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 今更ですが、作風が定まりました。

“ダークファンタジー”です。


 ……物語のendは、“ある人物”にとってはバットエンドですが……。

“ある人物”にとっては、ハッピーエンドと言う解釈が出来るような完結にして行きたいと、今の時点では考えております。



 しばらく、力強く藤和に抱きついていると、藤和は満面の笑みを浮かべながら、俺を再び、抱きしめ直し、優しい声でこう言う。

「今は王譲秋和って言うんだ、……春馬と一緒に居たから、近付けなかったが、春馬の近くにいると厄介なことになるんだよな」

 と、そんな彼の名前は、春馬くんの口から聞き覚えのある名前で、俺は藤和……いや、秋和に抱きつくのをやめて、クスクスと笑いながらこう言った。


「春馬くんから、名前だけは聞いてたけど……、まさか藤和だとは思ってなかったよ、……三歳児をからかって楽しむなんて、秋和ってば大人げないよ?」

 と、俺はそう言うと、

「久夜様を別にからかっている訳じゃないんだ。……表情をコロコロと変えるから構ってるだけさ、俺と同類の久夜(くや)様をな?」

 そう自信満々に言う秋和に俺は、

「どっちも同じだと思うけど……、秋和らしくて、そんな秋和が前世から、俺は嫌いじゃないんだよね。……前世から全然性格が変わってなくて、俺凄く嬉しいし、安心した。出来れば秋和とはまた、同じ学校に行きたいな」

 転生してから、一番の満面の笑みを浮かべながら、そう秋和に言った。


「……騎里には癒されるわ――、一番上の兄上はさ、策士で敬語なはずなのに、毒舌だしさ、二番目の兄上はまるでお母さんだけど、訳あって引きこもり。

俺だってずっと会いたかったんだぞ、お前に。……お前が転生するなら、騎里だろうと予想してはいたから、俺は二歳から社交場に出てたけどさ。

なかなか、騎里は社交場に出ようとはしなかったから、多分お前も、この世界に転生してんだろうな~とは俺は確信してたけど。……まあ。まさか、お前の兄上が“兄さん”だとは俺にとっても、嬉しいすぎる誤算だったけどな」

 と、そんな秋和の言葉に俺は目を見開きながら、思わず惚けたような声で、

「ふぇ!?」

 そう言葉にならない声でそう言うと、

「えっ、何!? お前、暁さんが“兄さん”だったことを知らなかったのか。……まあ、“兄さん”はお前の記憶を前世の記憶と混乱させないように、わざと黙っていたんだろうと思うけど……。

まあ、いい。……そんなことよりも、このような手段を使い、お前をここに連れてきたことはすまないと思っている、……“藤和”の前世の記憶を持つことを今日のうちに、騎里に話しておきたかったと言うこともあるし、“兄さん”は構わないとしても、春馬に聞かれるのはまずいからな。

だから、強行手段に出させて貰った。……が、今日のうちに会いたかった理由はもう一つある。……お前だけには必ず、忠告をしたかったからだ」

 と、いつになく、真剣な表情をする秋和に俺は思わず、唾を飲み込んだ。

 そんな俺の肩を引き寄せ、内緒話をするかのように秋和は俺に耳打ちをする。


 小さくはっきりとした声で秋和は俺に、

「……『友愛学園』には、お前にも話していなかった極秘ルートがある。……とある条件を満たすと、このゲームは“友情要素”と“恋愛要素”を同時に両方楽しめる仕組みになっているんだ。

友情ゲームは数が少ないから、はっきりと言ってしまえば、恋愛ゲームと比べれば売り上げが落ちてしまう。……それなのに『友愛学園』を販売することが出来たのは、俺が作ったゲームにたくさんのファンがいると言う俺の実力。

……そして、極秘ルートとして“恋愛”の要素を入れると言う条件のおかげで、俺は“友情ゲーム”を販売することが出来たんだ」

 と、そう秋和は言葉を区切った後に、彼は息を吸い込んで話を続ける。


「だけど、……ゲームキャラクターだとは言えど、俺の大切な幼馴染みであるお前をイメージしたキャラなのだからな……。

お前を安易に、『友愛学園』の隠れヒロインに落とさせる訳には行かねぇと思った俺は、“騎里”と言うキャラは攻略難易度を最大にし、隠れヒロインが逆ハーendを目指す時には、騎里を攻略キャラではなくなると言う設定にした。

当時の俺も、流石にやり過ぎだとは思ったが……、今となっては好都合だ。

……話は戻るが、一條騎里は主人公の一人でありつつ、ルートによっては脇役でもある……、所謂、“隠しキャラ”にした。

隠しキャラは全部で二人、王譲明智である“俺”と一條騎里であるお前だ。

…………お前には今のうちに忠告をしておく、お前は隠れヒロインである……、後に王譲家の養女となる柊椎羅(ひいらぎしいら)には、けして近付いてはいけないぞ」

 と、彼は俺に言う。


 それでも、俺らは巻き込まれていくことをまだ、転生したばかりの俺らは知るはずもなかった、……俺に殺気を飛ばしてきた正体不明な存在も……。

 俺らが亡くなった理由だけが、抜け落ちたように記憶にない訳も……。


 兄さんが言った、

『今度こそ、お前らを守るからな……』

 その言葉に込められた本当の意味も。


 今の俺らは気付かない、……俺らにまとりつく、悪意の塊の存在にも。


 俺らは何も気付かず、顔を見合わせて、満面の笑みを浮かべ合う。

 この先、前世で『友愛学園』の制作に関わった秋和でさえも、戸惑うような“未来”が待ち受けていようとは、俺らは思ってもいなかった。



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