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カインの使者  作者: 天野 了
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カインの使者 第二部 第8章「祈りと波動」

複雑に絡み合った世界線の解明を進めるミカとマーナ、アクエラたち。結論は存続か消滅という衝撃的なものだった。物理的な行動は状況を暗転させる可能性があるため安易には動けず、マーナたちは船の祭壇室で『ヤーワァ』〈神〉に祈りを捧げる事となった。


祈りの波動を監視していたミカは、その波動に異常な部分を発見する。



第二部 第8章「祈りと波動」




会談を終えた後、私たちは検出されたパラレルサイトの精査を行った。



私はループストライカーとの直接感応でダイレクトに世界線の時間経過を見た。


見たところ主な世界線は二つ、一つは私たちが居る世界線だ。奇妙な事にもう一つは途中で私たちの世界線と交わっていた。


私は一端、パーソナルディバイスの格納室から出てコックピットへ戻った。そして自分が見たイメージをメインパネルへ投影させた。



「歪だな…こんな形は初めて見た」とマーナは言った。



アクエラは短い溜息を吐くと次のように言った。

「推論通りだった。もう一つの世界線はミカと志門がこの世界を創った時に消えなかったんだ……あの時の位相(無と実在)転換で消滅しなかったのは……恐らく――これは推測だが前の世界でループストライカーが地球に一時帰還した際にアベルの軌道プラットホームから攻撃を受けただろう」


私は頷いた。

「あの時は船のプログラムの一部がやられていた」


アクエラは、そこっという感じで人差し指を立てた。

「通常の物理、電磁気兵器ではループストライカーの霊子プログラムは破壊出来ない、船自体がプログラムだからな…アベルは何を使ったのか?」


マーナはそれに答えるように言った。

「霊子ジャマ―……霊子兵器をアベルも持っていた……まさかっ!」


「その通り、今の現状と同じだ。カインの剣の一本はアベルの軌道プラットホームに在る」とアクエラ。



始は話に追いつけなくなっていた。

(一体どういう事だ?もう訳が分からないぞ…)


「どういう事になっているのですか?自分には理解できない」

始はアクエラに突っ込んだ。


アクエラは答えた。

「この世界は複合世界だ…同じ事を繰り返そうとしている。話を整理してみよう、カインの剣は3本存在している。先ず一本目は今の世界を開闢するために使われ消えた。もう一本は今の世界を追うように我々の今の世界と同化した。これが世界線の複合だ」

「残る一本が我々が現在持っているもの……か」とマーナは言った。


「我々が持っているものも、もう一つの世界線に存在したと考えていい……問題はそれがどういう意味を持つのか――という事だな」とアクエラ。


マーナは私に指示を出した。

「ミカ、もう一つの世界線が我々の世界に複合した時間、年代の詳細を出してくれ!」

私は複合した部分を最大化してパネルに映し出した。


「今から四年前です。時期は10月26日、22時くらい…これは――!」

「始が女と出会った時期だ」とマーナ。


それを聞いていた志門は呟くように言った。

「カインの剣は同じ波動を追って、僕たちを追っているのか……何か気味の悪い話だ」



「ミカ、この世界の未来予想線を出してくれ」とマーナ。


私は世界線上の上の部分、未来予想線を投影した。それは完全な二極分岐を示していた。分岐した枝の一つは途中で消えていた。



それを見たマーナは黙り、俯いた。その顔には汗は滲みだしていた。


「ミカ、これは何を示している?」と志門は聞いてきた。


「消滅か…存続…」


Elle・シャナは操作卓から離れ、ロタにこの状況を問うた。

「消滅は何を意味する?」


「宇宙の崩壊……ここには人も神 (プレアデス) もいなくなる、という事。この消滅が意味するところは次元の障壁が無くなって神と人が共に住む……というものでは断じてない! どんな世界であれ、居るべき空間が絶対に必要なんだ」とロタは答えた。



マーナはロタに言った。

「ここから先は数値では測れない……現状は我々が引き起こしたようにも取れる、我々はどう動いて良いのか…下手に動けば状況は一層悪化する可能性を孕んでいる。ロタ、『ヤーワァ』の声を求めてくれ。それと全員で祈れ!」


