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カインの使者  作者: 天野 了
『カインの使者』第二部 [ 世界複合編 ]
31/49

カインの使者 第二部 第20章「代 償」

支援のプレアデス船がループストライカーの退路を確保するため、アベルの軌道プラットフォームに衝突大破する中、軌道プラットフォームの霊子波動スキャンに成功したアクエラたちは何とかセイルへ帰投する。


セイルではケルブとセラフィムの最高評議会とサンへドリンの政務執行局による都市の霊子世界移行の準備が行なわれていた。マーナとエステルの会話の中、霊子世界移行の代償について語られる。


アクエラたちは持ち帰った情報を基に作戦を立てるが、ここで志門が思いもよらない行動をとる。


第二部 第20章「代 償」



「ダイブッ!」私はループストライカーを霊子界へ潜航させた。


{深くは潜れない……波動変換率、現在21%。これで一杯かっ(汗)⁉…現在深度で固定。プラットフォームへ接近を開始する!}


私は距離をカウントした。

「了解、物理接近……距離300、250、200、150…(見つかるなよぉ…〈汗〉」



{パッシブ…アベルの軌道プラットフォームは盛大にプレアデス船を攻撃しているみたいだ。気を取られているな――、霊子波動スキャン準備よし!}とElle・シャナ。




「距離100、90、80、スキャン開始!」


私は軌道プラットフォームへ向けてスキャニング(内部構造走査)を開始した。





(早く、早く…)私は祈るような気持ちでスキャンが終るのを待った。十秒も満たない時間が何十分にも感じられた。






「スキャン90%…」と、次が言い終わらない内に船体が揺れた。

{アベルが敵性霊子波動を発した。見つかった、逃げるぞ‼}とElle・シャナは叫んだ。


「待て、まだ終わっていないっ!」とアクエラ。

「逃げます、船が壊される!」私は叫ぶように答えると船を反転させた。


{ミカ、アベルとの距離が開かない⁉ 向うも移動している!}


「Elle・シャナ、もっと潜れ、早くっ‼」と私は狂気のように叫ぶ。



Elle・シャナはループストライカーの対霊圧ゲージを見た。


{今のループストライカーの状態でこれ以上潜ると物理復元が出来なくなる…クソッ!}




水面下を行く潜水艦ようにループストライカーは逃げたが、それを追うようにアベルの軌道プラットフォームはその航跡を追い続けた。


「距離20ファーロング(ファロン)…ダメだ、追い付かれる」と私。

{まずいっ、このままだと――}


アクエラと志門は表情を変えなかったが、それでも汗が顔から吹き出ていた。




その時、激しい衝撃音がパッシブセンサーに入って来た。




     “ ズゴゴォオオオォォ~ンンォオオオォンン… ”




「何だ⁉ この異常音はっ!」私は伝わって来る重力振動の元を調べようとしたが、先にElle・シャナが叫ぶ。


{プレアデス船だ! プレアデスがアベルの軌道プラットフォームに衝突した‼}


「えっ、そんな…」志門は絞り出すような苦しい声を出した。横に居るアクエラは尚も黙っていたが、その表情は既に歪み、引き攣っていた。





     **********





月と地球の中間点で行われた戦闘から離脱したループストライカーは何とかセイルに辿り着いたが、その後になっても支援に出たプレアデス船は戻らなかった。



特使の言うにはループストライカーを逃がすための体当たりだったと言う……



各人、その事に衝撃を受けたが感傷に浸っている暇は無く、持帰ったスキャンデーターの中身を調べた。

その結果は驚くべきものだった。


「アベルの軌道プラットフォームの構造は物理的なものだ。内部には時空機が二機、搭載されている。それはともかく…推進機関が異常だ!」とElle・シャナは空間に映し出されたプラットフォームの透視画像を見て驚く。



通常の噴進機関(核融合ロケットエンジン)の他、メインの推力機関にはカインの剣と思しい物が確認された。

それを制御する物はカプセル内で液体に浸された人間であり、それには同じくカプセル内に入れられた巨大な生物の脳の様な物に繫がれていた。人体の側からは同位体に向けてエネルギーパイプが伸びており同位体に取り付けられている出力装置に繋がっていた。



「これはバイオコンピューターじゃないのか⁉」と志門は声を上げた。


「人工生体頭脳…生きた人間の脳に神経接続して能力を強化している。なるほど、カインの剣の同位体にはニューラリンク(ブレイン・マシン・インターフェース)によって出力されているのだな」とアクエラは言った。



「要するに向うは人工的に、こちらのネフェリーム・バリアントを作っている、という説明で合っているかな…」とElle・シャナ。



「悍ましいな、これがアベルの科学技術か…彼等には人間性が無い」と吐き捨てるようにアクエラは指摘した。




私は、この軌道プラットフォームの能力について説明した。



「プラットフォーム自体は旧式な構造だが、霊子波動を使える事から、恐らく時空航行も出来るだろう…前に私たちが攻撃を受けた時にアベルの船は一度大気圏に突っ込んで船体が損傷したはずだ。これは霊子技術と現在のアべルの技術に大きな乖離がるからだ。ループストライカーのように霊子エネルギーと船体との同期は無いと言える。ただ…霊子エネルギーを使う事から相当な攻撃力と防御力を有している。プレアデス船が破壊された事はそれを証明しているし、今回、プレアデス船が体当たりをしたがプラットフォームの損傷は確認されていない、霊子波動で強力な防御フィールドを作ったんだ」




