3 弟子入りするようです。
ギルド&ドワーフ!
僕はマリアさんに背を向けて、歩き始めた。勇者①②③④はどうでもいいから、先に進もう。
マリアさんが言っていた工房より、先にギルドに向かおう。
扉を開けると、ガタイのいいお兄ちゃんたちがジロリと目線を向けてきた。
「冒険者ギルドにようこそ!登録ですか?」
ぱっつんぱっつんの体のお姉さんがものすごく笑顔で語りかけてくる。何だか後ろからの視線が怖い。
「はい。説明をお願いしてもいいですか?」
「かしこまりました。
ギルドに登録すると、冒険者として活動できます。最初はFランク、最大がAランクです。特例でSランクがいますが、基本その人たちは化け物ですので、気にしないように。
それから、怪我や病気、また、死亡した場合もギルドは責任を持ちません。依頼は自己責任で受けてください。
騙された場合のみ責任を持ちます。ギルドが背景調査を行ったのちに正式に依頼するためです。
失敗した場合は、報酬は0となりますので、それは理解しておいてください。
まあこんなところですね」
「ありがとうございます。では登録お願いします」
「では、登録料銀貨一枚を」
亜空間収納へポケットを繋いで銀貨一枚を取り出すと、カウンターにことりと置いた。お姉さんはそれを受け取りカウンターにあったレジスターのようなものに入れた。
「ではステータスを反映させますので、指をここに」
透明なプレートを差し出され、真ん中に指を置くと、一瞬光ってすぐ暗くなる。
「はい、ギルドプレートです。平常時はランク、名前が記載されています。ステータスを隠すこともできます。それから、再発行には銀貨一枚いりますから、気をつけてください」
「はい」
四角い銀のプレートをまたポケットから亜空間収納に仕舞うと、僕はぺこりと礼をして立ち去ろうとした。
「よう新入り。お前そんなひょろっちくてやってけんのかい?」
そんな声が聞こえて、そっちを見るとーーニヤニヤと笑う筋肉ダルマが。
「いえ、戦闘向きのステータスではありませんし、しばらくは採集などですね」
「……ほう?」
「ですから、しばらくは街の雑事をやりながら、腰を据えてレベルをあげて行こうと思います」
筋肉ダルマが感心したように頷いた。
「悪いな新入り。お前みたいなお坊ちゃんはなかなかどうして死に急ぐから心配になってーーこっちのレイがせっついてきてよ」
「ちょ、言うんじゃねえバカ!」
狼の耳。銀色の尻尾。精悍な顔立ちに、綺麗な筋肉。
「心配してくださってありがとうございます。お兄さんも頑張ってください。あ、あと誤解してるようなのでーー僕は女です」
全員の目が点になった。
「ここがジーグの工房…」
すう、はぁ。
古ぼけた建物からは槌音が淀みなく聞こえてくる。工房の入り口へ入ると、ドワーフのお姉さんがじろりと僕を睨んだ。
「あんた何しに来たのさ。紹介以外は立ち入り禁止だよ?」
「あの、城内の騎士団のマリアさんの紹介で、」
「マリアの!?」「何じゃと!?」
爺さんまで出て来たよ…。
「これ紹介状です」
爺さんが目を通し終わると、僕を見てニンマリした。
「主はDEXが9000、と言ったか…ならばワシの技術を覚えてもらおう」
「はい!」
僕はこうしてジーグさんに弟子入りした。
あの娘さんはジーグさんの孫娘で、エリアと名乗った。彼女はマリアさんと友達のようで、マリアさんのことをいろいろと聞いてきた。
「ね、あんたマリアの恋人?」
「まさか。僕は女ですよ?お友達に決まってます」
「「ハァ!?」」
「あれ?」
今世紀最大の衝撃じゃとジーグさんが言った。失礼な。
「マリアさん綺麗で一途なのにシグムントは気づいていないんですよ、乙女をなんだと思ってるんでしょうね」
「シグムント…だったのね。今度会ったら問い詰めてやるんだから!」
それから僕はそこに住むことになった。
「ふっ…!ふっ…!」
カァン!カァン!ジュワッ!
焼き入れをやりながら僕は自分の剣を鍛える。目指す形は日本刀、折れない、『なんでもきれる』刀。
なました鉄を無心に叩き、形成し、そして仕上げていく。
「中々筋がいい」
ジーグさんが褒めた言葉を聞いて、ばっと顔を上げる。打った刀は黒い輝きを持っていた。
「お前さんのペースで吸収されたら、こちとら商売上がったりじゃな」
「ありがとうございます!」
「試し切りでもしてこい。ーーと、誰か来たようじゃな」
僕がジーグさんと出ていくと、その人物は驚いた顔をした。
「新人…お前弟子入りしてやがったのか!」
「お久しぶりですレイさん」
ピコピコ動く耳と尻尾。もふりたい。
「ちょうどいい、レイ坊。お前こいつについてって、試し斬りしてこい」
「は、はぁっ!?いや別にいいけど、そいつフィールド出たことねぇんじゃねぇの?」
ザッツライト。
「迷惑はかけません。ギルドで依頼を受けて、行きたいと思います。いずれにせよ、ジーグさんにお世話になり続けるわけにもいかないです」
「…そうか。ならついて来い、依頼書があったはずだ」
ギルドの依頼書を剥がして持っていく。受付のお姉さんが「やめといたら?」と僕を見て言う。
「あ、えっと、レイさんがいるので大丈夫だと」
「レイ!?へぇ、あの堅物がね。じゃあ行ってらっしゃい」
「レイさん、ありがとうございます。えへへ」
「あ、あ…。まあうん、新人を守るのは俺等の務めだからな」
「あ、その事なんですが。ちょっと見ててくださいね」
指に剣の刃をぐさっとーー
「なにやっ……え?」
「これが僕のスキルです。スルースキル……あらゆる攻撃や障壁、束縛を通り抜けられるという超便利スキルです」
しばらくレイが絶句する。
「レイさーん?」
「…………はっ!なんだよそれ」
「だから安心して見ていてください。信用できる人にしか言ってないですから」
「俺を、信用…したのか?」
「ええ。レイさんは耳と尻尾に如実に表情が出ますから」
「なんだと!?そんなバカな…ポーカーで負けるのはそのせいかっ!?」
「はいたぶん」
ぬおおおおくそったれえええと叫んでいるレイさんはちょっと可愛かったりした。
透「まさか獣人のお兄さんの差し金だっただなんて」
まあ、うん。一話でハイペースだけど、とっとと旅立たせたいからね。手短にいくよ。
透「僕の辛く苦しい修行は割愛しまくりですね」
ものづくりは生産チートだからね。辛く苦しい修行はしてないと思うよ。
透「でも、ほら炉の前って暑いじゃないですか」
うーん…まあ。そうだね。そういうことにしておくよ。