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カインの使者  作者: 天野 了
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カインの使者 第二部 第9章「意識の再会」

プレアデスの技術によって肉体から意識体へ分離した始は世界線の意識と繋がり、高次元から世界を観る事になる。始は四年前、彼女ネフェリーム・バリアントと最後に分かれた場所へ飛び、遂に彼女との再会を果たす。


第二部 第9章「意識の再会」



その後、この歪な形の世界線について協議された。


アクエラは現世界に複合した、もう一つの世界線は過去方向の世界線も含めて完全に複合したと結論付けた。

マーナは始と出会ったネフェリーム・バリアントが最終的に何処へ消えたかについて言及した。


「もと来た世界線が我々の世界に完全に複合した後、始が出逢った女がその後どの空間へ消えたか…結論は二つ、世界線の無い完全な亜空間(宇宙バブル)か、或いは我々の居る世界線へ再び出たというのが主な見方だが、今のところ別空間からこの世界へ転移した跡は無い」


「亜空間って何です?」と始はマーナへ質問した。

「世界線を持たない空間、閉鎖された空間で、ここでの時間の概念はない。前の世界でミカの乗ったループストライカー84号機が時空干渉で事故に遭った時、意図的に退避した空間もそれに該当する」


私はマーナに言った。

「救出は出来ないのですか?」

マーナに代わってアクエラが答えた。

「この亜空間は無数にあるんだ。別空間で特定の霊子波動を見つけ出すには霊子界へのアクセスが必要になる…現状では無理だ」


「前の時は船から霊子救難シグナルがセイルに向けて発信され続けていたから見つけやすかったのだが…」とマーナ。

「この船の能力では探知出来ないんですか?」と始は言った。

「先に別空間と言った…同じ空間次元ではないのだ」とアクエラは始に答えた。



プレアデスの特使が立ち上がると次のように提言した。

「亜空間に完全に入ってしまえば私たちもその後を知る事ができません。その女性が現在の世界線に再び現れた、という事はありませんか?」


(ありませんか?……)マーナは特使の言葉に何かの違和感を覚えた。


「それこそプレアデス側で分かっている事ではないですか、特使!」とアクエラは特使に詰め寄った。


マーナはアクエラの肩を引き特使から離した。

「…失礼いたしました、特使。我々の走査器でもこの世界線の現在までの別空間からの転移は確認できませんでした。特使、女は、いや、その女性は恐らくですが…未だ亜空間内に存在します」


「こんな時、霊子世界側から走査すればも()()も確認できるのに…」と私が言うと特使は少し硬い口調で言った。

「今は現状で出来る事を探しています」

そう言うと特使は始の方へ視線を向け、それに気が付いた始はお互いに視線を合わせた。


(何で、そんな悲しい目をするんだ……)


始はそう思うと特使に声を掛けた。

「特使は…何か知ってらっしゃるのでは…」



特使は敢えて目を逸らし次のように述べた。


「私たちは次の提案をしたいと考えています。先ず始さんのアストラル体を貸してください。私たち意識体は時空を観ることが出来ます。始さんをその女性、ネフェリーム・バリアントへ会わせたいと思っています。そこで彼女の思いを知ることが出来ます」


皆から少し離れて話を聴いていたロタとElle・シャナは良いアイデアという感じでお互い頷いた。


「アストラル体なら次元や現実にアクセスするためのエネルギー体として、時空干渉を最大限抑えられる!」とElle・シャナは言った。


マーナは決断した。

「アストラル体と同期してリアルタイムで彼女の霊子データーを採取できるかも……いや、今考えられる中では最良の手段だ」




     ◆




話が纏まると特使はプレアデスの船を呼び戻した。


ループストライカーはプレアデス船と並んで地球の低軌道へと進入した。




船の私はアベルの軌道プラットホームと地球を挟んで反対の位置に滞空した。


{現在、高度200ファーロング(ファロン)、軌道固定。プレアデス船も同高度を維持}


「よし!アベルの軌道プラットホームが見える位置には入るなよ」とマーナ。


「船を光子準励起状態に保ちます。対視、対電測、状態よし…アベルの軌道プラットホームに在るカインの剣の霊子波動の干渉を最小限に抑える。本船内のカインの剣の霊子波動に変化は見られない…」とElle・シャナはマーナへ告げた。


アクエラは次の指示を出した。

「プレアデス船へ特使と始を移乗させる、信号を交換せよ」

「…プレアデス船、信号受諾。移乗します」とElle・シャナ。



船内中央に居た特使と始は一瞬輝くと消えた。




   *******




プレアデス船内では始のアストラル体の分離作業が行われた。



始は初めて体験する事に不安を感じていた。始は光の中で宙に浮いたように仰向けに横たわり、上の方から何かの走査光が身体に照らした。様々な色が身体を照らしていくうちに次第に意識が遠退いて行く。



〈怖がらなくても良い。安心しなさい 〉

特使の感情が直接伝わって来たが、一回目の交渉の時より物質的な会話をしている感じがした。


〈あなたは今、私たちと同位体です。会話も肉体の時と同じように出来ます、貴方が今発している言葉は意識としての言葉です 〉


次に目を覚ますと下の方に自分の身体が光の中で浮いていた。

〈エッ、自分は何処に居るんだ? 〉


始はそう思っている自分の身体を探そうとしたが何処にも見えなかった。まるで意識だけがこの空間に在るように感じた。


《どうだ、始。うまく行ったか?》とマーナの声が聞こえた。

《ループストライカーをお前の意識と同期させてモニターしている》とElle・シャナが伝えた。


[ これは……今、自分の体が離れた所に見えている ]

《よし、分離は成功のようだ!》とマーナ。


《最初は慣れないが安心しろ。意識(精神)体の時空分離技術の面でプレアデスは特に優れている。これから行う事はお前が女と別れる直前の場面、女が亜空間の裂け目に落ちる瞬間を狙って会話しろ。空間が閉じてしまえば交信が出来なくなる。時間の操作はプレアデスが行なう》とアクエラは始に伝えた。


〈 では、始さん。これから、貴方のアストラル体を世界線の意識と接続します。貴方は全てが分かります、時間と場所も――では接続しますよ!〉


間を置かず始は過去を観た。と言うより世界を理解した。それは肉体では凡そ理解できない、言葉として表せないものだった。


〈しかし、これは…肉体に戻った時、大丈夫ですか?自分の頭は壊れるのでは…〉

〈大丈夫です。肉体に戻っても表現が出来ないだけですw ただ、インスピレーションやシンクロニシティという現象で覚知は出来ます〉と特使は答えた。


始は指定された時間を見た。

〈ちょうど四年前、午前中の砂浜で彼女との別れ……剣で空間を裂いてその中へ……見つけた!〉


ネフェリ―がその空間の中へ仰向けに入ったその瞬間、特使はその時間を止め、その光子を固定した。

〈空間固定、ネフェリーム・バリアントのアストラル体と本船を接続……実体化エネルギー、パラメーター安定、始さん、貴方と彼女を可視化します。どうぞ会話をなさってください〉



始は自分の姿が次第に見えていくのが分かった。そして、彼女ネフェリィの姿もハッキリ見えて来た。





始は仰向けに倒れようとする彼女を受け止めた。








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