4 いい人(?)のようです。
レイをモフる。
フィールド出たことないので、とりあえずはレイさんについていく。
「あの、レイさん」
「何だ?」
「僕、実は異世界から来たんですよ」
くるりとこっちを向いたトパーズのような瞳は、少し笑っていた。
「そうだと思ってたぜ。んな無茶苦茶なスキル、勇者以外にないだろ」
「あ、いえ勇者とかでもなくて。僕、巻き込まれまして、間違って来ちゃったみたいなんですよ」
「……何というか、うちの国王がすまん」
「ええ、本当ですよ。あ、来たみたいですよーーじゃあ早速試し斬りしてみましょうか」
駆けてくるゴブリンは二匹。それぞれ手に石斧のようなものを持ち、またそれを振り回している。
「えーと、じゃあ試しに」
剣技、『居合』。高速で抜刀しながら相手を斬るものだ。
刀を構え、そしてーー
「…ふぅ」
背後に抜けたゴブリンの体は、綺麗に両断されていた。
「すげぇな、初めてにしちゃあためらいもなかったが」
「あ、すいませんもう一匹任せちゃって」
「ほんとーになんでもスルーだな。いいよ、お前のことが気になってはいたから」
僕はクエストにあった討伐のための耳を切り取ると、アイテムボックスへ突っ込んだ。
「レイさん、今日はありがとうございました。今度装備を新調するなら、僕がやりますよ!」
「いやいいよ、ってかお前弟子なんだろ?」
「…弟子ですが、実のところ今は他の都市に行ったりしてみたいんですよ。誰かと組むのも良さそうですふにゃ!?」
僕の手にぱたぱたと尻尾が当たっている。
モフっていい?いいよね?
「……ふっ(モフモフモフ)……落ち着け僕(モフモフ)……冷静になるのだ(モフモフモフ)」
「何しやがる!」
その拳骨はスカッと僕を通り過ぎる。
「お主も…(モフモフモフ)悪よのう……(モフモフモフ)」
「そ、そんなに撫でんなアホ!」
「ふふ、(モフモフモフ)脅しにもお願いにも買収にも応じない(モフモフモフ)、そんな僕が大好きだ」
「……知り合いの猫の獣人を紹介しようか」
「乗った!」
猫っ毛。モフりたい!
「あ、じゃあ俺が店に行く一ヶ月後までに俺の装備品と旅道具揃えておけよ」
「うん!……へ?」
「俺が連れてってやるよ。ちょうど目的も諸国行脚の探し物みたいなもんだ」
なんというか、レイさんって。
「良い人ですね!」
「おいちょっ……!?」
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レイ・フォートリル 称号 : 実は良い奴 モフられマスター
Lv45
HP 2389
MP 980
STR 785
INT 65
AGI 890
DEX 230
種族付与効果 咆哮 気配遮断
能力 武芸の求道者 爪術の天才
特殊スキル ブラッディ・ブレイド
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「というわけで、一ヶ月後にここを出て行くことにしました」
「そう…か…異界の者なら旅をしたい気持ちは抑えられんだろうしな、それに世話焼きのレイ坊が見てくれるんじゃ、わしからは何も…」
「冒険者を留めおくなんて、女神リーシアでも出来ないよ。あたしはあんたに会えて楽しかったしね。マリアにも伝えておくよ。ーーさて、じゃあレイの装備を整えなきゃね!」
エリアもジーグさんも本当に良くしてくれた。風の噂でも届くように、少しは頑張ってみよう。
それでは作業を開始しよう。
まずはプロット、どんな鎧を作りたいのか、どんなものがいいのか。
彼の得意な戦術は恐らく、懐に飛び込みヒットアンドアウェイを繰り返す戦法だろう。
恐らく暗殺戦法。とすれば、あの偽金貨に使われていた金属が好ましい。わずかとはいえ、この世界には溢れているーーミスリル。
ビバファンタジー金属。
僕の『斬』とは一線を画する防具や武器。
そうして、あっという間に一ヶ月が過ぎた。
透「レイさんは気持ちよかったんです」
バステト「まぁ、分からなくはないけど…気持ちよかったしね」
透「あの嫌がるレイさんを屈服させるのも楽しいんですよ」
バステト「趣旨が違うわよ!?」
次回は旅に出る…直前と勇者たち。