アクエラはElle・シャナに船内に祭壇室を作るよう指示を出した後、プレアデスへの対応を伝えた。

「プレアデスには一端、引き揚げてもらう。Elle・シャナ、向こうへ信号を」


Elle・シャナは信号を送るとすぐさま返信があった。

「特使を一人、こちらに送るそうです。船は引き揚げるとの事です」


コックピット前の空間に光が揺らぐと一人のプレアデスの者が現れ、同時にモニターに映し出されていたプレアデスの船は一瞬で消えた。


マーナは手短に状況を伝え特使も含めて私を除いた全員が祭壇室へ入った。



私はパーソナルディバイスの格納室へ戻り船と繋がって待機となった。




   

      ◆




かなりな時間が経ったがマーナたちは祭壇室から出てくる気配は無かった。


私は暫く彼等の祈りの波動をモニターで監視していたが、その祈りの波動を相殺するようなマイナスの霊子波動が混じっているのを見つけた。波動の出どころはコックピット下部のカインの剣を格納している部屋だった。


「鞘に収まった状態でこれか……もし、鞘から開放されればとんでもないエネルギー量だ」


私は安全のため部屋の遮蔽用霊子フィールドの出力を上げた。すると、それに合わせるかのようにカインの剣の波動も増大した。

「えっ…⁈」


私は本能的に危険を感じ、部屋のフィールドを元の出力まで下げた。



私は直ぐにマーナへ連絡した。


全員の祈りの中、マーナは一人祭壇室から出て私のところへ来た。

「何かあったか?」とマーナは私に聞いた。私は波動監視中の異変を説明した。


マーナは直ぐに全員の祈りを中止するように伝えた。



全員が祭壇室から出てきた。プレアデスの特使を除き、全員が疲弊していた。


マーナはロタの所へ走り、この事を説明するとロタはやっぱりか、という感じで言った。

「どうにもおかしいと思っていた。セイルで祈った時も…波動が阻害されていたんだ!」


「捨てるとか、距離を置いたらどうです」と志門が提案した。


「ダメだ! 距離の問題じゃない!こいつは何処までも我々の波動を追って来る。距離を置くほどマイナスの波動を増大させるんだ」とロタは叫んだ。


アクエラは特使に聞いてみた。

「プレアデスでこの剣の波動を封印できませんか⁉」

特使は首を振った。

「プレアデスには霊子波動を封印する技術はありません。私たち意識体は光以上のものコントロールすることが出来ない……」


始はアクエラに質問した。

「一体どんな波動を出しているのですか、あの剣は?」

「マイナスの波動……武器としての波動だ。破壊へ導く…」


始は腕を組んで考えた後、アクエラに言った。

「この波動は中和できないのですか? 自分はネフェリィ…持ち主からそれを預かりました」


アクエラは始に言った。

「始、言いたい事は分かっている。自分なら何か出来るんじゃないかと……どう思う、マーナ」


マーナとロタはアクエラの方を向いた。

「始の言う中和という考えは通用しない。抑える事は出来るが消えることはないんだ」とマーナ。


志門がマーナに近づいた。

「では、波動をプラス側へ変換できないんですか?霊子でエネルギーの反転フィールドを形成するとか…

私は志門に説明した。

「霊子波動は存在の原理そのものよ。その指向性はどうやっても変えられない、マーナの言うように抑え込むしか方法が無いの」



始はロタにカインの剣の格納室へ連れて行ってもらうようお願いした。

「とにかく、話合っているだけじゃ分からないから、やってみましょう!」

「何をするのだ?」とロタは始に聞いた。

「持ち主は自分に預けたんです。そこに意味があるのなら…」

「なるほど、事象の裏側にある意味は重要だ…」


ロタはElle・シャナに自分たちを剣の格納室へ送るよう指示した。

「格納室の遮蔽フィールドを一時的に解除する。少し身体に影響が有るかもしれないから全員注意して…解除と同時に転送する。カウント…3,2,1転送!」


「ウッ…!」全員、僅かにだが頭に何かの衝撃?を受けた感じがした。


私はElle・シャナの横に来て操作卓に表示された波動モニターをメインパネルへ展開した。


「剣の霊子波動が…弱まった⁉ マーナ、チーフ(アクエラ)、確かに剣は自発的に波動を弱めました、始の霊子波動は一定で変化はありません!」


マーナはメインパネルを仰ぎ見て呟いた。

「志門の家で大きな影響を受けなかったのは始が居たから…なのか⁉」



この事により、カインの剣が発する波動には、その持ち主であったネフェリーム・バリアントの波動が関係しているのではないか――という推測が成された。










この第二部は全体の構成は考えていません。即興で書いています(汗)

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