「分かった、話はここからだ」と志門は皆の顔を見て言った。




「ミカ、あの船に見つからないように乗り込めるか?」と志門。

「行くつもりなの⁉ 貴方…」私の気持は非常に重かった、正直に言えば行かせたくない、もし何かあれば…そんな気持ちが私の頭の中を覆っていた。


「向うが船の周りに霊子フィールドを張っていなければ、物理転送は可能だ」とElle・シャナが答えた。




「それじゃ、OKって事で…いいかな?」志門はアクエラの方を向いて言った。





       ◆




エステルはセイルの都市民たちに中央広場に集まるよう呼び掛けた。詳しい説明はケルブとセラフィムの最高評議会から都市民に伝えられており遅滞なく準備は進んでいた。



広場の中央には半球状のドームが作られ、その中に始とネフェリーム・バリアントが入り、行為を行う手筈が整っていた。




サンヘドリンの長官室でマーナとエステルはこの先の事について話していた。




「我々が霊子世界に入ればアベルも追って来られないだろうが…我々も戻る事は出来ない。それで……いいんだな、エステル」とマーナはエステルに問うた。


「地上と争えば多くの血が流れる…我々は別の形で生き続けなければならないんだ。人類としてのカインは終りを告げる」とエステルは言ったが、そこには深い悲しみの表情が見て取れた。


「都市の霊子界への移行はできるが…恐らく三次元の形態は維持できないだろう…ループストライカーのように搭乗員を護るための内部の空間や次元を維持出来るようには造られてはいないからな…」



マーナはそう言うと自分も気が付かない内に涙を流していた。




エステルはマーナの肩に手を置き、小さな声で言った。



「人間を辞める事……我々に求められた代償だが……それは粗、精神の自殺だ…」





     ********





私とアクエラたちは物理転送を行うため、軌道プラットフォームの霊子フィールドの展開している時間を詳しく調べていた。


そこで分かった事は通常時には霊子フィールドは展開されていない事だった。


「おそらく常時展開となると人間の方が保たないのだろう……あのカプセルの中に入っている人間が」とアクエラは指摘し、更に可能性を語った。


「あのカプセルに入っている人間は定期的に外へ出ているのかも知れないな」



私はデーターを基にカプセルが開閉の出来るものか、また開けた形跡が在るか細かく調べた。


「間違いない、これは出入りしている」と私は言った。



「都合がいい…物理転送で直接同位体を奪いましょう!」と志門。


Elle・シャナが志門を制止した。

「それはダメだ!同位体に座標を合わせた途端にバレるぞ、人間を送り込むしかない」




Elle・シャナの提言で志門が物理転送で軌道プラットフォーム内へ潜入する事が決まった。




先ず、ボディーコートに向うの乗組員の宇宙服に擬態させるプログラムを入れ船内の細かい情報を志門のクロスライザー(交感器)にインプットした。その中にはカインの剣の同位体の固定と解除の方法に関するものもあった。


アクエラは自分の腰に着けている薬装された小さな細長い円筒形の物を志門へ渡した。



「まさか、ここで使うとはな…」とアクエラ。

「これは何ですか?」と志門はその円筒形の物を顔に近づけて見た。



「これはネフェリーム・バリアントに使う予定だった。この装薬は神経と脳をコントロールすることが出来る。円筒形の物から空間に映し出されるオプティトロニックモニターで操作できる」


アクエラは打ち方や操作の仕方を志門に手取り足取りして教えた。



「何でこんな物を…どう使うつもりだったんですか?」と志門はアクエラに聞いてみた。



「…ネフェリーム・バリアントが我々の要求を断ったら使おうと思っていた」とアクエラは言いにくそうに志門に答えた。


「フウゥ~ン、そうなんだ……装薬は十回分………!一回 試してもいいですか?」

「えっ?」


志門はアクエラが答える前に彼女の首筋に円筒形の物を当てた。


“シュッ”という音がした途端にアクエラは立ったまま固まった。意識はあるが身体を動かせないでいた。




それを見た私とElle・シャナは驚いてアクエラに駆け寄った。



志門はモニターを開き、アクエラに要求を出した。

「僕を抱いて頭を撫で撫でして――っと。これでいいのかな?」と志門は言うとアクエラの方を見た。



アクエラは優しそうな表情で志門に近づき、彼を抱擁すると頭を何度も撫でた。


「好き好きアクエラお姉さ~んw♥」そう言いながら志門もアクエラを抱いた。



私は志門に駆け寄り、拳で彼の顔面を思いっ切り()ん殴った。優しい彼が、まさかこの様な事をしたのが許せなかったからだ。





鼻血を出しながら床に転がる志門だった。








本エピソードはSFミリタリーアクション『機動空母リベレーター』Ep:25「月高軌道上の戦い」とリンクしています。https://ncode.syosetu.com/n3174kl/25 対極から見た物語を楽しんで下さい。


本作『カインの使者』はSFローファンタジー作品ですが、これらに出て来るUFOループストライカーはSFミリタリーアクション『機動空母リベレーター』と同じタイムラインに存在する “ 超科学の産物 ” です。

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