表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

第3話 道化は突然に

  眠い目を擦りながら部屋に戻り、装備を整えた。流石眠いままでは上手く戦う事ができないので戦場に行く前に1度寝ておく事にした。


「なんか放送聞こえたけどお前らも行くのか?」

  いつの間にか部屋にいたロベルトが外を見ながら呟いた。少し笑っているかもしれない。

「そうだけど?」

  俺は装備を整えながらロベルトに返事をした。

「俺も参加する事になってんだ! お前の分隊でな」

  ロベルトは大きく笑った。

「はぁ? マジかよお前が来るとか疲れるだけだわ」

  当たり前の事だ。

  前に潜入の任務の最中に敵を目の前にして攻撃できないストレスで急に暴れだした事がある。

  同じ分隊で連れていきたいと思う奴はよっぽどのもの好きか、ロベルトと同じ心の小さな兵士だけだ。


「疲れるって何がだよ!」

「存在が疲れる」

  全くのその通りだ。戦場以外でも、知り合いが目の前に現れると必ず悪態を吐いたり、相手の禁句を簡単に口走る。

  俺の仕事もこいつのせいで毎回増える事になって本当に疲れる。

「だったらお前より俺の存在が必要だと思わせてやる! 帰ったらお前の存在なくなるからな!」

「そうか」

  なるべく面倒な目に合わないように軽く返事をしただけで意味不明な言葉に関して言うのはやめておいた。


  俺は限界が来て寝てしまったムノウを担いで外に向かった。ついてきて欲しくない男も後ろにいるが。

  ロベルトは俺に対して色々と文句があるようで俺を怒らせようと知っている限りの言葉を使ってきたが全て無視された事で不貞腐れてしまった。



  外には大量の兵士が集まっていた。

  皆思い思いの感情が渦巻いていて、所々で今回の作戦の内容を話し合っている。

  だが基地長が現れてからは全員話をやめ、敬礼をし、指示を待った。

  勿論、俺達も。


「よし、全員集まったか?これから作戦の確認をする」

  真面目な顔で手によるジェスチャーも加えながら作戦を皆に伝える。


「この軍はA.B.C.Dの4つの部隊に分けて移動する。新兵は全員AとBに参加する。Cは軍に入って5年以上経っている者達を参加させ、Dには全体の指揮をとる者と遠距離戦闘を得意とする者達を参加させる。そして突入までの流れだ。まずAとBの兵士達で敵基地を大きく囲んだ状態で進む。横2列で交互に進めば敵が戦力を読み違えるかもしれん。Cは敵基地の正面入口方面から徐々に間を詰め、敵に気づかれてから突撃する。Dは後方支援。あと、俺の事は今作戦では基地長ではなく司令官と呼ぶように。以上だ。各員指定された車両に乗り出発する。レン・レーヴェの分隊は俺の車両に乗れ」


  俺は何故この分隊だけ司令官と同じ車両なのか何となくわかった。

  いや、わからないとおかしいだろう。


  まだ俺達だけ何の命令も受けていないからな。




  ガタガタした道を通っていて凄く乗り心地が悪い。

  今は司令官とオフロード車に乗って移動中だ。司令官には少し寝る事を許可してもらったので1時間程寝た。


「君達だけ場所を変えて話そうと思っていた」

「どういう事ですか?」

  俺は真剣な眼差しで司令官の言葉に問いを返した。

「さっき俺が言った作戦にはまだ続きがある。この分隊はAの新兵達に紛れて敵基地に突入させる。元々A.B.C.Dどの部隊も囮だ。この分隊が一気にナベル総司令官の元へ進む為のな」


  司令官はこんな大役を俺達に任せるなんて随分と信用してるようだ。

  他の組織の司令官は任務中に少ししか見たことがないが、戦場に向かっている最中にこんな命令を出す人はいないと思う。


「あの、そう簡単に行けるとは思えないんですが」

  流石に一気に行くのには無理があると思う。

  こっちの全ての部隊が囮とは言っても敵の兵士をくぐり抜け基地内へ潜入なんて1人でならいけるかもしれないが分隊一緒だと隠れるのがやっとだ。


「行けるさ。AとBで基地の四方を囲んだ状態で進むから敵はどこに戦力を集中させればいいのかわからなくなる。そこでCが正面から一斉攻撃を開始すれば敵の不意を突くことができる。慌てて戦力を正面に集めた時がこの分隊の出番だ。手薄になった側面から突入開始だ。どうだ? これなら行けるだろ」

