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カインの使者  作者: 天野 了
『カインの使者』第二部 [ 世界複合編 ]
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カインの使者 第二部 第17章「エルメラの決断」

最高評議会ケルブとセラフィムへ赴く政務執行長官のエステル。議長に選出されたエルメラに会うがそこには想像も出来ないような案が用意されていた。

隔離室では始とネフェリーム・バリアントの細かな調査(検査)が進められる。その中でロタは二人に急いで性交を行うよう指示する。




第二部 第17章「エルメラの決断」



最高評議会ケルブとセラフィムの議長室で議長に選出されたエルメラはアクエラから提供された資料に目を通していた。


「セイルで保存されているカインの剣とアベルが所持する同位体、それと現在月と地球の中間の静止軌道で滞空しているアベルのプラットフォーム……それが時空機の母艦的な役割をした場合のセイルの防衛手段と対抗策、カインの剣の持つ力の制御に関しては、まだ解っていない、か……」


(さて、これをどう纏めるべきか……)



エルメラは手を組んで肘をデスクに突き、頭をもたげた。





暫くして職員の者が部屋に入って来た。


「議長、サンヘドリンのエステル政務執行長官がお見えです。どうされますか?」


エルメラはウゥ~ンッと唸った。

「よかろう、通せ!」



部屋へエステルが通され、彼女は右拳を左肩へ着けた。


「私の前で堅苦しい形式は要らん……こうして個人で会うのは何年ぶりかな…サンへドリン以来か、エステル」そう言うとエルメラは対面の床に椅子を作らせ座るよう促した。


エステルは椅子に座る前に評議委員会の会場で無礼を働いた事を陳謝した。



エルメラはエステルを椅子に掛けさせると次のように言った。


「確かに良くない事ではあったが、私がお前の立場なら…多分、同じ事をしていたかも知れん。最高評議会ケルブとセラフィムはカインの意思決定最高機関だ。その事を評議委員の多くは忘れている……84回目の次元探査計画の成功と終了、暫くの平和な期間が評議委員に胡坐を掻かせてしまったのだ。今回の事象……クライシストのアクエラの提言は評議委員たちに本義を取り戻させてくれた。エステルよ……お前は良い部下を持った」


そう言ってエルメラは微笑んだ。



エステルは立ち上がると身体をくの字に折った。


「私には身に余る言葉です。ありがとうございます、議長!」


「さて、用件は何か?」とエルメラ。


「はい、評議委員会ではいくつかの項目が定義されると思います。その中にアベルとの交渉を入れて頂きたいのです」





エルメラは目を瞑り暫くの間黙った。





エルメラは椅子から腰を上げると背中を向け、壁面に映し出されたセイルの風景を見ながら次のように言った。


「私の考えには幾つか思うところがある。一つ目はアベルとの全面戦争、二つ目は防衛に徹する事、三つめは……このセイル、都市ごと霊子空間へ移動する事…」


「三つ目の事は……可能なのでしょうか?」とエステルは問うた。


「歴代のループストライカーの残存霊子エネルギーを一斉開放すれば、このセイルごと霊子空間へ飛ばす事は可能だと思う」とエルメラは答えた。



エステルは驚いた。まさかそのような選択肢と方法が在ろうとは頭の片隅にも思わなかったからだ。



エルメラは次の寓話を語った。


「地上の神話の中に次のようなものが有ってな……お互いに戦う者を見た神は二人を悲しく思い、空(宇宙)の星座として遠く離れた位置に置いた…とな」



それを聞いたエステルは自分が要求した交渉が現在時点に措いて、余りにも現実離れしている事を恥じた。



エルメラはエステルに問うた。


「お前なら、先に言った三つの内どれを選ぶ…」


「…私にはその権限はありません。しかし、敢えて選べと言われるなら……三つ目の案になります。カインの存続と都市民の安全を考慮すれば、これ以上の選択は思い付きません。クライシストに協力しているプレアデスも戦争は回避するよう勧告していました」とエステルは答えた。



