望美は唸ると黙り込んだ。それを見た志門は望美に言った。


「難しく考える事はないよ。現状、それは無いというのが結論だから…」志門が言い終わらない内に望美は一つの提案を出した。


「今の技術ではどんなに頑張ってもミカさんの言うような金属は作れない……なら、古代遺物の中から探し出せば…どうですか?」



それを聞いた志門とミカは、えっという表情を見せた。


「まだ有るのっ⁉」と二人はハモって言った。


「日本には未発掘の遺跡が相当数存在します。まだ残っているかも…第二次世界大戦までは存在が確認されたいたヒヒイロカネもCIAによって国外に持ち出されたと聞いています。表向きは所在不明という事になっていますが……ミカさん、霊子金属の存在は環境にどんな影響を与えますか、例えば磁気異常や地震とか…」望美はミカに攻めた質問をした。


「セイルに在ったカインの剣は強烈だったから…志門、貴方も知ってるよね。」とミカは志門の方を向いて言った。


「正直あれは覗き込むだけでもヤバい代物だったけどね…。だけど、始くんが持ってきた剣は鞘に収まっていて……確か始の彼女ネフェリームバリアントさんが呪詛で強力な封印をしてあったんだよね。そのまま開放していればとんでもない事になっていたかも…」と志門。




望美は暫く考えると次のように聞いた。


「もし、開放状態なら…地下に埋まっていたら地震を起こすくらいは可能ですか?」


それを聞いたミカは首を縦に振った。

「開放状態で制御の無い状態なら有り得ます。不安定な状態なら地面を割るくらいは簡単に起きると思います。」とミカは言った。



それを聞いた望美はバッグからタブレットを取り出し、未発掘の遺跡と周囲の地震データ―を照合して表示させた。

「見て下さい、これを…過去に収集した未発掘の遺跡の場所と周辺地域の地震データ―を重ね合わせたものです。」そう言うと望美はタブレットの画面を二人の前に持って来た。二人は覗き込むようにタブレットの画面を見た。その中には一際、注意を引くポイントが存在した。二人がそれに気が付くと望美はその部分の説明をした。


「このポイントは長野県松代町の皆神山という所です。色々な伝承の残っている所で近代になって付け加えられた話も残っています。ここで興味深いのは第二次大戦終戦前に軍部がここの地下に新しく軍司令部と天皇の住居を移転しようと考えていた事です。実際にかなり地下深くまで掘削した後が残っています。 そして重要なポイントですがこの皆神山を中心にして1965年から五年間に渡って大きな地震が続いた、という点です。原因は地質学的に多岐に渡りますが…地震の後で周辺地域の重力分布調査が行われて、この辺りは低重力地である事も分かっています。」


それを聞いた志門はボソッと呟く。

「熊野出速雄神社か……熊野じゃなくて正確には隈野だけどね。」



「私はここを調査しようと考えています。お二人に協力して頂ければスゴォ~く嬉しいです。」望美はそう言うと志門に近づき身体を摺り寄せてアイコンタクトを取って来た。


「いや~、何て言うか…乗っちゃおうかなぁ~、その話w」と志門は鼻の下を伸ばした。しかしミカはハッと気が付いた。


(あっ、これなんかヤバい匂いがする!)そう思いミカは望美に協力の内容を聞いた。


「どのような協力ですか?」とミカ。それを聞いた望美はウフフッと笑いながら答えた。



「この調査は今年の研究課題にしようと思ってるんです。私は大阪に住んで居るので足繁く現地に通うには遠すぎるんです。で―――、教授のお宅にお邪魔しちゃおうかなぁ~、なんて考えていますテヘペロ


(やっぱりそういう事か…お邪魔が過ぎるわっ!)そう思いミカは仏頂面をした。横で聴いていた志門は即答した。

「いいですよ、この部屋も使ってないし。望美さんもレポート等の仕事は多分デスクワークだろうからこの件が終わるまで居て下さい。」


「ありがとうございます、教授 ♥  それじゃ、私荷物取って来ますね。」そう言うと望美は外に置いていたトランクケースを取りに行った。部屋が志門とミカだけになるとミカは志門の頭を叩いた。


「貴方って本当に調子がいい……綺麗な女の人に鼻の下伸ばしてキモッ!」とミカ。


「賑やかな方がいいだろう、それに彼女の調査で僕たちにも何か得られるものが見つかるかもしれない。」と志門はミカに言うとミカは怪訝な顔をして志門に聞いた。


「志門、貴方まさか本気で霊子世界へ行こうと思っているの?」とミカは訝しがった。


「勿論、お姉さん(マーナ)や始くんをこのままにして置けないっ! 例え1パーセントの可能性でも僕は諦めてはいないよ。」と志門はサラッと答えた。



「………貴方のそういう所は好きだけど、お姉さん限定でしょ、志門の場合はっ!何で最初に始の名前が出て来ないのよっ⁉ 地上に帰る時もそうだったし…」そう言ってミカは志門を詰めた。それに対し志門は神妙な面持ちで返した。


「確かに……僕にとって、お姉さんは家族だ。いや、それ以上かも知れない……諦められないんだ。」



志門の言う事を聞いたミカは俯いた。

「私は貴方の子供も産んだのに……酷い…」ミカは呟くように吐いた。



志門はマーナへの愛情と始を連れ戻すという使命の二つの感情の板挟みに心の痛みを覚えた。


(二人とも、連れ戻す…ただそれだけで良かったはずだ。何処で間違えた…)と志門は思った。


志門はミカに寄り添うとひたすら謝った。暫くして望美が戻って来るとミカは夕食を作ると言って、そそくさと部屋を出て行った。


望美は部屋の雰囲気を察した。

(部屋の温度…少し上がっている、何か有ったのかな?)




      ◆




その晩、皆で夕食を摂った後、風呂に入り少し早い時間だったが床に就いた。だが、志門は散歩に出てくるとミカに言うと家を後にした。



家でミカに言われた事を志門はずっと引き摺っていた。



  “ 私は貴方の子供も産んだのに……酷い… ”



(決して家を(ないが)ろにしていた訳じゃない……だけど、自分は最低な人間なんだろうか…クソッ!)



志門は暫く歩き続け、遂に地上へ帰還した後に家族で夕涼みをした河川敷へ辿り着いた。あの時と同じように宇宙(そら)は星の瞬きで満ちていた。



志門は河川敷の斜面に腰を落とし宇宙(そら)を見ながらいろいろ考えた。



(凄く辛い……カインの剣の同位体を見つけてもループストライカーが無い…実際どうやって行けって言うんだ……もう諦めて全部夢でした、で終わらせるか………)




志門が思いあぐねていると傍に近づく人影があった。志門は気が付いたが敢えてそれを振り返る事はしなかった。


その人影は志門の少し離れた横に腰を下ろすと次のように言った、いや、心の中に直接語りかけた。





“ 私が貴方を支えるから、ここで折れないで……貴方の夢を終わらさないでっ! ”








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