全てが降りかかった王妃は
時間が足りない
王族7人の死去により、
国の政策は延びに延びている。
王太子を皮切りに6人の王子を相次いで失い
王は私に白雪と国を任せ逝ってしまった。
国がやるからには、多くの民が関わる大事業。
上層部にとっては少しの空白が
現場の人間にとっては、大きく状況が変わる長い長い待機時間となる。
そんな案件が
ゴロゴロと
ゴロゴロと
今、
目の前に転がっているのだ。
たまったものではない!
時が残酷に過ぎ
疲れが思考を鈍らせる。
待ったは出来ない、
しかし安易にも進められない。
見落としがないか、
誰かが糸を引いていないか
待った時間があればある程、
更に様々な人間の思惑が絡む。
何故後回しにするのかと
ウチよりあちらを優先するのかと
人命はどうなるのかと
全て優先したく
全て人命がかかっている!
叫びたくてたまらない
私の時間だけ
世界より遅く進んでくれはしないだろうか…
「王都からザイード港までの道路整備の進捗はどこまで計画から遅れているのだ?
期間が延びることによる追加経費の試算は済んでいるだろうな?」
こんな話ばかりだ。
わかってはいる。
そんなものは既に話がついていてから、己に報告されていることなど。
宰相以下城勤めの人間は優秀なものばかりだからさほど心配はしていない。
しかし、それぞれの背景を持っている。
一族、
友人、
使用人。
城勤めが長ければ長いほど、
優秀であり、しがらみだらけであり、
動きやすく、動きにくい。
そんな者だらけだ。
信用はしているが、信頼はしてはいけない。
哀しい立場が王だ。
現在は王がいない為、王妃の私にその役割が回ってきている。
あらゆる案件を気にかけ、
指摘し、
時には待ったをかけ、
時に背中を押し
完成まで見守る。
それが携わる人間への評価であり、
労いであり、
牽制でもある。
王の力は恐ろしく人を動かす。
それを忘れてはならない。
側近たちには
王室の事業を任された者という箔がつく。
上手く終われば
晩餐会や舞踏会への招待があり、
華々しく賞賛を浴びて次のステージへ。
不正があれば
厳罰がくだり、路頭に迷う。
そうでなくても
上手くいかなければ王を失望させたと
人々に認識され出世が見込めなくなる。
ハイリスクハイリターンの仕事である。
それを公正に見つめる目があると王は示さなくてはならないのだ。
矢継ぎ早に四方八方へ指示を出す。
言葉を放った先から
また新たな案件が舞い込んでくる。
その昔、
東の黄金が取れることで有名な国には、
1度に7人だか10人だかの人間が
同時に話した言葉を理解し
それぞれに違えることなく応えたという。
是非その秘技身につけたい!
そんな事を考えながら、
呼びつけた城代に問う。
「アレは今、どうしている?」