「そう...ですね。はい、行けますねこれなら」


  突入できる事はわかった。

  だが、1つの大きな不安が消えると新たに隠れていた不安が現れる。これだけはどうしようもない。戦場に不安は付き物だこればっかりは慣れるしかない。


「自信を持て。お前達なら出来るはずだ」

「はい⋯⋯」

  つい弱気になってしまい、言葉に間を開けてしまった。終いには司令官に元気ずけられてしまうまでに至った。


「ビビってんじゃねえぞ! この程度で怖気付く隊長について行く気はないからな!」


  ロベルトが俺の事を怖気付く隊長と抜かして、少し腹が立ったが本当の事なので言い返せなかった。


「お、着いたな。降りるぞ」

  司令官に連れられて俺も車両から降りた。

  まだ不安は抜けきらないが、いつまでも引きずっていられないので今は忘れることにした。

  結局忘れる事はできなかったが。




  作戦は上手く進んだ。

  どの部隊も何のミスもなく着実に俺達が突入する準備を整えてくれた。あとは俺達が突入するだけだが。


  俺はナベルの基地に単独潜入中。完全に油断していた。


  15分程前、俺はムノウとロベルトらで突入する際の合図の出し方を考えていた。何度もロベルトの反対により考え直している最中に車の裏から何かの落ちる音がした。

  ムノウとロベルトと俺はその物音が気になり、俺は2人に見に行ってくるように言った。


  後悔している。俺だけその場に残った事に。

  俺が1人になった途端、急に地面の下から何者かが現れ俺を捕まえて引きずり込んだ。

  近くには多くの仲間がいたので敵が来てもすぐに処理する事ができると油断していた。

  油断大敵とはこの事だ。


  だが好都合だった。

  俺を攫った敵は頭が悪かったのか、それとも単に慌てていたのか、腰に付けている縄で俺を縛ろうとしなかった。その為、俺は簡単に敵を無力化する事ができた。

  幸い敵は1人で色々と便利そうな物を持っていた。

  扉を開ける為だと思われるカードキーに縄、銃を持っていた。銃は視力の為使えないがカードキーを手に入れる事ができたのはよかった。

  大方成果が欲しくて単独行動でもしたんだろう。敵にもこういう奴がいてホッとした。


  という事で誰にも見つからずに敵基地内に潜入する事ができた。

  だが元々持ってきていた荷物は、置いてきてしまったので今は敵から奪った道具といつも体を洗う時以外肌身離さず持っているバトンだけしかない。

  1度仲間の元へ戻る事も考えたが、こんなチャンスは2度と来ないと思い、先へ進む事にした。


  地下の道はマンホールで繋がっていた。元々下水道だった場所をリフォームしたのだろう。

 

  基地内はやけにさっぱりしていて道には障害物1つなかった。隠れる場所がないと急に角から現れる敵が怖いので、なるべく廊下を使わずにたくさんの部屋を経由して進んだ。

  さっきのバカのカードキーがあって助かった。


  少し進んだ先に大量に箱がある部屋に着いた。大量の箱に隠れながら進んでいた途中、番号しか書いてなかった箱以外に1箱だけ文字の書いてある箱を見つけた。


  箱にはMLLDと書いてある。

  正直その文字の意味が全然わからない。何より1つしかない所が俺の頭を混乱させる。


  興味が湧いて箱を開けてみようとした結果。それは聞こえた。


「液体金属だ」


  背後から声がした。

  急いで前に飛び出して、少し間をとり後ろを向いた。


  男が部屋の扉の前に立っていた。気味の悪い笑みをこっちに向けている。これは笑顔と受け取っていいのだろうか。


  よく見ると男の背後の扉から煙が出ている。


「あ、これ? お前が逃げれないように壊しといた」

  急に男が扉の事を話したので驚いたが顔には出さずに冷静さを保ちつつ反対の扉を見た。


「そっちもな」

  逃げるのは無理なようだ。だが、こちらとしてもこの男が報告にも行かずに部屋を密室にした事は好都合だった。

  報告さえされなければ俺はまだ誰にも見つかっていないのと同じだ。


  男は逃げられないと知ったレンを見てクスクスと笑っている。


「警報が鳴ってないってことは俺の事、報告してないのか?」

  俺は男に問う。見た目に反して少しは話が通じる奴だと信じたい。

「いや、報告したんだけどなぁ、あの人随分な自信家でね、ネズミ1匹なんてお前が入ればどうにでもなるって言って聞かないんだよ。あ、お前って俺の事ね」

  男はおかしな口調で説明した。

  この態度からして完全になめている事は一目瞭然だった。


「なんだよ〜無視ですか〜? はぁ、ま、それでもいいけど。あ、なんでお前を見つけたか教えてあげよっか」

  男は首を左右に振り不敵な笑みを浮かべながら話し続けた。


「あんたがさっき地下通路で倒した奴、俺んとこの部下でね。いつも慌てる子なんだよぉ〜。今回も縄、持ってった筈なのに使うの忘れててねぇ。全く、バカだよねぇ」


  縄を使ってない事がわかっているという事はあのバカな敵はこの男にだけは報告したと言う事か。


  しかしこいつは色々と情報を吐いてくれる。バカな部下の上官もまたバカだという事だ。


「液体金属とはなんだ」

  さっきから気になっていたので聞いてみた。

「え〜また無視ぃ? ま、いいけど」

  男は頭を掻きながら舌を出し天井を見ている。

  この男の考えはよくわからない。表情も目の動きも口調も全てが今までと違って読みにくい。


「液体金属って言うのは、あんたらじゃ到底手に入れることができない代物。⋯⋯⋯やっぱりーー説明するの難しいから自分で調べて!」


  男は急に無表情になったかと思いきや、目を大きく開き、全ての歯が見えるくらいの大きな笑みを浮かべながら襲いかかってきた。

 

 この男は何を基準で動いているのかわからない。


「攻撃を捌きながらどういう物か考えな!」

  流石に意味がわからないのでつい叫んでしまった。

「ふざけんな!」


  道化との戦いが始まった。

かっこいい戦闘シーンが書けるようになりたい!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