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 俺は部屋に入ったと同時に兄様に詰め寄り、何故“兄さん”の前世の記憶があることを秋和には言って、身近にいた俺には言わなかったのかと、俺は怒りのあまりに冷静に淡々とそう聞いた。

 兄様は困惑したような顔をした後に、

「……この事を無理に教えて、お前の記憶を混乱させたくはなかったからだ。

……アイツに先に言ったのは、お前よりは“不可思議”なことに耐性があるから、先に話しただけで深い意味は無くて、秋和とお前が会った時には必ず、この事を話すつもりでいた」

 と、兄様はこう言い、声を出さずに「……すまない」と、俺に言った。


 俺はまだ、不機嫌だったけど兄様を怒る気はもう失せてしまい、深いため息を一回ついた後、俺は兄様にこう言う。

「いいよ、もう。怒る気失せちゃった。……でも、最近まで藤和も兄さんもこの世界にはいないって思ってたから。……少し寂しかった、俺だけに転生して来ていたことを話してくれなかったことが」

 と、俺はそう言うと、自分が言った言葉に恥ずかしくなり、素早くパジャマに着替えた後、俺は毛布を頭から被り……、

「おやすみ」

 と、狸寝入りをした。

 そんな俺に兄様はクスクスと笑いながら、嬉々とした声でそんな俺に、

「おやすみ、騎里」

 そう返事を返し、優しい手つきで俺の頭を毛布の上から数回撫でた。


 俺は知らない。

 その後、兄様が悲しそうに空を見つめ、一筋の涙を流していたことも。

 狸寝入りをするつもりが本当に寝てしまった俺の手を握りしめ……、

「……すまない」

 と、俺に謝り、兄様は俺にこう言う。

「お前達をどうしても失いたくないんだ」

 と、言葉にしていたことも。


◇◆◇◆


 朝、俺は目を覚ますと横には兄様が居たことに驚きのあまり、思わず目を見開いた後、兄様を起こさないように自分の上半身を起き上がらせ、朝支度を素早く済ませる。

 俺は部屋の高価そうな、キラキラと眩しい程に輝く家具に深い溜め息をついた後、部屋に備え付けのソファーに俺は腰をおろす。


「……はあ。位は王族の方が高いと言うのに、防御面では一條家のセキュリティーには衰えています、王城のセキュリティぐらいだったら、俺でも脱走が出来てしまいそうです」

 と、王城のセキュリティに俺は呆れつつ、一応俺は誰かに聞かれていると言う前提で、俺は敬語でそう独り言を呟いた、……誰かくるのでは? と期待を込めて。


 しかし、俺の独り言に気付けるくらいの耳の良い知り合いなんて、交友関係が狭い俺に心当たりがあるはずもなく、俺はガックリと項垂れる。


 ……兄様に勝手に王城をフラフラするなと心配そうに言われた以上は、俺は素直にこの部屋に居るしかない。

 メモを残せと言いつつも兄様は俺のことになると、直ぐに冷静さを失う。

 例え、メモを残したとしても見ないで俺のことを探しに出る可能性が高い。

 だから、兄様を心配かける訳にもいかないし……、この部屋で一人で出来ることと言えば、読書と考え事くらいだ。

 しかし、今は読書の気分ではない。


 せめて、話し相手が居れば……とは思うのだが、兄様は低血圧だ。

 兄様は誰かに無理矢理起こされると不機嫌になる、俺が無理矢理起こしたとしても、俺には八つ当たりはしないが、父様が兄様の餌食になるので止めとこう、父様が可哀想だ。

 寝起きの兄様は、酒飲みで酔い癖の悪いサラリーマンよりも質が悪いから。

 その時の兄様には、流石の俺でも近寄りたくないんだ、……絡み方が異常なくらいにしつこくなるから、反応に困るのだ。


「早く屋敷に帰りたい」


 と、俺は思わずホームシック状態に陥りそうだ、……一條家と比べて王族の住む王城は、キラキラと輝く物や高価そうな物ばかりで気がおかしくなってしまいそうになる。


 頼むから、兄様起きてくれー!!!

 ……このままだと本当に俺、ホームシックになってしまいそうだ……。



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