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人形姫の銀扇使い  作者: 休憩室長
第1章《目覚めと旅立ち》
1/1

異世界転生したら人形になってました。

 初投稿です。

 皆様、宜しくお願いします!



 あまりに唐突な事だが、僕は今、凄く同様している。


 だって、硝子の箱に入れられている僕は、至近距離で猫耳少女に凝視されているんだもの。





 まず、何故今僕が硝子の箱の入っているかについてだが、自分でも分かりません。

 次にここはおそらく異世界である。

 何故異世界だと思ったかについては、自分が事故で死んでしまった記憶があるのと、目に見える非現実的な光景を目の当たりにしたためだ。


 うん、トカゲ人間とかケモミミ人間とか、鳥人間とかを見たら嫌でも異世界だと思いますでしょう?


 とまあ、それは置いておき、何故今猫耳少女が僕を見ているかについてだが。

 どうやら僕は売り物らしい。

 最初は自分が奴隷なのだろうか、とも思ったが、聞こえてきた言葉に絶句したのはつい数分前のことだ。


「こちらの『人形』は幸運を運ぶといわれる、不思議な『人形』なのですよ。お嬢さん、良ければ安くするけど?」


 こちらです的な感じで、僕を示す女性店員。

 ……人形…だとぅっ……!?

 どうやら僕は人形らしい。

 すごく顔がひきつりそうになったけど、人形だからか、簡単に完全なポーカーフェイスが出来ました。

 というか、幸運を運ぶとか言わなかった?

 僕、そんなこと出来ません!

 出来ることといえば、家事位です!

 というかそれより僕、凄い見られてるんですけど!?


 暫くの間猫耳少女は、女性店員の説明を聞きながら、僕を凝視していた。

 すると保護者の方だろうか。

 猫耳少女によく似た猫耳の青年、おそらく兄?が欲しいなら買ってやる的な事を言ってます。

 まあ、今は人形な訳ですけれども、日本人としてはなんだか微妙な感じですね。

 なんていうか、奴隷として売られてるって感じ。


 そんな事を思っている僕をよそに、猫耳少女は眼を輝かせて「いいの!?」と、青年に問う。

 青年は少女の言葉にしっかりと頷き、優しい声で「いいよ。」と言う。


 うん、分かってた。

 凄い欲しそうな顔してたもんね、現在進行形で。

 そりゃ買おうとしますよね。

 僕も妹いたけど、こんな顔されたらちょっと高くてもつい買っちゃってあげてたもの。


 青年の言葉を聞いた店員さんは三分くらいだろうか、奥から鍵を持ってきて、僕が入っていた硝子の箱の鍵を開けた。

 僕は焦った。

 僕は今、人形なのだが、先程まで凝視されていたので無意識に体に力が入っていたみたいだった。

 焦った僕はすぐに体の力を抜き、人形らしく店員に抱かれる。

 そしてそのまま少女に手渡され、嬉しそうに頬擦りされた。


 ふおおおおおっ!?小さな子供の肌ってこんなにスベスベなのかっ!?

 というか、耳!猫耳がヤバい!!

 猫耳がくすぐったいです!!


 そんな感じで心の中で絶叫している僕は、ポーカーフェイスに力を入れる。

 だって、人形が動いたら怖いでしょ?


「気に入ったようでなにより。他に何か買うのだったらお伺いするけど?」


 ……この女性店員接客する気があるのだろうか。


「いや、今日は妹の誕生日プレゼントを買いたかっただけだからな…。アンネ、今日はありがとう。」

「アンネーラおねーさんありがとう!」


 …ああなるほど、知り合いだから砕けた口調でしたか。

 なんていうか、凄く幼馴染み感が凄い言い方だな、猫耳兄さん…。

 というか、今さら店員の名前知ったよ僕…。


 その後、アンネーラさんと青年が世間話を続けている間、僕は妹の遊び相手になっていた。

 どんな遊びかとかは聞かないで欲しい。

 僕の大切なものがゴリゴリ削られますから…。


 暫くして、青年が話を終えたのか、妹の手を引き、僕を担いで何処かへ向かう。


 見えてきたのは豪邸というか、城だった。

 うん、予想外?予想以上?まぁ二人の服が凄いお金かかってそうだったから、ある程度は予測してたけど…。

 デカ過ぎだわっ!!