「フフッ、議会より先に結論が出てしまったな…エステル、三つ目の案に対応できるようクライシストを動かしてくれ。評議会は私が纏める」とエルメラはエステルに告げた。




       ◆




隔離室ではネフェリーム・バリアントの細かな調査が行われていた。



「二人とカインの剣の霊子波動は完全に同期。カインの剣の波動は完全に0値です。信じられない!これは、ただの鉄の状態だ!」と私は叫んだ。横に居た特使(プレアデス)も驚いたような顔をした。


「もし、波動値がマイナスだったら何が起きるんだ」とアクエラは言った。

「プラス側は武器適性の増加を意味している。マイナスはその逆だからな…」とElle・シャナも言った。



ロタは聖典を開き、ある個所に目を止めた。




“ 彼らは剣を打ち直して鋤とし 槍を打ち直して鎌とする。 国は国に向かって剣を上げず もはや戦うことを学ばない。”





「……剣を打ち直して鋤とし……‼」




ロタは始とネフェリ―にお互い愛し合うように言った。


「ええっ、どうしろって⁉」と始は慌てたがロタはもどかしいっ、という感じで次の指示を出した。

「抱き合って性交しろ、早く!」


このロタの言葉に私とマーナは思わず声が出た。


「ええっ…‼」私は両手で口元を覆い赤面した。

「この人だかりの中でヤルのか⁉」とマーナ。



「早く!」とロタは急かした。


「待て、ロタ。お前はやった事がないから分からないだろうが、いきなりは無理だ。先ず人払いをしろ!」とマーナはロタに言った。




部屋の外に出た特使とマーナたちはモニターに向かって始に呼び掛けた。


「始、こちらのモニターは遮断して置く(嘘w)、安心して彼女と行為に及んでくれ」とマーナ。


「楽しんでね♥」と私。

「良い結果を期待しているぞ!」とアクエラとロタは言った。

「どうかお願いします」と特使は祈るように懇願した。




    ********




マーナは計測員としてElle・シャナを残したが始はElle・シャナの顔を見て呟いた。



「恥ずかしいなぁ…(まるで、まな板ショウじゃないか!)」



Elle・シャナには好奇な表情がはっきり表れていた。

(早くやってくれないかなぁ、こんなところが直接見れるなんて!)




いきなり、しろと言われても始は無理だと思った。そこで彼はネフェリ―の気持を解きほぐすため4年前にあった出来事を彼女に話しだした。



それは四年前に自分たちの仲間と共に旅行へ行った時の事だった。船の上で交わした彼女との会話…




二人の脳裏に浮かびあがる当時の情景。



       ▼



 ……そう言うと彼女は肩に回した僕の手を握った。


 僕は慌てて手を引っ込めようとすると彼女は僕の手を引っ張ってこう言った。



 「このままでいい、暫くこのままで居たい…………こうしてくれていると落ち着く」




 この時、やっと僕は気が付いた。彼女はこの世界に来てからずっと心の休まる暇が無かったのだと。




 僕は少しだけ彼女を自分の方へ引き寄せた、彼女の髪が僕の肩に触れる。




 「ハジメは………私が欲しいか」


 「そ、そんなこと――――言ったら…」



 「何もしない――――欲しいか」






 「……欲しいって言ったら」




 彼女は優しい表情で僕を見ると手を僕の頬に添えて軽く唇を重ねた。


 「考えておくよ…ハジメ」





《https://ncode.syosetu.com/n6270em/ キャプテン独の日記『霊鉄のヴァリアント』より抜粋。》




 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・■      



       


始はネフェリ―にやさしく問いかけた。


「あの時、君はそう言った……今こうして再び君と会っている……あの時の答えが欲しい」



彼女は暫く始の顔を見つめ、黙って頷いた。





部屋の外に居た特使はそろそろだと思い、二人の居る所に周りから見えないよう遮蔽シールドを展開するようにElle・シャナにお願いした。それを聞いた他の者は残念そうな顔をした。


「えっ、それじゃ私が見れないじゃないか⁉ 私は計測員として、その行為を見なければならない」とエルシャナは不機嫌そうに言った。


{見なくて良いのです。貴方には恥じらいというものが無いのですか⁉}



(恥じらい?……チッ、仕方ないな)



Elle・シャナは渋々ながら遮蔽シールドを二人の回りに展開させた。同時に二人の姿は見えなくなった。







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