 明らかに王様住んでそうな城ですがな!!


 兄妹がデカい門の前に立つとゆっくりと開いていく。

 するとメイドさんと執事さん達が「お帰りなさいませ、王子様、姫様。」と頭を下げてお出迎えしていた。

 予想外が適切だな、これは…。





 あの後、あの姫様の部屋で暫く遊ばれていたら、食事の時間がきたそうで、メイドさんが猫耳姫を連れて現在僕一人の状況である。

 ボッチじゃないもん!!


 まぁ、とりあえず動けるか不安だったのが、難なく立てれたよ…。

 ただ人形だからか、関節部分がギシギシするけど、普通に生活する分には問題ないようだ。

 あーあと、声も出せるかどうか試してみようかな。


「……あー、あ!?」


 …すっごく綺麗な声が出た!?

 まるで少女のようでありながら、女神の様な美しく、綺麗な声だ…。

 それにしてもまぁ、僕は男の子な訳で?こんな綺麗な声だった訳では無いので、すっごい違和感がある。

 というか、すっごく女の子の声である。

 ちょっとびびった。


 声で気になったので、次に今の姿を確認すべく、鏡を探す。

 服がドレスなので、まぁ女の子の姿なのだろう。

 考えたくないけど…。

 それで、この広い部屋は、しっかり片付けてあり、キョロキョロと見回す程度ですぐに見つかった。

 僕はドキドキしながら、恐る恐る鏡に近付く。


「…………。」


 あー、うん。

 鏡に映ったのは、10歳位の『美少女』。

 髪は踝まで届く長く綺麗な銀色で、眼は赤と青の宝石のようなオッドアイ。

 スッと通った形のよい鼻に、桃色の唇。

 眉毛は細いし、睫毛は長い。

 きめ細かな肌は透き通ったような白。

 関節部分はなんの素材で出来ているのか、まるで人間の様にしっかりと繋がっている。

 着ている服は赤と黒を基調とした大人しめのゴシックドレス。

 驚きに若干吊り目だった目が大きく見開かれているが、まるでどこぞの高飛車そうなお嬢様である。


 うん、なんていうかその、……すごく、美少女です…。


 暫く鏡を眺めてから、体の関節部分や、肌を触ってみる。

 体温こそ無いものの、まるで人間の様な柔らかさだったし、なんだかすごく精巧に造られているのが分かった。

 そして、先程からとても気になっていることがある。

 それは僕の中身がどうなっているかである。


 店員さんーーネーラさんの話では『恐ろしく精巧に造られた人形』という話だったので、どれくらい精巧に造られた人形なのだろうか、ということである。

 まぁここまでしっかり人間みたいなのだ。

 血とか流れてそうで、ちょっと怖い。というかここまで人間っぽいのですごく怖いのだが。

 人形…なんだよな僕…。


 とりあえず、痛いのは嫌なので、そういうのは試さないでおくのだが…。

 あ、そうそう、気になって確認しましたが、しっかりと男の子の象徴がありませんでした。当たり前ですが…。


 ある程度確認した僕は元いた位置に元いた体勢で座っておく。

 一応人形だからね。

 動いたら怖いもんね。


 すると、とてとてと小さな足音と共に、猫耳姫が部屋に入ってくる。

 危ねぇ…、あと3分遅かったら動いてたのバレてたよ…。

 あ、そうそう、僕で遊んでいる時に知ったことだけど、彼女の名前は《フィア=ローネ=ラ=フェリアラント》と大層長い名前の子だそう。

 人形に自己紹介するってどうなんだろうか…。


 とりあえず、さっき食事に呼びに来たメイドさんが、『フィア様』と言っていたので、僕はフィアちゃんと心の中で呼ぶことにする。

 あくまで、心の中でだ。

 人形が言葉を発したら凄い怖いもんね、仕方ないですよ…。

 次回、僕はフィア様に名前をつけられるみたい。

 前世の名前があるので、ちょっとあれなんだけど!?

 しかも、ちょっと不穏な空気…。

 いったい僕はどうしたらいいんでしょう…。

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